税理士試験 簿記論 講師日記

税理士試験 簿記論、財務諸表論、簿記検定の問題、学習方法等をアドバイス。

静態論

静態論から動態論へ

資産の定義は、ややラフに次のように類型化できると思います。

(1)売却価値のある財産(静態論……財産計算中心)
(2)貨幣性資産と費用性資産(動態論……損益計算中心)
(3)経済的資源等(新静態論……?)

静態論のもとでの資産概念、つまり、「売却価値を有する財産」という考え方は、極めて明確です。
静態論のもとでの貸借対照表は、財産の一覧表と考えられ、その主眼は、財産計算におかれていました。

これに対し、財産計算ではなく、損益計算を会計の主軸におき、貸借対照表は、損益計算を行った結果の残りとみる考え方が登場しました。
このような考え方が動態論とよばれます。

静態論は、考え方としては極めて明確です。
とてもわかりやすいのではないかとも思います。
しかし、大きな問題がありました。
それは、金額をどうするか、つまり、評価の問題です。

静態論では、資産を売却価値を有する財産と考える訳ですから、その資産を貸借対照表にのせる価額(評価額)も資産を売却したとしたらいくらかという意味での時価であるべきでしょう。
しかし、売却時価がすべての資産について必ずしも明確な訳ではありません。
また、これを悪用して、みせかけの業績を装うことも少なからず行われたようです。

このような不確実な売却時価ではなく、伝統的な会計の中核を占める確実な評価指標が原価だったのです。
売却時価に代わる確実な評価の指標として原価を正当化する理論、それが動態論であるといってよいかもしれません。

次回以降で、動態論に(必要以上)に踏み込んでいけたらいいなと思います。



追記

ランキングは、皆様のおかげで、短時間ではありましたが、1位を獲得いたしました。

どうもありがとうございました(しゅ、終了ですか)。

この御恩は、当分、忘れません(と、当分ですか)。

静態論と資産概念

以前、資産の定義を次のように類型化しました。

(1)売却価値のある財産(静態論)
(2)貨幣性資産と費用性資産(動態論)
(3)経済的資源等(新静態論)

今日は、このうち、静態論のもとにおける「資産概念とは何か」について考えてみたいと思います。

簿記の「借方・貸方」という表現からも軽く想像できますが、複式簿記は、当初、債権債務(金銭の貸し借り)を記帳する技術として誕生し、発展してきました。
誰にいくらの債権(売掛金や貸付金等)があり、また、債務(買掛金や借入金等)があるかは、複式簿記の誕生以来、大きな関心事でありつづけています。
このことは、今日まで、変ってはいません。

企業に対して債権(例えば、貸付金)を有している者は、その貸付金が返ってくるのかに関心があります。
企業が有する資産をすべて売却し、換金したとした場合に、これが債務の金額よりも多いのであれば、債務の返済に支障をきたすことは少ないでしょう。
債権者も最悪、全部売り払って、かね返せといえる訳です。

このように企業をとりまく利害関係者のうちでも債権者の占める比重が高く、債務の返済に関心がよせられていた時代の貸借対照表は、売却価値を有する財産の一覧表に近い意味をもっていたようです。
そこで付される財産の価額は、文字どおり売ったらいくらという意味での時価であったといってよいでしょう。
ここでの資産は、紛れもなく「売る価値のある物」という事になる訳です。

このような時代における貸借対照表の見方、そして、そこにおける会計の考え方こそが、まさに静態論であるといってよいと思います。
静態論における「資産とは何か」
それはまさに「売却価値を有する財産」です。

静態論における資産概念は、考え方としては、極めてシンプルです。
しかし、会計に対する見方は、静態論のままとどまっていた訳ではありません。
動態論へと進化していきました。
動態論のもとでの資産概念、これが新基準以前の一般的な資産概念であるといってよいでしょう。

つづく


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「動態論」と「静態論」

「新しい簿記の話」の続きです。
メインは、次の三点です。

●貸借対照表の「資本の部」が「純資産の部」になる。
●利益処分案(利益処分計算書)がなくなり、「株主資本等変動計算書」が導入される。
●損益計算書が、当期純利益までになる。
(試験的な影響は、平成19年度以降になると思います)

貸借対照表の資本の部が純資産の部に変更されることが予定されています。
この貸借対照表ですが、これまでにまったく同じ見方・考え方でとらえられていたのかというと必ずしもそうではありません。
時代によって、貸借対照表に対する見方は大きく異なります。

動態論とか、静態論という言葉をお聞きになったことはあるでしょうか?
これは、貸借対照表に対する見方(あるいは、会計全般の考え方)を意味します。

かつて、貸借対照表は、売却価値のある財産の一覧表と考えられていました。
このような貸借対照表に対する見方は、「静態論」とか、「静的貸借対照表論」と呼ばれます。
企業の有する財産を一定時点で精算してしまったらいくらになるのかがそこでの課題といえます。
そこでの中心は、あくまでも財産の計算です。

これに対して、貸借対照表を単なる財産の一覧表ではなく、損益計算を行った上での未解決項目の一覧表とみる考え方があります。
このような貸借対照に対する見方は、「動態論」とか、「動的貸借対照表論」と呼ばれます。
企業は、そもそもその有する財産の全てを精算するために存在する訳ではなく、継続的な活動を行い、その活動の中で利益を獲得することを狙いとしています。
その利益をきちんと計算することが動態論における中心的課題といってよいでしょう。

ややラフにいうと、会計の歴史は、「静態論」から「動態論」へと移行し、そして近時、その振り子はかつての静態論とは異なるものの、また、財産の計算へと戻りつつあります。
時として、そのような考え方は、「新静態論」と呼ばれたりします。

っていうか、全然「新しい簿記の話」になってませんが、本題は、ここからです。

つづく(やっぱし)。


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