税理士試験 簿記論 講師日記

税理士試験 簿記論、財務諸表論、簿記検定の問題、学習方法等をアドバイス。

モン吉くんと学ぶ

モン吉くんと学ぶ売価還元法・応用編(2)

(ボックス図の考え方)
講 師:「それぞれの金額の意味はいいかな?」

モン吉:「はい。」

講 師:「このボックス図は、式でいえば期首商品棚卸高+当期商品仕入高−期末商品棚卸高=売上原価だね。」

モン吉:「式でいえばそうですね。」

講 師:「結局は、(期首)最初にこれだけあって、(当期)これだけ増えて、(期末)これだけ残ってたら、(売上原価)これだけなくなった。」

モン吉:「そんなことは考えたことがなかったです。」

講 師:「例えばモン吉くんがチョコボールを1個もっていた。」

モン吉:「おあっ。チョコボールだ。」

講 師:「チョコボールを4個買って、何個か食べたら2個残っていた。モン吉くんが食べたチョコボールは何個?」

モン吉:「えーっと。1個あって4個買ったらあわせて5個。2個残ってるから食べたのは3個です。」

講 師:「そう3個だね。」

モン吉:「そのくらいの計算はボクにもできます。」

講 師:「ボックス図も同じさ。」


    チョコボール
最初の分(1)  食べた分(?→3)

買った分(4)  残った分(2)


講 師:「チョコボールだって、商品だって同じさ。物(商品)の増減を図にしたに過ぎないんだ。」

モン吉:「ボックス図ってそういう意味なんですね。」

講 師:「だから材料とか、仕掛品とか、製品なんかにも同じ考え方が通用するんだ。」

モン吉:「全部、物の動きで考えられるからですね。」

講 師:「そうだね。ボックス図は借方と貸方でバランスがとれていればいいから、商品の数でも成り立つよ。」

モン吉:「チョコボールの例は数ですもんね。」

講 師:「通常のボックス図は全部が原価で成り立っている感じだね。」

モン吉:「全部が売価でもいいんですか?。」

講 師:「そうだよ。いい感じじゃないか。統一がとれていれば売価でもいいんだ。」

モン吉:「でも売価でボックス図を書くことは普通はないですよね。あっ!!!。ここで使うんですね。」

講 師:「そうだよ。モン吉くん。全部が売価ってことを利用すれば、帳簿棚卸売価が算出できるよね。」

モン吉:「えーっと、もう一度お願いします。」

講 師:「さっきのチョコボールの例で考えようか。」

モン吉:「どう考えるんですか?」

講 師:「チョコボールを4個買って、2個食べたら2個残っていた。なくなってしまったチョコボールは何個?」

モン吉:「えーっと。1個あって4個買ったらあわせて5個。2個食べて、2個残ってるからなくなったのは1個です。」

講 師:「それもボックス図で考えられるよね。」


     チョコボール
最初の分(1)  食べた分  (2)
         なくなった分(?→1)
買った分(4)  残った分  (2)


モン吉:「あっ。ホントだ。ボックス図の差引で計算できるんですね。」

講 師:「じゃあ通常のボックス図に戻そう。」


  仕入(商品)
期首商品  売上原価

当期仕入  期末商品


講 師:「ボックス図をみてごらん。ボックス図をまずは全部売価で考えるんだ。」

モン吉:「売上原価のところは売上高になりますね。」

講 師:「そうすると期末部分が差額で出せるだろ。」

モン吉:「そうですね。」

講 師:「期首にこれだけあって(期首)、当期にこれだけ増えた(当期)、売れてなくなった分(売上原価)を全部売価にして差引けば、期末にあるハズの商品(期末)の売価が出るよね?」

モン吉:「ボックス図の期末部分が期末商品帳簿棚卸売価なんですね。」

講 師:「そう、あるハズの期末商品売価さ。」

モン吉:「帳簿棚卸売価(あるハズの売価)と実地棚卸売価(実際にある売価)の差がなくなった分の売価、つまり棚卸減耗売価ですね。」

講 師:「そう、その金額に原価率をかければ棚卸減耗費ってことになるよね。」

モン吉:「いや、これは大変ですね。」

講 師:「でも慣れるとそれほどでもないから。最初にじっくり。」

モン吉:「あとは死ぬほどですね。」

講 師:「まだ、僕の講座で死者は出てないから安心だよ。」

モン吉:「今、ボクはちょっと不安なんですが………。」


モン吉くんと学ぶ売価還元法(3)

モン吉くんと学ぼう!!<目次>

モン吉くんと学ぶ売価還元法・応用編(1)

