税理士試験 簿記論 講師日記

税理士試験 簿記論、財務諸表論、簿記検定の問題、学習方法等をアドバイス。

会社法

平成19年からの変更点(準備金の積立−その2)

準備金の積立に関して大きく変ったのが、資本剰余金(その他資本剰余金)からの配当を行った場合には、利益準備金ではなく、資本準備金を積立てる点です。

(1)配当額×1/10
(2)資本金×1/4−これまでの準備金(利益準備金+資本準備金)
(3)いずれか少ない金額

(借)その他資本剰余金××× (貸)未払配当金×××
                  資本準備金×××

やや、複雑なのが、両方(利益剰余金からの配当と資本剰余金からの配当)があるケースです。
準備金の積立限度額に達しない場合には、特に問題はありませんが、このケースでは、次のような手順で計算を行うとよいでしょう。
手順1:一度全体で準備金の積立額を出す(下記の3です)。
手順2:それを配当の比率で分ける。

計算パターンでいうと次のような感じでしょうか。
(1)配当額×1/10
(2)資本金×1/4−これまでの準備金(利益準備金+資本準備金)
(3)準備金積立額 いずれか少ない金額
(4)利益準備金積立額 (3)×利益剰余金配当割合(利益剰余金からの配当÷全体の配当)
(5)資本準備金積立額 (3)×資本剰余金配当割合(資本剰余金からの配当÷全体の配当)

(借)繰越利益剰余金 ×××(貸)未払配当金×××
                 利益準備金(4)
(借)その他資本剰余金×××(貸)未払配当金×××
                 資本準備金(5)


これまでの年度別変更点の個別記事一覧は、こちらからどうぞ。
税理士試験 簿記論 年度別変更点

平成19年からの変更点(株主資本の計数の変動−その5:損失処理)

会社法上、純資産の部の株主資本間の項目の変動は比較的自由に認められています。
大きな制約は、資本と利益の区別です。
払込資本(資本金と資本剰余金)と留保利益(利益剰余金)をまたぐ変更は、認められていません。
しかし、それぞれの間における変動は比較的自由です。

資本と利益の区別の例外としては損失処理があげられるでしょう。
もっとも繰越利益剰余金は、マイナス(借方残)になっても通常は、そのままです。
以前のように未処分利益と未処理損失(繰越利益と繰越損失)といった使い分けはしません。
損失処理といっても繰越利益剰余金がマイナスのままだとみっともない。
そんでもって、これをその他資本剰余金で補てんしようというケースです。

その他資本剰余金→繰越利益剰余金
(借)その他資本剰余金××× (貸)繰越利益剰余金×××


その他資本剰余金が借方で減少というのは、よいとして、貸方の繰越利益剰余金が微妙かもしれません。
私は、すごく遠回りかもしれませんが、すごくゆっくりでも正確にだせるようにするには、次のような感じがよいのではないかと思っています。

(1)当期純利益が出た
(借)損  益××× (貸)繰越利益剰余金×××

(2)当期純損失が出た(上の逆)
(貸)繰越利益剰余金××× (貸)損  益×××

(3)損失処理(上の反対側)
(借)その他資本剰余金××× (貸)繰越利益剰余金×××

って、何だかなあと思う方は、流してください。

会社法で遊べない

最近、改正関連の記事を書いていますが、なかなか会社法と戯れるというまでには至りません。

理由は、割とはっきりとしています。

ええ、忘れもしません平成13年(だったかな)の事です。

これまで、資本準備金だった減資差益(資本金減少差益)が資本準備金ではなくなりました。

まあ、単純にいえば、配当が可能になったのです。

これにはびっくりしました。

しかも、当時は、それを「利益の配当」として取り扱っていたのですからホントに驚きました。

減資差益は、当期の利益ではありませんし、もちろん過去の留保利益でもありません。

いかなる意味においても利益ではないのです。

それを「利益の配当」って、アナタ。

資本と利益を区別しろって何だったんだろう?

