税理士試験 簿記論 講師日記

税理士試験 簿記論、財務諸表論、簿記検定の問題、学習方法等をアドバイス。

財務諸表論 講義

財務会計講義(第13版)

財務会計講義(第13版)出ましたね。

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単一性の原則の意義

「株主総会提出のため、信用目的のため、租税目的のため等種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成する必要がある場合、それらの内容は信頼しうる会計記録に基づいて作成されたものであって、政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない。」
一般原則の第七原則が単一性の原則です。

財務諸表は、様々な目的で利用されます。
株主に対しては、株主総会に提出してその承認を受ける必要があります。
銀行は、お金を貸すときに財務諸表をみます。
その企業がどれだけ信用できるか(お金を貸しても大丈夫か)をみる目的で財務諸表が必要だからです。
これが信用目的です。
法人税の申告にあたっては、申告書に財務諸表を添付します。
これは法人税の計算が企業利益に調整を加えた課税所得を基礎に行うためです。
これが租税目的です。
このように企業は様々な目的で財務諸表を利用(公開、提出)します。
そんなとき若干の形式の違いはあるかもしれません。
多少の形式の違いはあってもいいけど、実質的な違いはダメというのがこの単一性の原則です。

単一性の原則は、形式は多様であっても実質は一つであることを求める原則です。
そのことから単一性の原則の要請は、「実質一元形式多元」ともいわれます。
財務諸表は帳簿記録から作成されるので、その帳簿記録が一つであることを要求したものといいかえてもよいでしょう。
その意味では、二重帳簿の排除を要求する原則ともいえます。

(まとめ)
財務諸表の形式は多元でも実質は一元でなければならない。

保守主義の原則の適用例

保守主義の原則の具体的な適用例としては、次のようなものがあります。
(1)各種引当金の計上
(2)割賦販売における回収基準(回収期限到来基準)による収益の認識
(3)減価償却方法としての定額法に対する定率法
従来あげられることの多かった低価主義は、その他有価証券の部分純資産直入法に姿を代えて生きているといえるかもしれません。
後入先出法は棚卸資産基準の改正により廃止されています。

(まとめ)
保守主義の適用例には、引当金の計上、回収(期限到来)基準、定率法等がある。
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過度の保守主義

保守主義の原則は、費用の早期計上、収益の慎重な計上を行うことを要請した原則です。
ざっくりとは、ある期の会計処理を費用を多く、収益を少なく計上するのが保守主義の考え方といってよいでしょう。
しかし、保守主義的な会計処理にも一定の限度(範囲)があります。
その限度は、一般に公正妥当と認められた会計処理の原則や手続の範囲内であることです。
結果として利益が小さくなればよい訳ではありません。
あくまでも一般に公正妥当と認められる会計処理や手続きの範囲内という限定がある点には注意する必要があります。
認められた範囲外の保守主義的会計処理までもが認められる訳ではありません。
行き過ぎた保守主義は、過度の保守主義と呼ばれ、真実性の原則に反し、認められません。

(まとめ)
保守主義的会計処理は、一般に公正妥当と認められる会計処理の原則及び手続の範囲内で認められるものであり、過度の保守主義は、真実性の原則との関係からも認められない。
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保守主義の原則の意義

「企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない。」
一般原則の第六原則は「保守主義の原則」と呼ばれます。
保守主義の原則は、慎重性の原則や安全性の原則とも呼ばれることがあります。

単純にはいえませんが、「費用の早期計上、収益の慎重な計上」が保守主義の基本的な考え方といってよいでしょう。
一般に「保守」の語は、現状維持を意味します。
いわば、「そのまま」が一般的な意味での「保守」です。
しかし、会計処理の「現状維持」を意味するのが保守主義ではありません。
健全な会計処理を行うことによる「企業の」現状維持が保守主義の考え方です。

企業会計上、複数の会計処理が認められる局面は少なくありません。
このような場合にもっとも健全な会計処理を行うべきことを指示するのが、保守主義の原則です。
ここに健全な会計処理とは、利益を多く計上することによる配当や課税による財産の流出を回避する会計処理を意味します。
もっとも対外的な取引の数値は会計処理方法にかかわらず変りません。
その意味では、費用を早めに、収益を遅めに計上するのが保守主義的といえるでしょう。

