税理士試験 簿記論 講師日記

税理士試験 簿記論、財務諸表論、簿記検定の問題、学習方法等をアドバイス。

有形固定資産

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償却方法の変更
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固定資産の取得原価に想う
取得原価の推定


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固定資産の取得原価

税理士試験「簿記論」の第3問では、やや実務的な出題がなされることがあります。
かなり細かくて、実務経験のない方は面食らうのではないでしょうか(って、きっともう面食らってますね)。

そんなやや実務チックな出題のうち有形固定資産の取得原価、しかも、建物の建築にまつわる儀式の話です。
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取得原価の推定

簿記論では、固定資産関連で、推定の絡んだ出題が少なくありません。

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固定資産の取得原価に想う

固定資産の取得原価は、取得の態様ごとに異なっています。
簿記を学習していた当初、この固定資産の取得原価が苦手だった記憶があります。
理由は、簡単です。

ものの見事に、忘れるからです。

購入や贈与等、頻繁に出てくるものはいいのですが、たまーに出てくるものはほとんど忘れます。
我ながらビックリするくらい忘れます。
忘れることにかけては、かなりの自信があります。

「忘却とは、忘れ去ることなり」

昔の人は、いい事を言いました。

むむむっ。なんかそれてるか。

でも、理論的な背景に興味を持ってからは急に抜けなくなりました。
たぶん、その頃からムリに覚えようとしないで、何か根拠づけのできるものは、むしろその根拠を厳密ではないにしろ、おさえる方が結局は、早いし、長持ちもするということを自覚し、実践もするようになった気がします。

さて、皆さんは、固定資産の取得原価をどうクリアしているでしょうか?

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有形固定資産の取得原価

資本的支出と収益的支出(修繕費)

【資本的支出と収益的支出】
「資本的支出」は、耐用年数の延長をもたらしたり、価値を増加させたりする支出を意味します。
「収益的支出」は、いわば原状回復費用です。
資本的支出は、資産として処理され、収益的支出は、費用(修繕費)とされます。


【資本的支出と収益的支出の区分】
一つの修理・改良等に資本的支出部分と収益的支出が混在することは少なくありません。
むしろ、原状回復を図る場合に、ついでに前よりよくしてやれというのは極めて自然で、その場合は、原状回復と価値の増加とが混在することになります。
このような場合は、耐用年数の延長部分に対応する部分を資本的支出とするのが一般的です。
残りが収益的支出(修繕費)になります。

資本的支出=支出額×「延長」耐用年数÷「残存」耐用年数


【事後の減価償却】
耐用年数を延長した場合には、残存耐用年数により計算し、耐用年数を延長しない場合には、当初の耐用年数により計算するのが合理的です。
なお、問題の指示が最優先です。

(1)残存耐用年数による場合
支出後の減価償却費=(資本的支出を含めた取得原価−資本的支出を含めた残存価額−前期末までの減価償却累計額)÷残存耐用年数

(2)当初耐用年数による場合
従来部分、資本的支出部分ともに当初耐用年数により減価償却費を計算します。
この場合の計算は、当初の耐用年数による新しい有形固定資産を取得した場合と全く同様です。


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償却方法の変更

【基本的な考え方】
償却方法を変更した場合は、変更時点(通常は期首)で、変更後の方法での合理的な償却を行います。

定額法 → 定率法の場合は、期首簿価に償却率を乗ずる。
定率法 → 定額法の場合は、変更時の簿価を残存(当初)耐用年数に配分しますが、残存価額は、「当初の取得原価」に対するものである点に注意しましょう。


【定額法から定率法への変更】
変更年の減価償却費=(取得原価−減価償却累計額)×残存(当初)耐用年数の償却率

なお、いったん、臨時償却(過去の定率法による償却額と定額法による償却額の差額を臨時償却費とする)をする考え方もあるので、必ず問題の指示に従いましょう。


【定率法から定額法への変更】
変更年の減価償却費=(取得原価−減価償却累計額−残存価額)÷残存(当初)耐用年数
残存価額は、取得原価×残存割合(通常は10%)