合併差益と減資差益の違いに至っては、いまだに何が違うのかがわかりません。

しかし、「利益の配当」を「剰余金の配当」に改め、資本と利益の源泉別の区別を強化した会社法。

一見、これで問題は解決したかに見えます。

というか、解決したように書いてあったりします。

でも、です。

まるで納得できません。

ええ、分配規制をはじめとする資本関連の制度が債権者の保護を目指しているのはわかります。

しかし、会社法や企業会計以前に、預かったものを返すのと預かったものを利用して増やして返すのが、なぜ、同一カテゴリーに押し込められるのかが、いまだによくわかりません。

ふーっ。

まだ、今の会社法では、遊べません。


本当は会社法と遊びたい!!と思っている講師に愛の手を(←こんな硬い記事じゃダメでしょ←そ、そうなんでつか。そりゃ残念)

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平成19年からの変更点(株主資本の計数の変動−その4:利益剰余金間での変動)

会社法では、払込資本(資本金・資本剰余金)間、留保利益(利益剰余金)間での変動は、比較的自由に認められています。
留保利益(利益剰余金)間での変動には、以下の組み合わせが考えられます。
仕訳処理としては、資本項目が貸方(増)、借方(減)であることを踏まえていれば、覚えるという感じにはならないでしょう。

利益準備金、その他利益剰余金(任意積立金、繰越利益剰余金)間の組み合わせです。
利益準備金とその他利益剰余金ということですと、1×2=2個です。
ただし、こちらは払込資本とは異なり、その他利益剰余金を任意積立金と繰越利益剰余金に分ける必要があるかもしれません。
ので、繰越利益剰余金→任意積立金(積立)と任意積立金→繰越利益剰余金(取崩)を加えておきました。
※会社法(会社計算規則)の規定の仕方とは異なります。

(1)利益準備金→その他利益剰余金(繰越利益剰余金)
(借)利益準備金××× (貸)繰越利益剰余金×××

(2)その他利益剰余金(繰越利益剰余金)→利益準備金
(借)繰越利益剰余金××× (貸)利益準備金×××

(3)その他利益剰余金(繰越利益剰余金)→その他利益剰余金(任意積立金)
(借)繰越利益剰余金××× (貸)任意積立金×××

(4)その他利益剰余金(任意積立金)→その他利益剰余金(繰越利益剰余金)
(借)任意積立金××× (貸)繰越利益剰余金×××

平成19年からの変更点(株主資本の計数の変動−その3:資本金・資本剰余金間での変動)

払込資本(資本金、資本準備金、その他資本剰余金)間での変動には、次の組み合わせが考えられます。
3×2=6個の組み合わせです。
ただの組み合わせに近いです。
もっとも仕訳処理は、資本項目が貸方(増)、借方(減)であることを踏まえていれば、覚えるという感じにはならないでしょうし、その必要もないと思います。
(1)と(2)が資本金の減少(減資)、(3)と(5)が資本金の増加(増資)で、純資産は増えませんので、いわゆる形式的減資、形式的増資ということになるでしょうか。
※実際の会社法(会社計算規則)の規定の仕方とは異なります。

(1)資本金→資本準備金
(借)資本金××× (貸)資本準備金×××

(2)資本金→その他資本剰余金(資本金及び資本準備金減少差益)
(借)資本金××× (貸)その他資本剰余金×××

(3)資本準備金→資本金
(借)資本準備金××× (貸)資本金×××

(4)資本準備金→その他資本剰余金(資本金及び資本準備金減少差益)
(借)資本準備金××× (貸)その他資本剰余金×××

(5)その他資本剰余金→資本金
(借)その他資本剰余金××× (貸)資本金×××

(6)その他資本剰余金→資本準備金
(借)その他資本剰余金××× (貸)資本準備金×××

会社法の施行等に関連する記事の修正について

皆様もご承知のとおり、本年に会社法が施行され、新しい会計基準も多数公表されております。

試験的に重要な項目、そうでない項目と様々です。

本来、このような形のブログがもっとも迅速にその影響を反映させやすい媒体かもしれません。

ただ、記事数も多く、私の能力の問題もあり、ちょっとずつ補正はしているものの見直しを行うべき記事がそのまま放置されていたりします。

できる限り、目印(★→改訂済、※→改訂未了)をつけてはいきたいと思っています。

記事冒頭の符号に注目していただきたく思います。

なお、日商簿記検定関係の問題等につきましては、来年の2月検定までは、本年の改正等は反映されませんので、2月検定終了後に補正していきたいと思っています。

税理士試験簿記論講座は、改訂したものをお届けしていますが、リンク先につきましては、改定が未了のものもありますので、その点、ご了承ください。


とっとと直せという方の励ましの1クリックをお待ちもうしあげとります。

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平成19年からの変更点(剰余金の配当)