(まとめ)
企業の財政に不利な影響を及ぼす場合には、これに備えて適当に健全な会計処理(認められた範囲内での費用の早期計上、収益の慎重な計上)をしなければならない。
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正当な理由

いったん採用した会計処理の原則及び手続は、毎期、継続して適用することが要求されます。
継続性の変更が認められる正当な理由による変更としては次のようなものがあげられます。
(1)法令等の改廃による変更
(2)より合理的な変更
(3)経済事情の著しい変化による変更
(4)合併、組織変更等の変化による変更
なお、正当な理由により、会計処理の原則や手続に変更を加えた場合は、注記によってその旨を示す必要があります。

(まとめ)
継続性の変更が認められる正当な理由には、(1)法令等の改廃により変更、(2)より合理的な変更、(3)経済事情の著しい変化による変更、(4)合併、組織変更等による変更などがあります。
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継続性の原則の必要性

「継続性の原則」は、会計処理等の継続性を要請する原則ですが、会計処理の継続性が要請されるのは、次の二つの理由からです。

(1)財務諸表の期間比較の可能性の確保
企業会計原則は、注解3において、次のように述べています。
「企業が選択した会計処理の原則及び手続を毎期継続して適用しないときは、同一の会計事実について異なる利益額が算出されることになり、財務諸表の期間比較を困難ならしめ、この結果、企業の財務内容に関する利害関係者の判断を誤らしめることになる。
従って、いったん採用した会計処理の原則又は手続は、正当な理由により変更を行う場合を除き、財務諸表を作成する各時期を通じて継続して適用しなければならない。 」

(2)利益操作の排除
企業会計原則において、触れられていませんが、継続性の原則には、利益操作を排除する目的もあります。
企業会計では、一つの会計事実に対して複数の会計処理方法が認められている場合が少なくありません。
会計処理方法の違いは、そのまま利益計算の違いとなってあらわれます。
例えば、減価償却の計算方法として定額法を採用するか、定率法を採用するかで企業利益の額は異なってきます。
このような会計処理方法を変更することによって経営者に利益を操作する余地を与えないことも継続性の原則の狙いといってよいでしょう。

(まとめ)
継続性の原則には、財務諸表の期間比較の可能性を確保し、経営者による利益操作を排除する狙いがある。
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継続性の原則が適用される場合

「継続性の原則」が問題となるのは、一つの会計事実について、複数の会計処理の原則及び手続が、認められている場合です。
「認められた処理の原則及び手続」から「認められた他の処理の原則及び手続」への変更の場合に、「継続性の原則」の適用が問題になります。
認められていない処理の原則及び手続から認められた処理の原則及び手続への変更は当然の変更であり、継続性の原則の適用が問題になりません。
認められた処理の原則及び手続(○)と認められていない処理の原則及び手続(×)との間の変更の関係は、次のとおりです。

× → × ………ダメ
○ → × ………ダメ
× → ○ ………当然の変更
○ → ○ ………継続性の原則の話

(まとめ)
継続性の原則が適用されるのは、一つの会計事実について、複数の会計処理の原則及び手続が認められている場合である。
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継続性の原則の意義

「企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。」
一般原則の第五原則が「継続性の原則」です。

企業会計では、一つの会計事実に対して、複数の会計処理の原則や手続が認められている場合が少なくありません。
このような場合には、毎期継続して同一の会計処理の原則や手続を適用する必要があります。
そうでなければ、財務諸表の期間比較の可能性を害し、また、経営者の利益操作の余地を残すことになります。
そのため、会計処理の原則及び手続の継続適用を要求するのが継続性の原則です。

(まとめ)
企業会計は、その処理の原則及び手続きを毎期継続して適用しなければならない。

後発事象の具体例

後発事象の具体例としては、次のようなものがあります。
(1)火災・出水等による重大な損害の発生
(2)多額の増資又は減資及び多額の社債の発行又は繰上償還
(3)会社の合併、重要な営業の譲渡又は譲受
(4)重要な係争事件の発生又は解決
(5)主要な取引先の倒産