(モン吉くんピンチ!!)
講 師:「おやおや、なんか元気がないなモン吉くん。どうしたんだい?」

モン吉:「売価還元法はわかったつもりだったんですが………。」

講 師:「むずかしい問題にぶつかったのかな?」

モン吉:「棚卸減耗を出す問題がありました。これはボクにはお手上げです。」

講 師:「そんなこといわないでがんばろうよ。」

モン吉:「でもボクにはむずかしいなあ。」

講 師:「モン吉くんならできるさ。」

モン吉:「ホントですか?」

講 師:「もちろんだよ。」

モン吉:「でも解説を読んでも式がズラズラでているか図が書いてあってとても複雑そうです。」

講 師:「またじっくりやろうじゃないか。」

モン吉:「がんばってみます!!」


(連続意見書方式の特徴)
講 師:「もう問題には出くわしたようだけど連続意見書方式は、棚卸減耗を把握できるんだね。」

モン吉:「これはパスはダメですか?」

講 師:「パスしちゃダメだよ。税理士試験だけじゃなくて、日商一級でも出題が想定されるからね。」

モン吉:「どうして連続意見書方式だと棚卸減耗を把握できるんですか?」

講 師:「仕入勘定でいうときちんと借方側(インプット側)を把握しているから棚卸減耗の売価も把握できるんだ。」

モン吉:「もう何をおっしゃてるのやらチンプンカンプンです。」

講 師:「ゴメン、ゴメン。もう少しゆっくりやろうね。」

モン吉:「ゆっくりお願いします。」

講 師:「連続意見書方式の売価還元法では棚卸減耗が把握できるんだけど、その説明の前にボックス図を確認しておこう。」


(ボックス図)
モン吉:「ボックス図って何ですか?」

講 師:「仕入(商品)勘定を図にしたものだよ。」

モン吉:「仕入勘定を図に?」

講 師:「正確にいうと商品の増減の動きを図にしたものっていった方がいいかな。」

モン吉:「具体的にはどう書くんですか?」

講 師:「次の感じかな。」

   仕入(商品)
期首商品  売上原価

当期仕入  期末商品

モン吉:「こ、これは図ですか?」

講 師:「申し訳ない図が書けないんだ。」

モン吉:「でも、これって商品販売とかのときにテキストによく書いてあります。」

講 師:「それをあてにしよう。」

モン吉:「そんな他人まかせでいいんですか。」

講 師:「大事なのは図そのものじゃないんだ。その図にあらわされてる考え方だからね。」

モン吉:「なんかだまされてる気がするなあ。」


モン吉くんと学ぶ売価還元法・応用編(2)


モン吉くんと学ぼう!!<目次>

モン吉くんと学ぶ売価還元法(完)

(インプット方式)
モン吉:「あっ、あと、借方で考えているというのはどういうことですか?」

講 師:「原価率の算出の式をもう一度よく見てごらん。」

モン吉:「みてますけど………。」

講 師:「分子の期首と当期仕入の部分は、仕入勘定でいうと借方を意味してるよね。」

モン吉:「そうですね。借方の全体と同じになります。」

講 師:「じゃあ分母の売価は?」

モン吉:「えーっと、これがわかりにくいんです。」

講 師:「分子に見合う(対応)する売価じゃないかな?」

モン吉:「期首分は売価、当期分は原価に利益を足してるのと同じだから、分子部分の売価ってことなんですね。」

講 師:「そうなんだ。借方の総額の原価÷売価で原価率を計算している感じなんだよ。」

モン吉:「確かにそうですね。」

講 師:「だからこの売価還元法のことをインプット方式なんて呼ぶこともあるんだ。」

モン吉:「インプット方式?」

講 師:「企業からみると商品が入ってくる側(借方)で率を考えているからインプット方式さ。」

モン吉:「借方方式って感じなんですね。」

講 師:「借方方式って呼ぶ人はいないけど、まさにそんな感じだね。」

モン吉:「借方の原価÷売価なんだ。」

講 師:「そう借方の原価÷売価なんだよ。」

モン吉:「なんか力が入ってますね。でも、そう考えて値入や値上・値下の意味がわかれば確かに式を覚える必要はないかもしれませんね。」

講 師:「そうなんだ。そう思ってくれるとここまでやった甲斐があるよ。」

モン吉:「まあ、でも忘れますけど。」

講 師:「いや、いいんだ。一度でいいからじっくり取り組むのとそうじゃないのは大きく違うと思うよ。」

モン吉:「そんなもんかなあ。」


(連続意見書方式)
モン吉:「たまに連続意見書方式って書いてあるときもありますけど借方方式と同じなんですか?」

講 師:「そう連続意見書っていう書き物にのってるんで連続意見書方式とも呼ばれたりするね。」

モン吉:「でも方式っていうくらいなんで、他にも売価還元法があるってことなんですか?」

講 師:「そうなんだ。他にもあるんだよ。でもそれはまたいずれ。」 


(エピローグ)
モン吉:「ずいぶんあちこちいろんなことをやりましたけど、新たな発見がありました。」

講 師:「ちょっと寄り道をしてみるのもいいよね。」

モン吉:「どうもありがとうございました。それじゃあ、僕はコンビニでエクアドル産のバナナを買って帰ります!!」

講 師:「エクアドル産?」

モン吉:「エクアドル産のバナナはおいしいんですよ。」

講 師:「バナナの産地を気にしたことはなかったな。」

モン吉:「エクアドル産のバナナは甘くてとってもおいしいんです!!」 

講 師:「バナナもいいけど復習も忘れないでね。」

モン吉:「はい!!」


モン吉くんと学ぶ売価還元法(完)


モン吉くんと学ぼう!!<目次>

モン吉くんと学ぶ売価還元法(7)

(総平均法)
講 師:「それじゃ総平均法は?」

モン吉:「総平均法もですか?あっ、いや独り言です。」

講 師:「総平均法の原価率は出たかな?」

モン吉:「えーっと、総平均法はどうやるんだったかな。」

講 師:「まだかな?」

モン吉:「えっと、最初(期首)の金額と当期の金額を足して(150円)、数量も全部足して(2個)。割って75円っと。これを期末の数量1個にかけて期末も75円。期末は75円です。」

講 師:「原価率は?」

モン吉:「はいはい。面倒じゃないですよっと。売上原価が期首70円+当期80円−期末75円で75円っと。原価75円÷売価100円=原価率は75%です。」

講 師:「この原価率は売価還元法の原価率と同じだよね。」

モン吉:「あっ、そうですね。」

講 師:「もちろん売価還元法はいくつもの商品を対象にしているから状況は違うけど基本的な考え方は総平均法と似ているね。」

モン吉:「同じなんですか?」

講 師:「普通の総平均法は数量を考えるけど、売価還元法は金額だけで考えてるんだ。」

モン吉:「金額だけの総平均法なんですね。」

講 師:「そうだね。だからこの売価還元法は、売価還元平均原価法とも呼ばれるんだ。」

モン吉:「売価還元平均原価法ですか。長い名前ですね。」

講 師:「売価還元平均原価法が総平均原価を算出しているっていう意味はわかったかな?」

モン吉:「小さな金額で全部追いかけてはじめてわかりました。」


(売価還元法の出題のされ方)
講 師:「売価還元法の問題のときは通常は数量は出てこないよね。」

モン吉:「そういえばそうですね。」

講 師:「売価還元法はもともと商品の種類が多くて個々に原価を追えない(追うのが面倒な)場合に採用されているんだ。」

モン吉:「商品有高帳もつけてないんですね。」

講 師:「そうだね。この例では期首が1個で当期が1個と単純にしていろんな方法で算出してもらったって訳さ。」

モン吉:「それでいろんな方法を試したんですね。」

講 師:「売価還元法は数量を追えない、商品有高帳もつけない場合に適用されるから出題でも数量のない問題が多いんだけど。」

モン吉:「でも数量が出ている問題もあるんですか?」

講 師:「そうなんだ。売価還元法の考え方を他の方法と比べて聞くんであれば一つの資料から両方を計算させることもあるよね。」

モン吉:「えっ。そういう普段と違う資料の出方が混乱するんです。」

講 師:「平成18年の税理士試験の第二問 問2がそうだね。平成20年の税理士試験簿記論を受験予定の人は検討の価値がある問題だよ。」



モン吉くんと学ぶ売価還元法(8)

