税理士試験 簿記論 講師日記

税理士試験 簿記論、財務諸表論、簿記検定の問題、学習方法等をアドバイス。

資本

資本とは何か(2)

資本の語は実に様々な意味で用いられています。

ごく一般的には、資本とは、企業会計でいうなら「資産」と同じ意味で用いられる場合が多いかもしれません。
単に財産という意味と同義で資本という語が使用される場合も少なくありません。
これに対して、企業会計上、単に「資本」といった場合には、上記のような意味での財産を意味して使用される訳ではありません。
純資産ないしは純財産、つまり、「資産−負債」を指していることが多いといってよいでしょう。
このような意味での資本は、自己資本などとも呼ばれます。

また、自己資本に対して負債をとくに他人資本ということがあります。
また、この両者をあわせて総資本ということもります。
自己資本及び他人資本のいずれも具体的な運用形態としてではなく、資金の調達源泉という側面に着目しているといってよいでしょう。
簿記の勘定記録に則していうならば、借方(資産)ではなく、貸方(資本ないしは負債)項目として理解されているといえるでしょう。

企業会計上、きわめて重要な意味を持つのが、「もとで」としての「資本」です。

これ以外に商法(会社法)上の資本(資本金)があります。

以上を整理すると次のような感じになると思います。

(1)総資本……………資産又は負債+資本
(2)他人資本…………負債
(3)自己資本…………資産−負債
(4)もとで……………資本金+資本剰余金
(5)商法上の資本……資本金

このような資本概念の多義性が資本をわかりにくくしている原因の一つといってよいでしょう。
「資本」の語が、上記のいずれを指して使用されているのかに注意を払う必要があります。

この資本とは何かでは、主として(3)〜(5)の資本概念に着目したいと思います。

資本とは何か(3)へ

「資本と利益」とクリーンサープラス

近時、企業会計の目的は、「投資意思決定」に向けられて語られる事が多くなりました。
もちろん、企業をとりまく利害関係者は、投資家だけではありません。
このような傾向が進んだとしても、投資家以外の利害関係者を全く無視した制度ができあがるという事にもならないでしょう。

また、このような傾向に対しては、会計が投資家にとっての手先(言い過ぎか)になっているとの批判もあります。
しかし、大事なのは、このような傾向は、進みこそすれ、逆戻りすることはないのではないかと思える点です。
その事は、会計以外の異なる価値判断とは、かかわりがないと思います。

投資家は、企業に資金を投下し、企業がその資金を運用して、どれだけの成果、すなわち、利益を獲得したのかに関心を持ちます。
「投資」と「利益」の関係に興味がある訳です。

「投資」と「利益」の関係を企業の側で考えると「資本」と「利益」と置き換えることができるでしょう。
どれだけの「資本」で、どれだけの「利益」を獲得したのか。
その関係にこそ投資家の興味があるといってよい訳です。

「クリーンサープラス関係」などと呼ばれる損益計算書と貸借対照表の関係が求められるのもこのような観点からのものといってよいでしょう。

新しい財務諸表の体系の変化の背後には、このような企業会計の目的(投資意思決定支援)と大きなかかわりをもっていることがわかると思います。

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