(まとめ)
具体例(必ずしも一字一句である必要はありません)をおさえておきましょう。
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後発事象の意義

「財務諸表には、損益計算書及び貸借対照表を作成する日までに発生した重要な後発事象を注記しなければならない。
後発事象とは、貸借対照表日後に発生した事象で、次期以後の財政状態及び経営成績に影響を及ぼすものをいう。
重要な後発事象を開示することは、当該企業の将来の財政状態及び経営成績を理解するための補足情報として有用である。」

「後発事象」とは、文字どおり、「貸借対照表日」後に発生した事象です。
貸借対照表日とは、貸借対照表の作成の基準となる日、つまり期末日をいいます。
貸借対照表日(期末日)が、3月31日であれば、翌日の4月1日以後に発生した出来事が後発事象です。
貸借対照表日後に大きな災害や企業にとって不利益をもたらすような事実が発生した場合には、これらの情報を開示することは、利害関係者にとって有益でしょう。
後発事象のうち注記を要するのは、重要なものに限られますが、後発事象の開示は、将来の財政状態及び経営成績の理解に有用です。

(まとめ)
財務諸表には、財務諸表作成日までに発生した重要な後発事象(貸借対照表日後に発生した次期以後に影響を及ぼす事項)を注記しなければならない。
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会計方針の具体例

「会計方針」の例としては、次のようなものがあります。
(1)有価証券の評価基準及び評価方法
(2)たな卸資産の評価基準及び評価方法
(3)固定資産の減価償却方法
(4)繰延資産の処理方法
(5)外貨建資産・負債の本邦通貨への換算基準
(6)引当金の計上基準
(7)費用・収益の計上基準
なお、重要な会計方針は、注記をしなければなりませんが、代替的な会計基準が認められていない場合には、会計方針の注記を省略することができます。

(まとめ)
「会計方針」の具体例を完璧に覚えてください(→まとめじゃないか)。
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会計方針の意義

「会計方針とは、企業が損益計算書及び貸借対照表の作成に当たって、その財政状態及び経営成績を正しく示すために採用した会計処理の原則及び手続並びに表示の方法をいう。」

企業会計は、企業活動の記録・測定・報告です。
その方針が、「会計方針」です。
記録と測定を「処理」とまとめるなら、会計処理と報告の方針が「会計方針」といえるでしょう。
財務会計では、報告は、財務諸表の開示という手段をとりますので、会計方針は、会計処理と表示の方針と短くはいえるでしょう。
企業会計原則では、会計方針として、(1)会計処理の原則、(2)会計処理の手続、(3)表示の原則があげられています。

やや具体的に見ておくと、例えば、棚卸資産の評価は、原価(正味売却価額が原価を下回る場合には、正味売却価額)によります。
さらに細かくみていくと、同様に原価といっても、先入先出法をとるのか、平均法をとるのかでも、財務諸表の数値は異なってきます。
このためどのような会計処理の原則(原価基準)や会計処理の手続(先入先出法か、平均法か)を採用したかを利害関係者に開示する必要があるのです。

(まとめ)
「会計方針」とは、企業が損益計算書及び貸借対照表の作成に当たって、その財政状態及び経営成績を正しく示すために採用した会計処理の原則及び手続並びに表示の方法をいう。

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明瞭性の原則

「企業会計は、財務諸表によって、利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない。」
一般原則の第四原則は、「明瞭性の原則」です。

企業会計では、企業の財政状態及び経営成績に関する情報を利害関係者に対して財務諸表という手段を用いて報告します。
いかに会計処理が正しく行われていても、財務諸表の表示が不明瞭であれば、利害関係者に対して、企業の財政状態や経営成績に関する情報が正しく伝わらない可能性があります。
利害関係者に対する情報伝達を適切に行うために財務諸表の明瞭表示を求めたのが、「明瞭性の原則」です。
その意味で「明瞭性の原則」は、適正表示の原則等とも呼ばれます。