モン吉くんと学ぼう!!<目次>

モン吉くんと学ぶ売価還元法(6)

(売価還元法の考え方)
講 師:「問題はどうだったかな?」

モン吉:「問題は解けました。式にあてはめればイチコロです。」

講 師:「強気だなあ。でも、問題を解いた後に少し式の意味を考えてみるといいね。」

モン吉:「原価率の算出でいったい何をやっているのかはピンときません。」

講 師:「問題は式を理解して数字をあてはめればできるけど、少し考えておこうか。」

モン吉:「そこまでの必要はあるんですか?」

講 師:「そこまで考えてなくてもとける出題が多いかな。」

モン吉:「それじゃあ軽めにお願いします。」

講 師:「まずは単純な問題をいつでもとけるようにする。その後、余裕があったら考えてみるという感じでいいかな。」

モン吉:「どう考えればいいんですか?。」

講 師:「売価還元法は、当期の総平均原価を考えて原価率を出しているのさ。」

モン吉:「???」

講 師:「ちょっとわかりにくいかな。原価率は比率だから分母と分子の対応を借方でとっているのさ。」

モン吉:「なんだかちっともわかりません。」

講 師:「ちょっと具体的な例で考えてみよう。」

期首1個 原価 70円
期首1個 売価100円
当期1個 原価 80円
原始値入額   20円
売上1個 売価100円
期末1個 売価100円

講 師:「この条件で売価還元法の原価率はいくつかな?」

モン吉:「えーっと。分子と分母を出して、分子÷分母っと。」

分子:期首原価70円+当期仕入80円=150円
分母:期首売価100円 当期仕入80円+原始値入額20円=200円
分子÷分母=75%

モン吉:「75%です!!」

講 師:「そうだね。」


(先入先出法)
講 師:「この例では先入先出法で期末商品を出せるけどいくらかな?」

モン吉:「えーっと期首の商品が1個70円で当期に仕入れた商品は1個80円。先に仕入れた70円が出て行くので期末は80円です。」

講 師:「原価率は?」

モン吉:「原価率も出すんですか?意外に面倒なんだよな。」

講 師:「何かいった?」

モン吉:「なんでもないでーす。えーっと。売上原価が期首70円+当期80円−期末80円で70円っと。原価70円÷売価100円=原価率は70%です。」


(後入先出法)
講 師:「じゃあ後入先出法だと期末は?」

モン吉:「後入先出法はっと。後に仕入れたものが先に出て行く。期末は先に仕入れたものが残るっと。期末が70円です。」

講 師:「原価率は?」

モン吉:「えーっと、売上原価が期首70円+当期80円−期末70円で80円っと。原価80円÷売価100円=原価率は80%です。」

 
モン吉くんと学ぶ売価還元法(7)


モン吉くんと学ぼう!!<目次>

モン吉くんと学ぶ売価還元法(5)

(値上と値下)
講 師:「原価率の式の値上や値下は、実際のスーパーなんかの売値のつけ方を考えた方がいいね。」

モン吉:「商品についてる売値ラベルのことですね。」

講 師:「そう。売値の記入されたラベル(札)を値札(ねふだ)っていうだろ。値札の値段のつけ方だよ。」

モン吉:「そういえばあの値札って最初に書いてある金額が赤線で直してあったりしますね。」

講 師:「それが値下さ。3,000円が消されて、2,000円になっていたら値下額は1,000円だね。」

モン吉:「あっ。それが値下額なんですね。」

講 師:「そうだね。最初につけた値段で売れなければ下げる。これは物を売る商売としては自然だね。」

モン吉:「でも、値段を訂正して上げているのは見たことがありません。」

講 師:「実際には値上もしているだろうけどそれを値札の上ではしないのさ。」

モン吉:「なんでですか?」

講 師:「そりゃ、買う方は気分が悪いじゃないか。値下して安くなったなら買おうかって気にもなるけど値上じゃね。」

モン吉:「そうですね。コノヤロー上げやがったなって思っちゃいます。」

講 師:「それから値下取消額や値上取消額は、値上や値下のとりやめだね。」

モン吉:「これはわかります。やーめたってことですね。」

講 師:「この場合も値札はつけかえるかな。」


(値引との違い)
モン吉:「売価還元法とは直接関係ないんですが、値引とはどう違うんですか?」

講 師:「値引は実際に販売をした後の話さ。」

モン吉:「販売をした後?」

講 師:「そうだよ。値上や値下は値札の訂正だから販売の前のこと。」

モン吉:「値引は実際に商品を販売した後のことなんですね。」

講 師:「そうだよ。整理できたかな。」

モン吉:「少し整理できました。」

講 師:「値入、値上、値下、そして値引。全部、値がつくけどきちんと区別しておかないとね。」

モン吉:「きちんと区別して忘れないようにします!!」

講 師:「それじゃあ、最初は式にあてはめる感じでもいいから1問といてみようか。」

モン吉:「はい。」


ここで売価還元法の問題を1題どうぞ。

基礎編 問題34


モン吉くんと学ぶ売価還元法(6)


モン吉くんと学ぼう!!<目次>

モン吉くんと学ぶ売価還元法(4)