なお、税法では、償却方法の変更と耐用年数の変更とが手続上異なっています。
理論的には、残存耐用年数(の償却率)によるべきですが、当初の耐用年数(の償却率)での出題も考えられます。
いずれによるかは、問題の指示に従いましょう。


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臨時償却

【臨時償却の意義】
「臨時償却」とは、当初は予見できなかった新技術の発明等の外的事情により、固定資産の機能が著しく減価した場合(陳腐化・不適応化等)に臨時的に行う減価償却をいいます。
臨時償却は、いわば過去の帳簿価額の修正(減価償却累計額の修正)です。


【臨時償却費の計算】
臨時償却費は、「新たな耐用年数で計算した減価償却累計額」と「従来の耐用年数で計算した減価償却累計額」との差額として計算されます。

「新耐用年数での期首減価償却累計額」−「旧耐用年数での期首減価償却累計額」

臨時償却費は、特別損失(前期損益修正)です。
その後の通常の償却を残存耐用年数で行うか、当初の耐用年数(法定耐用年数)で行うかは、問題の指示による必要があります。
税理士試験では、法定耐用年数で行う場合も少なくありません。
問題に指示がない場合には、理論的な、残存耐用年数で行うべきでしょう。


【会計処理】
(臨時償却)臨時償却費××× 減価償却累計額×××
(通常償却)減価償却費××× 減価償却累計額×××


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級数法

【級数法の意義と計算方法】
(1)級数法の意義

級数法は、減価償却方法の一種です。

「耐用年数にわたってその償却費を級数的に逓減するように計算する減価償却方法」を級数法といいます。

級数法によると減価償却費の額が、徐々に減っていくので、定率法とともに「逓減法」とも呼ばれます。

例えば、耐用年数が3年なら、減価償却費の割合が、3、2、1と徐々に減っていくように計算するのが級数法です。

1年目 3(の割合)
2年目 2(の割合)
3年目 1(の割合)
 合計 6

結局は、減価償却すべき金額(取得価額から残存価額を控除した要償却額)にそれぞれの年分の割合を掛け、その合計(総項数)で割ればよいことになります。


級数法の償却額=(取得原価−残存価額)×当期項数/総項数


(2)具体的計算

「総項数」の計算は、「耐用年数まで1から順に足した数字」です。

耐用年数×(耐用年数+1)÷2でも算出できます。

耐用年数が2年であれば、(2×3)÷2=3 が総項数です。

初年度は2、二年度目は1を分子にして計算すればよいです。

残存価額を控除する(0.9をかける)のは、定額法と同様です(←忘れやすいので注意しましょう)。



【級数法の月割計算】

級数法の場合の月割計算がやや複雑です。

例えば、取得原価60 残存価額0 耐用年数3年の資産の場合、
固定資産を期首に取得していれば、減価償却費は次のように計算します。

総項数(分母)は、1+2+3=6 又は (3+4)÷2=6 です。

第1期 60×3/6=30
第2期 60×2/6=20
第3期 60×1/6=10

しかし、期中で取得した場合が、ちょっと面倒です。

決算期を1月1日から12月31日で、7月1日に取得した場合を考えてみましょう。

第1期(60×3/6×6月/12月)=15
第2期(60×3/6×6月/12月)+(60×2/6×6月/12月)=25
第3期(60×2/6×6月/12月)+(60×1/6×6月/12月)=15
第4期(60×1/6×6月/12月)=5