これまでの「利益の配当」は、「剰余金の配当」に変っています。
仕訳処理は次のとおりです(未処分利益が繰越利益剰余金に変っただけです)。

(借)繰越利益剰余金××× (貸)未払配当金×××

簿記論と直接的な関連はありませんが、会社法の施行により株主総会の決議でいつでも配当を行うことができるようになりました。
一定の会社には、取締役会による中間配当の制度もあります。
問題文が微妙に変るという変化はあるかもしれませんが、中間配当についても大きな違いはありません(中間配当額といった間接的勘定を使用することはなくなりました)。

(借)繰越利益剰余金××× (貸)未払中間配当金×××

平成13年(だったかな)に資本準備金を取崩し、これを配当原資にできるようになりました。
それまでは、何らかの意味で「利益の配当」でよかった訳です。
しかし、資本金や資本準備金を取崩したもの(資本金及び資本準備金減少差益)は、いかなる意味においても利益ではありません。
これを「利益の配当」と言うのはまずいということでの「剰余金の配当」への変更といったところでしょうか。
この点に関しては、以前からまるで承服できていないのですが、私が承服するかどうかと会社法がどうなるかはまるで関係がないのが残念です。

平成19年からの変更点(資本金の額)

必ずしも大きな変更という訳ではありませんが、増資等があった場合の資本金の額は、これまでの株式の「発行価額」から「払込金額」に変更されました。
一般的には、増資等の手続きは、払込→株式の発行という手順を踏みます。
株を発行したけど、払い込まれない場合がないのが前提ということを考えますと、必ずしも実質的に大きな違いがある訳ではないようです。

なお、新株式申込証拠金を資本金に振替える日は(これは以前からですが)、「払込期日の翌日」ではなく、「払込期日」になっています。

資本金に計上しないことができるのが払込金額の2分の1以下であるのは、従来と同様です。
資本金に組入れなかった金額(増資等の場合は株式払込剰余金)は、資本準備金として計上します。

あと、勘定科目の話ですが、これまでは、株式払込剰余金の方が一般的でした。
ただ、資本剰余金から配当を行った場合に準備金として資本準備金を積立てます。
この積立てた金額は、資本準備金勘定で処理せざるを得ないでしょう。
ここだけ資本準備金で、あとは株式払込剰余金というのも不自然で、すべて資本準備金という「勘定科目」の使い方が一般化するのではないかと思っています。
というか、「資本準備金」ということでよろしくお願いいたします。


で、こちらもどうか一つよろしくお願いいたします。

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平成19年からの変更点(社債発行費等)

社債発行費については、名称の変更はありません。
内容的には、資金調達目的の新株予約権発行費用が含まれるようになりました。
このことから内容紹介などの場合には、「社債発行費等」とされる場合が多くなるかもしれません。
勘定科目は、「社債発行費」で落ち着くのではないでしょうか。

償却期間は、従来の3年から合理的な社債の「償還期限」に変更されています。

償却方法は、利息法が原則的方法とされています。
しかし、これはちょっと説明するのがイヤになるくらい複雑です。
どの程度一般化するのかは様子を見ながらという感じになるかと思います(←アナタできないんでしょ←アンチョコみながらできますってば)。
定額法も許容されています。

直前期でどの程度の重要性を持つのか。
現在価値の考え方が重要性を高めつつある今、気になります。
ふーっ。

新株予約権の発行費用の償却期間は、3年になります。

平成19年からの変更点(株式交付費)