(原価率の式への対応)
モン吉:「原価率の式は覚えないとダメですか?」

講 師:「覚えるというより内容を考えて問題は解けるのがベストかな。」

モン吉:「でも覚えてないと問題は解けないです。」

講 師:「そんなことないさ。僕は覚えてないけど問題は解けるし、式もいえるよ。」

モン吉:「覚えてない。でも、式はいえる。本当かなあ?」

講 師:「別にウソじゃないさ。最初にじっくりやるんだよ。その方が少し時間がかかるけど忘れにくいんだ。」

モン吉:「僕はすぐに忘れてしまうし、実際の問題で資料の並び順が変ったりすると混乱するんです。」

講 師:「じゃあそんなことが少しでも少なくなるように内容をきちんと整理しておこう。」

モン吉:「でも、簿記論の全部の項目にそんなに時間をかけてたらいつまでたっても範囲がおわらないんじゃないですか?」

講 師:「何も例えば現金の範囲にそんなに時間をかける必要はないさ。大事な項目だけでいいんだよ。」

モン吉:「大事な項目とそうじゃない項目がわからないです。」

講 師:「それは確かにいえるね。その辺はテキストの書き方や僕のいうことを参考にしたり、実際に問題を解いて確かめて欲しいな。」


(分子)
講 師:「まず、分子からかたずけようか。」

モン吉:「分子は大丈夫……だと思います。」

講 師:「そうだね。これは仕入勘定を通常に書いた場合の借方って考えればいいかな。」

モン吉:「借方が期首商品棚卸高と当期商品仕入高ですね。」

講 師:「そうなるね。」

モン吉:「分子はどうにかなりそうです。」


(分母)
講 師:「問題は分母だね。」

モン吉:「値入とか、値上とか、値下とか出てきてわからないです。」

講 師:「一つずつかたずけていこうか。」

モン吉:「値入っていうのはどういう意味ですか?」

講 師:「値入は、原価に「値」段を足す(「入」れる)という意味だろうね。」

モン吉:「利益のことですね。」

講 師:「そうだね。原価からみると入れている(足している)感じになるんで値入っていうんだろうね。」

モン吉:「値入じゃなくて、利益っていってくれた方がありがたいです。」

講 師:「そうだね。ただ、企業の側からすると仕入れた商品を売る訳だから先にくるのは原価だよね。」

モン吉:「順序からいえばそうですね。」

講 師:「その原価に利益をのせる感じなんで値入ってことばもそれほど不自然とはいえないと思うよ。」

モン吉:「原始値入額はどういう意味ですか?」

講 師:「最初の値入額ってことだよ。その後に変更もあるから原始なんだろうね。」

モン吉:「当期仕入商品原価に原始値入額を足すってことは、最初につけられる売価ってことなんですね。」

講 師:「そうだよ。当初の売価のことさ。あと、原始値入額のところが率で出ている場合もあるね。」

モン吉:「その時はどうするんですか?」

講 師:「当期仕入商品原価が100円、原始値入率が40%だとすると値入額は100円×40%で40円。」

モン吉:「ただかけるだけでいいんですね。」

講 師:「利益率(利益÷売価)ではなくて、付加率(利益÷原価)になっている点に注意しようね。」


モン吉くんと学ぶ売価還元法(5)


モン吉くんと学ぼう!!<目次>

モン吉くんと学ぶ売価還元法(3)

(売価還元法の採用理由)
モン吉:「売価還元法ってなんか面倒くさそうですが何で採用されるんですか?」

講 師:「問題では、期末商品棚卸高は出てたりするけど、実際は、売れ残りの商品(期末商品)の原価を全部調べる方が面倒なんだよ。」

モン吉:「そうなんですか。」

講 師:「商品の種類が少ないといいけど、多いと調べるだけでも大変さ。」

モン吉:「そういわれればそうですね。」

講 師:「売価還元法は、商品の種類が多くて、原価で棚卸をするのが大変なデパートやコンビニなんかで利用されているようだよ。」

モン吉:「僕もよくコンビニでバナナを買います!!」

講 師:「コンビニにもバナナ以外にたくさんの種類の商品が置いてあるよね。」

モン吉:「チョコボールもあります!!」

講 師:「たくさんの商品があると問題では簡単に書いてある期末商品棚卸高も実際に出すのは大変なんだよ。」

モン吉:「でも売価還元法を使うとしても売価の棚卸はするんですよね?それじゃあ一緒じゃないですか。」

講 師:「原価での棚卸に比べて売価の棚卸はちょっとラクなんだ。」

モン吉:「どうしてですか?」

講 師:「だって商品に売価が書いてあるじゃないか。」

モン吉:「あっそうか。実際の売価で棚卸をすればいい訳ですね。」

講 師:「商品についた値札を見ればいいからね。」


(売価還元法の原価率)
講 師:「それじゃあ原価率の算出をみていこうか。」

モン吉:「売価還元法の式は長いので覚えられません!!」

講 師:「確かにビックリするくらい長いね。」


分子 → 期首商品原価+当期仕入商品原価

分母 → 期首商品売価+当期仕入商品原価+原始値入額+(値上額−値上取消額)−(値下額−値下取消額)


講 師:「まず分子÷分母で原価率を出す。期末売価×原価率=期末商品原価になるね。」


モン吉くんと学ぶ売価還元法(4)


モン吉くんと学ぼう!!<目次>

モン吉くんと学ぶ売価還元法(2)