うーん。黒板が欲しい。

なんとか階段状に四角を3個書いて、事業年度とあわせて、って文章じゃなあ。



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火災損失

【火災損失発生時の処理】

(1)保険が付されていない場合

火災等の災害にあい自己の保有する資産が損害を受けた場合は、資産の帳簿価額を減らし、「災害(火災)損失」等(費用)の勘定科目で処理します。

(借)火災損失×××(貸)建物等×××


(2)保険が付されている場合

資産には、保険が付されている場合があり、この保険金が確定しないと実際の損害額は確定しません。

この時に使うのが、火災(保険)未決算勘定です。

火災未決算勘定は、いわば、仮の勘定です。

(借)火災未決算×××(貸)建物等×××

もっとも保険金額よりも余計に保険金がもらえることはありません。

保険金額(たとえば100円)が建物の帳簿価額(150)円よりも小さい時は、その差額は、保険金額が確定していなくても費用計上します。

(借)火災未決算100(貸)建物等150
   火災損失  50



【保険金確定時の処理】
その後に保険金額が確定したら、その借方差額は「火災損失」勘定(費用)、貸方差額は「保険差益」勘定(収益)で処理します。

貸方差額の保険差益は、会計理論上は、資本剰余金とする考え方もありますが、簿記論での出題時(特に第3問)は、収益(特別利益)と考えてよいでしょう。

(保険金が80の場合)
(借)未 収 金80(貸)火災未決算100
   火災損失20

(保険金が130の場合)
(借)未収金130(貸)火災未決算100
            保険差益  30



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高額下取

固定資産の買換えを行う場合に下取資産を適正な時価よりも高額で買い取ってくれることがあります。

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有形固定資産の取得原価

【取得形態別の取得原価】

有形固定資産の取得原価は、「購入代価等に付随費用」を加算した金額です。

おさえておきたいのは「購入以外」の場合の取得原価です。

(1)贈与   → 時価

(2)現物出資 → 現物出資資産の時価(取得資産と交付株式の時価のうち信頼性の高い金額)

(3)同一用途の固定資産との交換 → 簿価

(4)有価証券との交換 → 時価

なお、付随費用(購入手数料等)を加算する点は、いずれの場合も同じです。



【取得原価の意味】

会計学的に取得原価の意味を説明するのは、簡単ではありません。

ざっくりとは、取得した原価(元の値段)の語義からいっても、取得に際してどれだけ対価を払ったか(どれだけ犠牲があるか)という理解でよいでしょう。

同一用途の固定資産の交換もその考え方でいけます(もっとも会計学上は、議論の余地があります)。

問題は、現物出資、贈与、有価証券との交換時の「時価」です。

いずれの場合も犠牲に供した資産(発行した株式)ではなく、取得した資産の時価を取得原価としています。

この点、原価主義とは何かを考えさせられます。

簿記論で理論的な視点での出題は、考えにくいでしょうから、無理矢理にでもおさえておきましょう。

取得原価の違いは、償却計算にも影響するので重要性は、出題頻度よりも高いです。


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減価償却関連の推定の意味

【減価償却費の計算】

例えば、次の条件により、定額法による減価償却を行う場合を考えてみましょう。

建物100円 耐用年数10年 残存価額10%

減価償却費は、次のように計算されます。

(100円−100円×10%)÷10年=9円

多くの方は、電卓で、

100 × .9 ÷ 10(0.9の「0」は省略できます)