利害関係者の判断を誤らせないためには、財務諸表を適正な様式(区分、配列等)で作成し、その内訳明細(附属明細書)も作成する必要があるでしょう。
また、どのような会計処理等を行ったのか(「会計方針」)、決算日後に重要な事実は生じていないか(「後発事象」)等の情報も開示する必要があります。

(まとめ)
「明瞭性の原則」は、財務諸表の明瞭表示を求めた原則で、その手段として、財務諸表の適正な作成や附属明細書の作成の他に、「会計方針」や「後発事象」の開示も要求される。
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資本剰余金と利益剰余金

「資本剰余金は、資本取引から生じた剰余金であり、利益剰余金は損益取引から生じた剰余金、すなわち利益の留保額であるから、両者が混同されると、企業の財政状態及び経営成績が適正に示されないことになる。従って、例えば、新株発行による株式払込剰余金から新株発行費用を控除することは許されない。」

「資本と利益の区別の原則」の後段では、「資本剰余金」と「利益剰余金」が区別されなければならないことが述べられています。

「資本剰余金」とは、「資本取引」から生じた剰余金をいいます。
「利益剰余金」とは、「損益取引」から生じた剰余金をいいます。
「資本剰余金」と「利益剰余金」の区別は重要ですが、特に「資本剰余金」を「利益剰余金」と混同することへの戒めの意味が強いといえそうです。
「資本剰余金」を「利益剰余金」とし、配当をなすことによる財産の社外流出は、特に会社法会計で重視されている保護の対象者である債権者を害する結果につながります。

(まとめ)
「資本剰余金」は、「資本取引」から生じた剰余金であり、「利益剰余金」は「損益取引」から生じた剰余金であり両者を混同してはならない。
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資本取引と損益取引

「資本と利益の区別の原則」は、その前段で、「資本取引」と「損益取引」の区別を要求しています。

「資本取引」とは、資本主(株主)からの直接的な資本の拠出取引及びその増減取引をいいます。
典型的には、会社設立時の資本金の受入取引やその後の増資・減資取引が「資本取引」に該当します。
もっとも、会計を誰の立場によって行うかの見方(「会計主体論」)によっては、「資本取引」の範囲も異なります。

「損益取引」とは、資本取引以外の取引から生じた純資産の増減取引をいいます。
企業は資本主から資本を受入れ、これを運用して利益を獲得することを目指しています。
この利益の獲得過程における純資産の増減取引である費用収益の発生取引が「損益取引」です。
「資本取引」と「損益取引」を混同すれば、企業の正しい財政状態や経営成績を示すことはできません。

(まとめ)
「資本取引」とは、資本主からの直接的な資本の拠出及びその増減取引をいい、「損益取引」とは、資本取引以外の経営活動による間接的な純資産の増減取引をいう。
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資本と利益の区別の原則の意義

「資本取引と損益取引とを明確に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない。」
一般原則の第三原則は、「資本と利益の区別の原則」(資本取引・損益取引区別の原則、剰余金区別の原則)です。

「資本と利益の区別の原則」は、「もとで」としての資本と「もうけ」としての利益の明確な区別を要求する原則です。
企業は出資者から受け入れた資金(「もとで」)をもとに活動を行い、「もうけ」を獲得することを目指しています。
この「もとで」と「もうけ」を明確に区別することは、とても重要です。
同じく純資産(例えば現金)が増えたといっても、出資者から資金を受入れたのと利益があがったのでは、状況は全く異なります。
出資者から受入れた「もとで」(の追加)を「もうけ」としたのでは、正しい財政状態や経営成績を示すことはできません。

「資本と利益の区別の原則」の前段では、取引に着目して、資本取引と損益取引を明確に区別することを要求しています。
後段では、取引の結果に生ずる剰余金に着目して資本剰余金と利益剰余金を混同してはならないことが指摘されています。

(まとめ)
「資本と利益の区別の原則」は、「もとで」としての資本と「もうけ」としての利益の明確な区別を要求する原則である。
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正規の簿記の要件