(当期商品仕入高)
講 師:「期首商品棚卸高は前期末に算出済だね。」

モン吉:「当期商品仕入高は当期の純仕入高です。」

講 師:「じゃあ純仕入高は?」

モン吉:「えーっと、当期商品仕入高から当期仕入値引高、返品高、割戻高を引きます。」

講 師:「割引は引かないの?」

モン吉:「えーっと、仕入割引は営業外収益なので引きません。」

講 師:「早期に買掛金を払ったから仕入から控除するんじゃなくて財務収益って考えるんだね。」

モン吉:「利息ってことですね。」

講 師:「そうだね。やるじゃないかモン吉くん。」

モン吉:「えっへん。」


(期末商品棚卸高)
講 師:「あと期末商品棚卸高は通常はどうやってだすの?」

モン吉:「問題に書いてあります!!」

講 師:「モン吉くんらしいな。」

モン吉:「でもホントに問題に書いてあるじゃないですか。」

講 師:「それじゃあ質問を変えようか。その金額を企業はどうやって出しているんだろう?」

モン吉:「えーっと。どうしてるんですか?」

講 師:「通常は商品有高帳をつけてるからその残高が期末商品帳簿棚卸高だよ。」

モン吉:「あっ。そういわれればそうですね。問題によく帳簿棚卸高って書いてありますけど、この帳簿は商品有高帳ですね。」

講 師:「そうだね。商品有高帳の記入は原価(買値)だから、期末商品帳簿棚卸高も原価だね。」


(売価還元法の考え方)
講 師:「この期末商品を原価ではなくて、売価から考えるのが売価還元法さ。」

モン吉:「売価から考える?」

講 師:「1個の原価が80円の商品を100円で売る。この場合の原価80円と売価100円の比率が原価率だよね。」

モン吉:「えーっと。原価80円÷売価100円で0.8。原価率は80%です。」

講 師:「そうだね。売価還元法では、売価を先に出してこれに原価率をかけて原価を出すんだ。」

モン吉:「えーっと、売価100円×原価率80%=原価80円ですね。なんか面倒くさいなあ。」

講 師:「確かに計算の段階では面倒かもしれないね。」


モン吉くんと学ぶ売価還元法(3)


モン吉くんと学ぼう!!<目次>

モン吉くんと学ぶ売価還元法(1)

「モン吉くんの大冒険」の好評を真に受けて新たなモン吉くんシリーズです。

題してモン吉くんと学ぼう!!(←最近みんな一緒やん)

第一弾として「売価還元法」をとりあげます。

税理士試験や公認会計士試験、そして日商一級で必要な部分を会話形式でお届けします。


(売価還元法をとりあげる訳)
講 師:「それじゃ、売価還元法を一緒に学習しよう。」

モン吉:「何で売価還元法をとりあげるんですか?」

講 師:「ヤフーやグーグルで売価還元法を検索する人が多いんだよ。」

モン吉:「ネットで検索されるってことは、興味があるけどわからないってことですね。」

講 師:「そうだと思うね。「売価還元法」で検索してこのブログを読まれる方も多いね。税理士試験だけじゃなくて日商1級を受験する人も検索しているだろうし。」

モン吉:「検索されやすい語句の解説を充実させて更にアクセスアップを狙おうっていう腹黒い考えですね。」

講 師:「ご名答!!(←否定しろっちゅうの)。」


(売上総利益の算出)
講 師:「せっかく一緒にみるんだからちょっと前提から考えてみよう。」

モン吉:「はい。わかりました。」

講 師:「まずは、通常の売上総利益の計算はいいかな?」

モン吉:「そ、そこからですか。」

講 師:「なんでも基礎が大事。」

モン吉:「わ、わかりました(うっ。余計なこと言うんじゃなかった)。」

講 師:「売上総利益はどう出すんだっけ?」

モン吉:「えーっと。売上高から売上原価を引きます。」

講 師:「それじゃあ。売上原価は?」

モン吉:「えーっと。期首商品棚卸高+当期商品仕入高−期末商品棚卸高です。」

講 師:「売上総利益と売上原価の算出は重要だからしっかりとね。」

モン吉:「はい!!」


モン吉くんと学ぶ売価還元法(2)


モン吉くんと学ぼう!!<目次>

モン吉くんの大冒険(完)

資本維持の本質に迫るモン吉くんの大冒険。

これまでの話はこちらです。

モン吉くんの大冒険(1)
モン吉くんの大冒険(2)
モン吉くんの大冒険(3)
モン吉くんの大冒険(4)
モン吉くんの大冒険(5)
モン吉くんの大冒険(6)
モン吉くんの大冒険(7)
モン吉くんの大冒険(8)
モン吉くんの大冒険(9)


お母さんの言いつけを忠実に守ったモン吉くん。

お母さんはモン吉くんに100円を残しなさいといいました。

そうすればモン吉くんは次のバナナを買い、そのバナナを売った利益で自分のバナナを買える。

すべてがうまくいくハズでした。

しかし、物価の上昇がそれを許してはくれませんでした。

憎むべきは物価の上昇です。

何も知らないモン吉くんは禁断のチョコボールに手を染めてしまったのです。

それは甘い、甘い誘惑でした。

モン吉くんに罪はありません。

憎むべきは貧困です。

そう、貧困が悪いのです(←話、変ってますが)。


モン吉:「おじさん!!チョコボールください!!」

おじさん:「はいよ。チョコボールね。」

モン吉:「うわっ。久しぶりだな。ウッキッキー。」


モン吉くんは、その場でチョコボールをむしゃむしゃと食べ始めました。

何せこのところバナナしか食べてません。

甘い甘いチョコボールがおいしかったのなんのって。


モン吉:「チョコボールはおいしいなあ。ウッキッキー。」

おじさん:「なんだ。なんだ。あーあー。そんなに口の周りをチョコだらけにして。そんなにおいしいかい。」

モン吉:「おいしい。おいしい。ウッキッキー」


モン吉くんは、チョコボールを食べ終えると、家路につこうとしました。

その時です。


おじさん:「おっと。モン吉くん。ちょっと待った。」


おじさんはそういいながら、四角い箱を机の下からとりだしました。


モン吉:「おじさん。それなあーに。」

おじさん:「これはね。福引だよ。今日はチョコボールの日だからね。」


そういいながらおじさんは、モン吉くんの前に箱の中から取っ手の付いた不思議な形をした機械を取り出しました。


おじさん:「さあ、これをグルグル回してごらん。」


中から金色の玉がころがりだしました。

それを見たおじさんは手にもった鐘を高らかに鳴らしました。


カランカラ〜ン。カランカラ〜ン。


おじさん:「すごいねー。1等だ。」

モン吉:「えっ。1等って何。何かくれるの!!」

おじさん:「バナナ1年分!!」


「ウ〜ッ、ウッキッキー」


こうして、福引でバナナ1年分を手に入れたモン吉くんは幸せに1年間くらしましたとさ。

んっ。1年?



今日も野山にモン吉くんの元気な声がこだまします。


ウキッ!?

ウッキッキー!!


おしまい。



で、い、1年ってどういうことよ。

だから1年ってどうよ。

1年って何?