新株発行費は、株式交付費に衣替えしました。
内容的に大きいのは、自己株式の処分費用も含まれることでしょうか。
自己株式については、すでに存在するものであるため「発行」という語が使いにくいです。
そのためか「交付」という語で整理されています。

新株   → 「発行」
自己株式 → 「処分」
両方   → 「交付」

といった具体に言葉を使分けたという感じになるでしょうか。

償却期間は3年ですので、旧新株発行費と基本的には異なりません。

やや細かい点になりますが、繰延資産計上が可能なのは、資金調達目的の場合に限られます。
株式分割時にも株式を発行することになりますが、資金を調達する訳ではありません。
株式分割等の資金調達を目的としない株式発行費用は、繰延資産として計上することはできません。

平成19年からの変更点(社債の概要)

社債については、額面金額ではなく、実質価額(当初は発行価額)によることになりました。
取得した社債とちょうど正反対の処理になります。
これまでの繰延資産としての社債発行差金はなくなります。
簡単な例をご紹介しておきましょう。

額面100円 発行価額95円 5年償還
2年経過後償還

(今まで)
発行:
現金預金  95 社債100
社債発行差金 5

償却:
社債発行差金償却1 社債発行差金1

償還:
社   債100 現金預金  99
社債償還損  1 社債発行差金 2

(これから)
発行:
現金預金95 社債95

償却:
社債利息1 社債1

償還:
社   債98 現金預金99
社債償還損 1

定額法によった場合の償還損益の金額が変る訳ではありません。
もっとも保有社債の場合と同様に利息法が原則になりますので、かなり慣れが必要になるとは思います。

平成19年度からの変更点(のれん)

これまで営業権で処理してきた無形固定資産は、「のれん」とされます。
償却期間も5年から20年に変更されています。
特徴的なのは、マイナスが存在すること。
マイナスののれんを「負ののれん」と呼びます。

のれんは、会社法上は、その計上されるケースが限定されています。
買収や合併等によって営業を受入れ、その資産等に時価を付した場合(パーチェス法)の受入資産と交付資産等の差額がのれんです。

「会社法であそぼ。」であそびたい!!

本年の税理士試験の出題範囲からははずれた会社法。

来年度は、嵐を呼ぶことになるのでしょうか。

本ブログでも会社法に関連したご質問をいただくこともあるのですが、残念ながら実力不足でほとんどお答えできません。

と、その代わりといっては何ですが、今日は、会社法ブログのご紹介です。


「会社法であそぼ。」


すごいです。

やはり専門家は違います。

会社法に興味のある方は、ぜひご覧ください。

もう少し早く発見してればよかったです。はい。

会社法と会計学

会社法の施行を来年に控えています。
実際の施行は、5月の連休明けあたりが予定されているようで(たぶん)、このままいけば、来年度の税理士試験の範囲に含まれることはないようです。

今まで、本ブログでは、あまり新しい法改正や会計基準の変更について書いてきた訳ではありません。
これは、ひとえに私の勉強不足です(ぶ、ぶっちゃけですか)。

ただ、「資本の部」の「純資産の部」への変更と「株主資本等変動計算書」の導入は、個人的にとても興味をひきます。
それは何故かといいますと、会計の理論的な部分ととても大きなかかわりをもっているからです。
会社法の関係で会計科目にとても大きな影響をもたらすであろう部分としては、この他に組織再編成(合併等)や分配規制があると思います。
しかし、いずれも政策的な要素が濃く、試験的な重要性は持つと思いますが、会計の基礎的な理論との結びつきはやや希薄といってよいと思います。

これに対して、資本の部の純資産の部への変更、そしてその純資産の部の増減変動の計算書である株主資本等変動計算書の創設は、これまでの会計制度改革の流れを汲むもので、いいかえれば、会計の理論からある程度の説明が可能です。
ある程度の筋を通した説明が可能ということは、その筋にあたる部分は、改正の背後にあるとても重要な部分ということもできるのではないでしょうか。
現在、株主資本等変動計算書について書いている理由でもあります。

試験的には、1年先んじる形になると思いますが、新しい会社法や会計基準の話をこれからも書いていきたいと思います。

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ネットスクール出版
2021-09-16

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