「正規の簿記の原則」は、正確な会計帳簿の作成を要請する原則です。
「正規の簿記の原則」にいう「正規の簿記」であるためには、次の3要件が必要です。
(1)網羅性……すべての取引を記録すること。
(2)秩序性……秩序立った一定のルールに基づいて記録すること。
(3)立証性……事後に検証可能な資料に基づいて記録すること。

「正規の簿記の原則」の文章に「すべての取引につき」とあるように、網羅性が正規の簿記の要件として必要ということは頷けます。
これは記録して、これは記録しないなどと、記録すべき取引を選ぶ(一部を記録しない)ことがあってはなりません。

そのような記録が、経営者や経理担当者の単なる記憶や憶測によってなされても困ったものです。
その意味で、立証性(証憑準拠性、検証性とも呼ばれます)も必要でしょう。

やや、わかりにくいのが秩序性ですが、複式簿記は、正規の簿記の要件である秩序性を満たすにふさわしい簿記であるといえます。

(まとめ)
正規の簿記の原則にいう正規の簿記であるためには、網羅性、秩序性、立証性の3要件を満たす必要がある。
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正規の簿記の原則の意義

「企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない。」
一般原則の第二原則は、「正規の簿記の原則」と呼ばれています。
ただ、「正規の簿記の原則」と呼ばれる文章の中に「正規の簿記の原則」という言葉が入っていますので、この文章そのものは「正規の簿記の原則」ではなく、「正規の簿記の原則」の原則というべきかもしれません。

「正規の簿記の原則」は、正確な会計帳簿の作成を要請する原則です。
正確な会計帳簿の作成が要求されるのは、その成果としての貸借対照表や損益計算書といった財務諸表を正しく作成するためといってよいでしょう。
「正規の簿記の原則」は、帳簿記録に基づく財務諸表の作成(「誘導法」)を要請しているといえるでしょう。

(まとめ)
「正規の簿記の原則」は、正確な会計帳簿の作成を要請する原則であり、「誘導法」による財務諸表の作成が求められる。
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真実性の意味

企業会計は、企業の活動結果の財務諸表による報告を意味しますが、その報告の真実性を求めたのが「真実性の原則」です。
真実性の原則にいう真実とは、たった一つの真実(絶対的真実性)を意味しているのではなく、「相対的真実性」を意味しています。

企業会計上認められている会計処理の方法等は、一つとは限りません。
減価償却を例にとれば、定額法、定率法等の複数の方法が認められています。
いずれの方法を採用するかにより、結果としての財務諸表の数値も異なります。
また、具体的な償却計算についても耐用年数や残存価額の算定には確定値だけでなく、見積もりが不可欠です。
これらの方法の選択や見積りにより、経営者や会計担当者が異なれば、財務諸表の数値は異なってきます。
そのため真実性の原則にいう真実性もたった一つの絶対的なもの(絶対的真実性)ではなく、「相対的真実性」であるといわれています。

(まとめ)
真実性の原則にいう真実は、たった一つの絶対的な真実ではなく、相対的な真実を意味している。
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真実性の原則の意義

「企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するのものでなければならない。」
企業会計原則の第一原則は、「真実性の原則」と呼ばれています。

企業会計は、企業の経済活動の記録・測定・伝達を意味します。
その伝達手段として用いられるのが、損益計算書や貸借対照表等の財務諸表です。
財政状態(資産、負債、資本の状況)を示すのが貸借対照表であり、経営成績(費用、収益の状況)を示すのが損益計算書です。
これらの財務諸表を適正に作成、開示することにより、「真実性の原則」にいう真実な報告を提供することができます。
財務諸表は、簿記的な記録を基礎に作成される訳ですから、「真実性の原則」は、簿記的な処理をも含めた会計全般に関する原則(包括原則)といえるでしょう。

「真実性の原則」は、必ずしも具体的な内容を規定している訳ではありません。
他の一般原則や損益計算書原則、貸借対照表原則に従うことによって、「真実性の原則」にいう真実な報告を行うことができます。
「真実性の原則」は、七つある一般原則の中でも一番位の高い原則(最高規範)であるといえるでしょう。