モン吉くんの大冒険(完)

モン吉くんの大冒険(9)

資本維持の本質に迫るモン吉くんの大冒険。

これまでのお話はこちらです。

モン吉くんの大冒険(1)
モン吉くんの大冒険(2)
モン吉くんの大冒険(3)
モン吉くんの大冒険(4)
モン吉くんの大冒険(5)
モン吉くんの大冒険(6)
モン吉くんの大冒険(7)
モン吉くんの大冒険(8)


モン吉くんの例での損益にかかわる仕訳は次のとおりです。


(2)仕入:(借)仕  入100 (貸)現  金100

(物価が倍)

(3)売上:(借)現  金400 (貸)売  上400


この仕訳をもとに行われる損益計算は、次のとおりです。


売上400円−売上原価100円=利益300円


現行の制度上は、このような形で損益計算が行われています。

しかし、この損益計算は、物価変動を加味すると合理的ではありません。

売上400円が物価上昇後のものであるのに対して、売上原価が物価上昇前のものだからです。


この300円の利益の中には、次の2つの異なる利益が混ざっています。


(1)バナナを持っているだけでもうかった利益(値上益)

(2)バナナを売ることでもうかった利益(本当の売却益)


(1)ただの値上益100円

バナナの保有による利益はモン吉くんの努力とは関係のないただの値上益です。

100円で買ったバナナの買値が持っているだけで200円に上がった。

その100円の値上益です。

会計学上は、保有損益などと呼ばれます。


(2)本当の売却益200円

今、バナナを新たに仕入れるとすれば、200円かかります。

実際に売却した400円からこの200円を引いた利益が物価変動も加味した本当の売却益といってよいでしょう。

会計学上は、操業損益などと呼ばれます。

物価変動を加味して損益計算を行うには、売上と売上原価のバランスをとる必要があるのです。


売上400円−物価上昇後の売上原価200円=200円


単なる保有による値上益と本当の売却益をきちっと区別する。

本当の売却益200円こそがモン吉くんがバナナを買って食べることできるもうけ(利益)なのです。

そのもうけを超えてチョコボールを買ってしまったモン吉くんは、…………。


あっちゃー、あんな所でチョコボール食べてるよ。

あんなに口の周りを汚して。

ニコニコしながら。

って、食べちゃったのね。

食べちゃったのね。



モン吉くんの大冒険(10)

モン吉くんの大冒険(8)

資本維持の本質に迫るモン吉くんの大冒険。

これまでのお話はこちらです。

モン吉くんの大冒険(1)
モン吉くんの大冒険(2)
モン吉くんの大冒険(3)
モン吉くんの大冒険(4)
モン吉くんの大冒険(5)
モン吉くんの大冒険(6)
モン吉くんの大冒険(7)


資本維持の考え方は、企業維持(企業活動の維持)を意味しています。

単純には、出資者から受入れた額面金額を「もとで」として維持する。

このような意味での資本維持が「名目資本維持」です。

現行の制度で考慮されているのは、この名目資本維持です。

しかし、モン吉くんの例でもわかるように、名目資本維持は、物価上昇に無力です。

物価の変動を加味した本当の資本維持は、実体資本維持や実質資本維持などと呼ばれます。


モン吉くんの例では、維持すべき資本は物価の上昇で上がっていたのです。

維持すべき資本は、物価が倍に上昇し、100円から200円にあがっていました。

モン吉くんはそのことに気づかなかったのです。

モン吉くんの例のように物価が急激に上がることはマレでしょう。

しかし、ジワジワと物価があがっていくケースで、知らず知らずに企業活動の維持ができない。

そんなことはあるかもしれません。

モン吉君の例では、名目資本は100円です。

これに対して本当の意味での維持すべき資本は、200円だったのです。

このように資本維持は、企業活動において維持すべき資本の量(お金の量)の話であり、少なくとも会計の理論的には、物価変動も加味すべきことがわかります。




もっとも現実の物価変動に対する会計の対応は、「もとで」の維持というより、むしろ「もうけ」の計算、損益計算の適正化に注がれたといった方がよいかもしれません。

維持すべき資本を算出するというより、損益計算をきっちりと行う。

適正な損益計算を行った残りを維持する。

企業会計の大きな目的が損益計算にあると考えるとこちらの方が自然かもしれません。

いま一度、モン吉くんの例で、「もうけ」の計算、「損益計算」がどのように行われたのかを考えてみましょう。


(2)仕入:(借)仕  入100 (貸)現  金100

(物価が倍)

(3)売上:(借)現  金400 (貸)売  上400


損益計算は、物価上昇後の売上400円−物価上昇前の仕入(売上原価)100円=300円で計算されます。

損益:売上400円−売上原価100円=300円


この損益計算は、合理的ではありません。

なぜなら、引算が合理的ではないからです。

対応関係がきちんととれていないのです。

「売上」400円が物価上昇後の金額なのに対して、「売上原価」100円が物価上昇前の金額です。

では、どうすれば、損益計算の合理性は保てるのでしょうか。

「もうけ」はいかに計算されるべきなのでしょうか。


モン吉くんの大冒険(9)

モン吉くんの大冒険(7)

資本維持の真髄が見える(←どこ?)モン吉くんの大冒険。

これまでのお話はこちらです。

モン吉くんの大冒険(1)
モン吉くんの大冒険(2)
モン吉くんの大冒険(3)
モン吉くんの大冒険(4)
モン吉くんの大冒険(5)
モン吉くんの大冒険(6)


