税理士試験 簿記論 講師日記

税理士試験 簿記論、財務諸表論、簿記検定の問題、学習方法等をアドバイス。

新静態論

新静態論と貸借対照表アプローチ

(1)売却価値のある財産(静態論……財産計算中心)
(2)貨幣性資産と費用性資産(動態論……損益計算中心)
(3)経済的資源等(新静態論……?)

資産概念は、おおむね上記のように推移してきました。
このうち、今まで、静態論と動態論における資産概念をみてきました。
動態論(及び静態論)は、ドイツの偉大な会計学者であるシュマーレンバッハの手になる理論で、その後の新静態論の部分は、必ずしも筋道のたった体系的理論が形成されている訳ではないようです。
新静態論という呼称も必ずしも一般化している訳ではありません。

しかし、現実として会計処理は、大きな変貌を遂げています。
それは必ずしも統一的な理論で説明できるというよりも部分的なすりあわせに近いといった方がよいのかもしれませんが。
その意味でいうと「××論」という呼称よりも、「××アプローチ」や「××観」と呼んだ方がよいのかもしれません。

(1)貸借対照表アプローチ
(2)損益計算書アプローチ
(3)貸借対照表アプローチ

上記で貸借対照表アプローチや損益計算書アプローチは、文字どおり、貸借対照表項目に着目するか、損益計算書項目に着目するかの違いといってよいでしょう。
静態論や動態論との違いは、必ずしも全体的・体系的なものではないといってもよいかもしれません。

現在は、(2)から(3)への移行がみられる段階といったところでしょうか。
先行するアメリカでは、(3)への傾斜がみられるといってよいのでしょう(たぶん)。
我国の新たな財務諸表の体系をみる限り、むしろ(2)と(3)の中間を指向しているように思われます。
これが、過渡的なものなのか、それとも長期にわたって継続していくものなのか、残念ながらわかりませんが。

アメリカにおける会計学の変遷を概観することは、私には力不足でできません。
ただ、その一端は、以前、実現とは何かの中で述べたつもりです。
ごく簡単にいえば、有価証券をはじめとする金融商品の存在が、現実的な会計処理の変更を迫ったといってよさそうです。

つづく(って、どこにだ)

続・続新静態論(←くどいって)

新会社法に関連した「新しい簿記の話」を続けています。
メインは、次の三点になります。

●貸借対照表の「資本の部」が「純資産の部」になる。
●利益処分案がなくなり、「株主資本等変動計算書」が導入される。
●損益計算書が、当期純利益までになる。
(試験的な影響は、平成19年度以降になると思います)


複式簿記の歴史は長く、その基本的な仕組みの部分は、それほど変ってはいません。
ただし、その中身は、今でも変化を続けているといってよいでしょう。

静態論(財産計算重視) → 動態論(損益計算重視) → 新静態論(財産計算重視)

おおむね上記のような歴史的変遷があった(最後の部分はありつつある)といってよいと思います。

今は、動態論から新静態論への移行期にあたるといってもよいと思いますが、静態論や動態論ほどに新静態論が秩序だって説明できるほど体系化されているという訳でもないようです。
現実の動きのスピードに理論の整理が追いつかないといったところかもしれません。

静態論・新静態論ともに、財産計算に重きを置いています。
誤解を恐れずに極めてシンプルに両者の体系を理論的に説明するとすれば、次のようにいえるでしょう。

(1)資産と負債の範囲を決める。
(2)その差額、すなわち資本(純資産)の増が利益。

むむむっ。あまりにシンプルかもしれませんが、こんなもんかもしれません。
このような考え方をとった場合には、資本の独自性はやや後退し、むしろ、資産と負債をきっちりと決めることに重きが置かれます。
資産・負債を決めて、その差額が、資本。
今回の「資本の部」の「純資産の部」への変更の背後には、このようなスタンスがあるといってもよいのではないかと思います。

次回以後でこの「純資産の部」の変動計算書である「株主資本等変動計算書」をご紹介したいと思います。

続・新静態論?

新会社法に関連した「新しい簿記の話」を続けています。
メインは、次の三点になります。

●貸借対照表の「資本の部」が「純資産の部」になる。
●利益処分案がなくなり、「株主資本等変動計算書」が導入される。
●損益計算書が、当期純利益までになる。
(試験的な影響は、平成19年度以降になると思います)


基本的な簿記の仕組み(器)は長きにわたってそれほど大きな変化をみせている訳ではありませんが、その中身は、時代と共に移り変わっています。

(1)静態論 → (2)動態論 → (3)新静態論

おおむね、歴史的には、上記のような推移をみせているといってよいでしょう。
もっとも、「静態論と動態論」自体は、きちんと整理されているといってよいでしょうが、新静態論は、今まだその途上にあるといった方がよいかもしれません(「新静態論」という呼称も必ずしも一般化しているとはいえないかもしれません)。

静態論では、財産計算が重視され、動態論では、損益計算が重視されています。
新静態論では、財産計算に重点が置かれていると「とりあえず」はいえるでしょう。

新しく「資本の部」が「純資産の部」に変更されることが予定されていますが、この呼称(そしてそれに伴う内容の変化)もこのような新静態論への変化という流れを汲んでいるといってよさそうです(「純資産って何だ?」参照)。

資本という語が単独での意味を伴っていたのに対して、純資産の語が、もっぱら「資産−負債」を意味していることからもその事は伺えるのではないでしょうか。

次回は、新静態論のもとにおける資産・負債・資本(特に負債と資本)がどのように考えられているのかから「資本の部」の「純資産の部」への変化を考えてみたいと思います。

新静態論?

新しい簿記の話」を続けています。
メインは、次の三点になります。

●貸借対照表の「資本の部」が「純資産の部」になる。
●利益処分案がなくなり、「株主資本等変動計算書」が導入される。
●損益計算書が、当期純利益までになる。
(試験的な影響は、平成19年度以降になると思います)


複式簿記は、その誕生から五百年を超える長い歴史を持っています。
その間、記帳の基本的なルールはあまり姿を変えていないといいます。
ただし、その中身は同じだったのかというと、必ずしもそうではなかったようです。

簿記の仕訳に使われる五つの要素、資産、負債、資本、費用、収益。
簿記の基本的ルールは、あまり変ってはいませんが、これらに対する見方も、必ずしも同じではなかったのです。

先日、貸借対照表に関する見方の話をしました(「静態論」と「動態論」)。
いずれも貸借対照(または会計全般)に対する考え方です。
静態論のもとでは、「財産の計算」を中心とし、動態論では、「損益の計算」が重視された訳ですが、歴史的には、静態論から動態論へと移行してきました。
そして、今、その比重は、再び「財産の計算」に移行しつつあります。
このような新しい会計に対する見方を指して、「新静態論」という場合があります。

この数年、我国で公表された新しい会計基準についても、貸借対照表項目を決算時の時価(ないしはこれに準ずるもの)で把握しようとするものが目立ちます。
その対象は、有価証券をはじめとする金融資産(負債)から固定資産、そして棚卸資産へとその対象を広げつつあります。
今回の財務諸表の変更もこのような一連の会計基準の変革の延長線上にあるといってよいでしょう。

新静態論の話は、まだつづきます(って、いうかあんましてないような気が)。
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