(まとめ)
「真実性の原則」は、企業の財政状態及び経営成績に関する真実な報告を要求する包括原則であり、他の会計原則を守ることにより、真実な会計報告を行うことができる。
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企業会計原則

これまで、我国の企業会計の基準としては、「企業会計原則」がその中心にありました。
「企業会計原則」は、「企業会計審議会」がその設定主体となり作成された「一般に認められた会計原則」です。
その内容は本文と注解からなり、本文はさらに一般原則、損益計算書原則、貸借対照表原則からなっています。

「企業会計原則」は、昭和24年に、それまでバラバラだった企業会計制度の改善統一を目指して制定されました。
その性格としては、次の三点が指摘できます。
(1)会計慣習の要約
(2)公認会計士監査の指針
(3)他の法令等の改廃等の際の指針

新しい会計基準の制定により有効でない企業会計原則の規定は増えています。
しかし、いまだ学習上もその重要性は高いといってよいでしょう。

(まとめ)
我国における「一般に認められた会計原則」として、「企業会計原則」があり、その性格として、会計慣習の要約、公認会計士監査の指針、他の法令等の改廃等の際の指針があげられる。
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会計原則と会計基準

企業を取り巻く利害関係者は、企業に対し、様々な関心を持っています。
その関心の在り方は、一様ではありません。
時としてその利害が対立する事もあるでしょう。
このような対立を調整するには、あらかじめ会計のルールを定めておく必要があります。
会計のルール(規範)のうち社会的に妥当と認められるものを「会計原則」(または「会計基準」)といいます。

これまでの「会計原則」は、実際に行われている会計の中から妥当と思えるものを要約し、体系化してできあがっていました。
このようないわば慣習の要約としての「会計原則」は、「一般に認められた会計原則」と呼ばれます。
こんなルールをあらかじめ決めておくのではなく、すでに行われている会計の中からよさそうなものを集める方式です。
慣習の要約として我国でこれまで中心的役割を果たしてきた「会計原則」が、「企業会計原則」です。
この「企業会計原則」をはじめとする「会計原則」(「会計基準」)の習得が財務諸表論の中心的課題になります。

(まとめ)
会計の社会規範は、「会計原則」(会計基準)と呼ばれ、我国では慣習の要約として形成されてきている。
社会的に認知された「会計原則」は、「一般に認められた会計原則」と呼ばれ、我国では、「企業会計原則」がこれに該当する。
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貨幣的評価の公準

「貨幣的評価の公準」とは、会計が貨幣をその測定単位として行われるという前提をいいます。
企業会計では、企業活動の結果を財務諸表という手段を用いて利害関係者に開示します。
財務諸表上の数値は、簿記的な記録を基礎としますが、その記録は主として貨幣数値(我国では円)によって行われます。
貨幣数値以外の数値(例えば物の数量等)が用いられることもありますが、あくまでも補助的に使用されるに過ぎません。

簿記上の記録、そして、財務諸表上の数値の単位を統一していなければ、数値の加減は意味を持ちません。
100円と100個を足して、200という数値を出しても、その200という数字は、何の意味も持っていません。
統一的な測定尺度として貨幣数値を用いることは、当然のことといえるでしょう。
貨幣数値が測定尺度として用いられる以上、貨幣数値に置き換えることの出来ないものや出来事は、会計記録の対象とはなることはありません。

(まとめ)
「貨幣的評価の公準」とは、会計が貨幣をその測定単位として行われる前提をいう。
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会計期間の公準

「会計期間の公準」とは、企業会計が期間計算を前提とすることを意味します。
企業が永久に事業活動を継続するとは限りません。
しかし、企業がその活動の継続を意図している事は間違いないでしょう。
このようにその継続的な活動を志向する企業は「継続企業」(ゴーイング・コンサーン)と呼ばれます。
「継続企業」の会計は、一定の期間を区切って行う必要があります。
一定の期間を区切らなければ、損益を算定することもできません。
「会計期間の公準」とは、このような意味での期間計算が行われるという前提を意味しています。

現実には、企業がその活動を止め、消滅の道を歩む事もあるでしょう。
しかし、以後の記述でもこのような企業(清算企業)を対象とするのではなく、「継続企業」を対象としているのです。