ここまでの話では、企業を個人(←おサルさんでしょ)におきかえてきました。

資本維持は、生命の維持(モン吉くんピーンチ!)におきかえています。

これを個人ではなく、株式会社企業で考えておきましょう。



資本維持という考え方の元(基礎)には、企業維持とでも呼ぶべき考え方があります。

企業維持というよりも、企業活動の維持といった方がよいのかもしれません。

企業は、出資者(株主)からゆだねられた資金を元に活動を行います。

その狙いは、儲けることです。

事業をして、儲けること(ゆだねられた資金を増やすこと)が狙いです。

ざっくりとは、その株主からゆだねられた資金が「もとで」としての「資本」です。

そのもとでを使って増やした資金が「もうけ」としての「利益」です。


この「資本」と「利益」を混同しない。

それは、モン吉くんの例でも株式会社企業の例でも大きく変りません。

モン吉くんがお母さんからもらった100円でバナナを買って、すぐに食べてしまえば、次のバナナを買うことはできません。

今日はよいですが、明日以降が困ってしまいます。

モン吉くんの例ほど明確ではありませんが、企業の場合にも同様のことがいえます。

当初に調達した資金を株主に全額分配しては、企業活動を維持することはできません。

もちろん調達した資金の全額を分配すると仮定するのはやや不自然でしょう。

しかし、もとで部分を分配していけば、企業の活動の規模は小さくなります。

それを繰返せばやがては活動そのものができなくなってしまうかもしれません。

企業維持というよりも、企業活動の維持や企業活動の規模の維持というべきでしょうか。

儲けようとしている企業が小さくなっては意味がありません。

最悪でも前と同程度の企業規模を維持していなければならない。

現につぶれてしまうような企業はあるでしょう。

しかし、このような前提(規模の維持をすべき)をおくことはそれほど不合理ではありません。


資本維持の当初の考え方には、このような企業維持(企業活動の維持)の意味があったようです。

ここでの維持すべき資本は、もっとも単純には、受入れたお金の額といえそうです。

100円の資本を調達したならその100円です。

ただのお金の額面です。

集めたお札に書いてあるそのままの金額(額面)です。

このような意味での資本を名目資本といいます。

名目資本の維持を図る考え方が名目資本維持です。

しかし、モン吉くんの例でもわかるように、名目資本維持は、物価の変動に対して無力です。

物価の変動をも視野に入れた場合に資本維持の様子は変ります。

次回以降で物価の変動を加味して少し考えてみましょう(少しですってば。やだなあ。す・こ・し。)。



モン吉くんの大冒険(8)

モン吉くんの大冒険(6)

資本維持の本質に迫るモン吉くんの大冒険(←まあ、迫れんでしょ←ウッキッキー=失礼な)。

これまでのお話はこちらです。

モン吉くんの大冒険(1)
モン吉くんの大冒険(2)
モン吉くんの大冒険(3)
モン吉くんの大冒険(4)
モン吉くんの大冒険(5)


モン吉くんの行動を仕訳で考えてみます。

物価が倍になったことを考慮してみましょう。

(2)市場で100円でバナナを買う。
(ここで物価が倍)
(3)スーパーで400円でバナナを売る。
(4)一休み
(5)自分のバナナ(200円)とチョコボール(100円)を買って食べる。


(2)仕入:(借)仕  入100 (貸)現  金100

(ここで物価が倍)

(3)売上:(借)現  金400 (貸)売  上400

(4)決算:(借)損  益100 (貸)仕  入100
      (借)売  上400 (貸)損  益400
      (借)損  益300 (貸)資 本 金300

(5)引出:(借)資 本 金300 (貸)現  金300


モン吉くんは、チョコボールを買うべきではありませんでした。

しかし、その理由は、上記の仕訳処理からは必ずしも判然としません。

モン吉くんは、なぜチョコボールを買うべきではなかったのでしょうか。

それはチョコボールを買って、お金を使うことにより、次のバナナが買えないからです。

でも当初の資本(お母さんからもらった100円)はきちんと残して(維持して)います。

それなのにうまくいかないのは何故でしょうか。

それは維持すべき(使わない必要があった)金額が単純な額面100円ではなくなってしまったからです。

維持すべきだったのは、前と同様の活動を繰返すことができる資本でなければならなかったのです。


ただの額面だけの資本維持は、名目資本維持と呼ばれます。

お金のただの表面の金額(名目)だけに注目したのが名目資本維持です。

しかし、名目資本維持は、モン吉くんの例をみてもわかるように物価変動に対して無力です。

名目的な金額(100円)を維持する(使わない)だけでは物価変動時に本当の意味での資本の維持を図ることはできません。

この場合の本当の意味での資本維持を名目資本維持に対して、実体資本維持や実質資本維持といいます。



モン吉くんの大冒険(7)

モン吉くんの大冒険(5)

資本維持の本質に迫るモン吉くんの大冒険。

これまでのお話はこちらです。

モン吉くんの大冒険(1)
モン吉くんの大冒険(2)
モン吉くんの大冒険(3)
モン吉くんの大冒険(4)



とうとうモン吉くんは、禁断のチョコボールに手を染めてしまったのでした。

このままではモン吉くんは、次の自分のバナナを買って食べることができません。

でも、モン吉くんは、お母さんの言いつけは守っているのです。

では、いったい何がいけなかったのでしょうか。



モン吉くんのお話の結末は後ほどにして、ここでこれまでの話を資本維持の観点から整理しておきましょう。

バナナの値段は次のとおりです。

(物価上昇前)
買値→100円
売値→200円

(物価上昇後)
買値→200円
売値→400円


モン吉くんのとった行動は次のとおりです。

(1)お母さんから100円もらう。
(2)市場で100円でバナナを買う。
(3)スーパーで200円でバナナを売る。
(4)一休み
(5)自分のバナナを買って食べる。

以下(2)から(5)の繰り返しです。


これを仕訳で考えてみましょう。


(1)最初:(借)現  金100 (貸)資 本 金100

(2)仕入:(借)仕  入100 (貸)現  金100

(3)売上:(借)現  金200 (貸)売  上200

(4)決算:(借)損  益100 (貸)仕  入100
      (借)売  上200 (貸)損  益200
      (借)損  益100 (貸)資 本 金100

(5)引出:(借)資 本 金100 (貸)現  金100

以下、(2)から(5)の繰り返しです。

(4)は、決算振替仕訳です。

上の2段が収益と費用を損益勘定に振替えるための損益振替です。

一番下が損益勘定の差額(当期純利益)を資本勘定(資本金)に振替える資本振替です。

(5)が引出しの仕訳です。

個人企業では、引出金勘定を使うこともありますが、ここでは資本金勘定を用いました。


長くなりそうなので、次回へ。


モン吉くんの大冒険(6)

モン吉くんの大冒険(4)