とやっているのではないでしょうか。


間接法:(借)減価償却費9 (貸)減価償却累計額9

直接法:(借)減価償却費9 (貸)建   物  9




【取得原価の推定】

(決算整理前試算表)
建物 91

(決算整理事項)
建物 取得原価? 耐用年数10年 残存価額10% 建物は前期首に取得

取得原価100が仮に分からないなら取得原価をXとおいて、


X − X×0.9÷10×1=91


という関係が成り立つので、この式を解いて、


X − 0.09X=91

0.91X=91

∴ X=100


慣れると電卓のみで、


(.9÷10×1)−(1M+91÷MR)=(−)100


でいけます。

マイナス部分を先に計算すると答えがプラスでだせますが、最初の部分を慎重にやって、解答のマイナスを無視する感じでいいのではないでしょうか。



【取得原価の推定が出題される意味】

このような取得原価の逆算そのものを解き方として覚え込むというようなことは不要です。

また、その意味もないと思います。

定額法による減価償却費の計算ができるなら、減価償却の仕組みを理解しているなら、そのうちの条件が欠けていてもそこは求められるハズだというのが問題の意図でしょう。

数式をたててそれを解くことそのものを求めているわけではないでしょう。

もっとも初めてこのような問題に接してできるかどうかは、また微妙な話だったりします。

トータル微妙ですが。




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直接法と間接法

【直接法と間接法】
有形固定資産の記帳方法には、直接法と間接法があります。

(1)直接法:(借)減価償却費10 (貸)固定資産   10

(2)間接法:(借)減価償却費10 (貸)減価償却累計額10

固定資産の実質的な価額は90円(帳簿価額)です。

これを帳簿上は、100−90という形で示すか(間接法)、90とだけ示すか(直接法)の違いです。

そういえば昔は、減価償却累計額じゃなくて、減価償却引当金だったりします(←忘れてください)。



【両方式の特徴】
間接法が取得原価と減価償却累計額の両者を帳簿上も明示する方法で、理論的にすぐれていると説明されることが多いようです。

直接法は、簡便法とされることが多いかもしれません。

日商簿記検定では、伝統的に、間接法での出題が多いようですが、税理士簿記論では、直接法の出題も少なくありません。

なれないと結構、しんどいと思います。

もっとも最近では、日商でも直接法の出題があるようで、もしかすると日商の何か(何だろう)が少し変ったのかもしれません。



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定額法の償却率

【定額法の計算】
固定資産の取得原価を利用可能期間に配分する手続が減価償却です。

減価償却の方法には、定額法、定率法等がありますが、税理士試験の出題で留意したいのが、定額法の計算で率を乗ずることがある点です。

定率法は、期首未償却残額に償却率を乗じて、減価償却費を計算します。

定額法は、通常、取得原価から残存価額を控除した金額を耐用年数で割って計算します。

簡単な例で確認しておきましょう。

取得原価 100円、耐用年数10年、残存価額10%(10円)の備品を当期首に取得した場合、定額法の計算は、

(取得原価100−残存価額10)÷耐用年数10年=9円 です。

これが、

取得原価 100円、償却率10%、残存価額10%(10円)の備品を当期首に取得という形で出題されたとすると、この場合の計算は、

(取得原価100−残存価額10)×償却率10%=9円 です。

もちろんこの償却率は、1÷10年=0.1ですが、定率法の計算と異なり、残存価額を控除した金額に償却率を乗ずる点にはくれぐれも注意しましょう。

このような計算を行うことがあるのは、定額法での償却(限度)額を率により計算する税法の影響で、他の検定試験や国家試験にはない税理士試験固有の点といってよいと思います(たぶん)。



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有形固定資産と減価償却

【有形固定資産の意味】

(1)有形固定資産とは

棚卸資産(商品等)は営業目的の資産です。

固定資産は使用目的の資産です。

使用目的の有形資産が、有形固定資産です。


棚卸資産   → 「販売」目的の資産

有形固定資産 → 「使用」目的の資産



(2)棚卸資産との違い

同様に土地といっても販売目的で保有する土地は、棚卸資産であり、使用目的で保有する土地は、固定資産です。

これらの資産を取得した場合に、前者は三割法を前提とすれば仕入勘定で処理され、後者は土地勘定で処理されます。

使用目的の土地 → 土地勘定

販売目的の土地 → 仕入勘定


(3)購入代金の未払

購入代金が未払いの場合は、これに応じて、買掛金勘定、未払金勘定を使い分ける必要があります。

基本中の基本ですが、やや異なる趣向での出題時にも対処できるようにしておきましょう。


【減価償却の意味】
(1)減価償却とは
有形固定資産は、使用目的の(有形)資産です。
有形固定資産の取得原価を使用期間(耐用年数)に配分する手続きを減価償却といいます。

(2)減価償却方法
1.定額法
2.定率法
3.級数法
4.生産高比例法


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