(まとめ)
「会計期間の公準」とは、「継続企業」を前提とした期間計算が行われるとの前提をいう。

企業実体の公準

「企業実体の公準」とは、企業を会計が行われるための計算単位(会計単位)とする前提です。
例えば、「特定のA社」の会計は、「A社」について行うというあたりまえの前提ともいえるでしょう。

企業会計は、企業の経済活動の記録・測定・伝達を意味します。
このような会計行為は「特定の企業」を単位に行われなければ意味がありません。
A社の売上が、いつの間にかB社の売上になったなどというのは、妙な話です。
そんな当たり前の仮定、前提が、「企業実体の公準」です。

もっともそんな怪しげな事が行われる余地が大きいのは、会社よりも個人企業かもしれません。
個人企業では、事業主の営利目的活動(つまりは、企業としての活動)と消費活動(最終消費者としての活動)が同時に行われることは少なくありません。
ひとつの行為の中に両方の側面が含まれている場合もあります。
たとえば、店舗と住宅が一緒の土地・建物の固定資産税を払った場合は、企業活動としての側面と消費活動としての側面の両者を含んでいます。
しかし、あくまでも事業主個人の活動と企業活動とは区別して記録されなければなりません。
資本主(個人事業主)からは独立した別個の会計単位が設けられ、その会計単位ごとに会計が行われるのは、当然でしょう。

(まとめ)
「企業実体の公準」とは、会計が行われるための計算単位(会計単位)が設定されるとの前提をいう。
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会計公準

企業会計が行われるための基礎的な前提を「会計公準」といいます。
代表的な「会計公準」として、「企業実体の公準」、「会計期間の公準」、「貨幣的評価の公準」があげられます。

「会計公準」は、すでに行われている企業会計の基礎的な前提・仮定です。
「会計公準」(基礎的前提・仮定)を土台として、「会計原則」(一般的な規範=ルール)が存在し、さらに「会計手続」(具体的な手続)が位置するといわれます。
例えば、減価償却という手続を例にとると、会計期間の公準(会計公準)の元に、費用配分の原則(会計原則)が適用され、減価償却(会計手続)が行われると説明することができます。

会計公準(会計期間の公準)→会計原則・基準(費用配分の原則)→会計手続(減価償却)

もっとも、このような意味での会計公準からすべての会計理論が説明できる訳ではありません。

(まとめ)
「会計公準」とは、企業会計上の基礎的な前提をいい、「企業実体の公準」、「会計期間の公準」、「貨幣的評価の公準」がある。
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財務諸表の種類

「会社法会計」と「金融商品取引法会計」では、作成する財務諸表に違いがあります。
まずは、「会社法会計」の財務諸表の名称をしっかりとおさえておきましょう。

会社法計算規則による計算書類(会社法における財務諸表の名称)は、次のとおりです。
(1)貸借対照表
(2)損益計算書
(3)株主資本等変動計算書
(4)個別注記表

なお、財務諸表等規則による財務諸表は、次のとおりです。
(1)貸借対照表
(2)損益計算書
(3)株主資本等変動計算書
(4)キャッシュ・フロー計算書
(5)附属明細表

(まとめ)
計算書類(会社法会計の財務諸表)には、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表がある。
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制度会計の目的

法律等に準拠した会計を「制度会計」といいますが、同じ「制度会計」でも、「会社法会計」と「金融商品取引法会計」では、その目的が異なります。
一般的には、「会社法会計」は、債権者保護に重点がおかれ、「金融商品取引法会計」では、投資家保護に重点がおかれているといわれます。

「会社法会計」では、債権者保護に重点がおかれています。
株式会社企業に関心を持つ者(利害関係者)には、株主や債権者、将来の株主候補としての投資家等の多様な人々がいます。
これらの利害関係者のうちでも原初的な資金の提供者である株主は重要です。
ただし、株式会社には、有限責任制(株主が出資した金額を限度としてしか責任を負わない制度)があります。
そのためか会社法の規制は、むしろ債権者にむけられることが多いようです。
株主は、有限責任しか負わないので、その分、債権者に配慮する必要があるということです。

これに対して「金融商品取引法会計」の対象となる企業は、株式を公開している大規模な株式会社等です。
誤解を恐れずにいえば、投資家がきちんとした投資判断を行うための材料を提供する手段として「金融商品取引法会計」を位置付けるとよいかもしれません。
投資家に向けられた会計、それが「金融商品取引法会計」といってよいでしょう。

(まとめ)
「会社法会計」は、債権者保護に、「金融商品取引法会計」では、投資家保護に重点がおかれる。
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制度会計の種類

法律等に準拠した会計は、「制度会計」と呼ばれ、「制度会計」には、「会社法会計」、「金融商品取引法会計」等があります。

「会社法会計」は、文字どおり「会社法」をその規制法規とする会計です。
より具体的には、「会社法施行規則」や「会社計算規則」に定めがあります。
以下の記述では、これらの法令も含んだ意味で「会社法」という語を用いることにします。

会社法は、すべての会社を規制の対象にしています。
以下の記述では、数からいって最も多い株式会社を前提にします。

「金融商品取引法会計」は、「金融商品取引法」を規制根拠とする会計です。
具体的な財務諸表については、「財務諸表等規則」に定めがあります。

「金融商品取引法法会計」の対象は、公認会計士監査を受けなければならない大規模株式会社等に限定されています。

(まとめ)
「会社法会計」(法規→会社法・会社計算規則、対象→すべての会社)
「金融商品取引法会計」(法規→金融商品取引法・財務諸表等規則、対象→大規模株式会社等)
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制度会計の意義

「企業会計」や「財務会計」とは別に、「制度会計」という語が用いられることがあります。
「制度会計」とは、法律や規則等に準拠した会計をいい、そうでない会計は、非制度会計と呼ばれます。
「制度会計」を単に「財務会計」と同様の意味で用いる場合も少なくありません。

制度会計には、「金融商品取引法会計」、「会社法会計」、「税務会計」があります。
「税務会計」は、報告する相手先が国に限定されるため、以下の記述では基本的に触れることは多くありません。
制度会計のうち税理士試験の財務諸表論で重要性が高いのは、「会社法会計」です。

もっとも最近の一連の会計基準の変革を受けて、「会社法会計」と「証券取引法会計」は接近してきています。
逆に「税務会計」との距離は広がったといえるかもしれません。

(まとめ)
法律等に準拠した会計を「制度会計」といい、「会社法会計」、「証券取引法会計」、「税務会計」がある。
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財務会計と管理会計

財務諸表論の対象となるのは、「企業会計」です。
営利目的の組織体は「企業」と呼ばれますが、企業を対象とした会計が「企業会計」です。

「企業会計」は、誰に報告を行うかによってさらに「財務会計」と「管理会計」に区別されます。
「財務会計」は、対外報告会計(外部報告会計)とも呼ばれ、企業の外部利害関係者(典型的には株主や債権者)に報告を行う会計です。
「管理会計」は、対内報告会計(内部報告会計)とも呼ばれ、企業自身(経営者)にとって有効な情報をもたらすことを目的とした会計です。

単に「企業会計」といった場合には、「財務会計」を指しているといる場合が多いでしょう。

(まとめ)
「企業会計」には、「財務会計」(対外報告会計)と「管理会計」(対内報告会計)があり、財務諸表論の対象は、「財務会計」である。
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会計の意義

一般に「会計」といえば、単なる「計算」や経理の意味をもって使用される場合が多いようです。
飲食の場で、「会計」といえば、計算(精算)を意味します。
会計係といえば、飲食代(両方とも飲み食いか)を計算(精算)する係でしょう。

このような飲食の場合に限らず、広く「会計」とは、「経済主体の経済活動を記録、測定、伝達する行為」をいいます。

財務諸表論では、このような広い意味での会計のうち企業を対象にし、その伝達を財務諸表によって行う会計、すなわち「財務会計」が学習の範囲になります。

(まとめ)
「会計」とは、「経済主体の経済活動を記録・測定・伝達する行為」である。
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暮木孝司

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