モン吉くんの大冒険。

これまでのお話はこちらです。

モン吉くんの大冒険(1)
モン吉くんの大冒険(2)
モン吉くんの大冒険(3)



モン吉くんは元気なおサルさんです。

いつもニコニコ、ウッキッキー。

誰からも愛される憎めないおサルさんです。


モン吉くんはつい最近、お母さんを亡くしました。

亡くなる直前までお母さんはモン吉くんのことが心配でしょうがありませんでした。

そこでモン吉くんにお金の使い方(残し方)を教え、息を引取ったのでした。

100円の「もとで」でバナナを買い。

200円で売る。

「もうけ」た100円だけは自由に使ってよい。

でも、元々あった100円に手をつけない。

そうすれば、モン吉くんは、ずーっとバナナを食べ続けられるハズでした。



しかし、ある時を境に、物価がすべて倍になったのです。

バナナを仕入れるのも200円。

バナナを売るのも400円。

モン吉くんがバナナを仕入れた後に物価が倍になりました。

100円で仕入れたバナナが400円で売れたのです。

どうするモン吉くん。


「お母さんは、100円を残せっていってたな。

ということは、300円使えるのか。」


モン吉くんは、まずは今日たべるバナナを買いました。

バナナは1本200円なので手元には200円が残ります。


「あれっ。今日はいつもより100円多いな」


ふとバナナ売場のヨコを見るとモン吉くんが大好きだったチョコボールが売られていました。


・チョコボール1箱100円


「ウッキッキー」。


さあ、どうするモン吉くん。

モン吉くん。

わかるでしょ。

ダメだよ。

よく考えてね。



「チョコボールください!!」


あちゃー。

やっちゃったよ。



モン吉くんの大冒険(5)

モン吉くんの大冒険(3)

これまでのお話はこちらです。

モン吉くんの大冒険(1)
モン吉くんの大冒険(2)


モン吉くんは、100円でバナナを仕入れて、200円で売ります。

そのもうけで自分の食べるバナナを買う。

残りの100円でまたバナナを仕入れて、あとはこれを繰返します。

スーパーは遠いので1日に1回しか行けません。

最初にモン吉くんが用意していた100円が「もとで」としての資本です。

バナナを仕入れて売るという活動で得た100円が「もうけ」としての利益です。

この「もとで」としての資本と「もうけ」としての利益をきっちり区別する。

資本と利益の区別の原則の要求です。



もとで部分は使ってしまわない(その分までバナナを買って食べない)。

もうけ部分だけで自分の食べるバナナを買う。

これを繰返していれば、モン吉くんは毎日、野山を駆け巡ることができます。

そう、モン吉くんは、木から木へ、

枝から枝へとウッキッキー。



たのしいときは、ウッキッキー。

うれしいときは、ウッキッキー。

つらくたって、ウッキッキー。

かなしくたって、ウッキッキー。


ウッキー、ウッキー、ウッキッキー


しかし、平穏な日々は長くは続きませんでした。

事件は起きたのです。

ある日の事でした。

モン吉くんがスーパーにいってバナナを売ろうとすると400円で売れるではないですか。

な、なんとモン君がスーパーへの道を急ぐ間に、物価が2倍になっていたのです。


買値100→200

売値200→400


物価が倍です。

これにはモン吉くんもビックリしました。

普段とは違う状況に戸惑いました。


「でも、いつもより多いからいいか。」


おおおっ。

いいのか、モン吉くん。

本当にいいのか、モン吉くん。

よーく考えるんだよ。

でも、なんかイヤな予感がします。

とてもイヤな予感がします。

どうするモン吉くん。

いや、どうなるモン吉くん。

モン吉くんの運命やいかに(ドンドン←タイコね)。



モン吉くんの大冒険(4)

モン吉くんの大冒険(2)

「モン吉くんの大冒険」つづきです(←って、タイトル変ってるし)。

モン吉くんに起った悲しい出来事とは一体何でしょうか。


以前のお話は、こちらです。

モン吉くんの大冒険(1)



モン吉くんは以前にも悲しい思いをしています。

それは幼い頃にお父さんを亡くし、そしてつい先日、たった一人の肉親であるお母さんを見送ったのです。

話は、さかのぼります。



母:「モン吉や、お母さんはもうダメかもしれない。」

モン吉:「お母さーん。」

母:「いいかい、モン吉。よくお聞き。

ここに100円玉が1枚ある。

お前はこの100円で近所の市場へ行ってバナナを買いなさい。

そしてそのバナナをあの山の向こうのスーパーに200円で売るんだよ。

でもスーパーは遠いからね。

1日に1度しか行けないよ。

そのうちの100円でまた市場でバナナを買いなさい。

そしてそのバナナを食べるんだ。

100円玉1枚は必ず残すんだよ。

その100円で買ったバナナをまた売れば、ずーっとバナナを食べられるからね。

いいかい、必ず100円は残して寝るんだよ。

いいかい、モン吉。わかったね。」


そういい残すとお母さんは静かに息を引取りました。


モン吉:「ウッキッキー」


モン吉くんの泣き声は、いつまでも山々にこだまし続けました。


いや、話が戻ってますが。



モン吉くんの大冒険(3)

モン吉くんの大冒険(1)

財務諸表論の出題で問題となる「資本維持」。

この資本維持が、わかりにくいです。

いや、わかりにくいのは「資本」かな。

ダイレクトに実感できるようにするには、ちょっと工夫が必要かもしれません。

まずは、株式会社ではなく、個人企業を想定する。

「資本維持」を「生命(いのち)の維持」に置き換える。




で、モン吉くんの登場です(←誰?)。

モン吉くんは、おサルさんです(やっぱり)。

モン吉くんは、100円もってます。

市場で100円のバナナが買えます。

これをスーパーに売れば200円で売れます。

スーパーは遠いのでモン吉くんは1日に1回しか行けません。

で、モン吉くんは、1日にバナナを1本食べないとお腹がすいて死んでしまいます。

モン吉くんが1日に必要なのは、バナナ1本(買値で100円)です。



モン吉くんは毎日、市場でバナナを仕入れます。

(借)仕入100 (貸)現金100

それをスーパーで売ります。

(借)現金200 (貸)売上200

利益は100円です。

売上200−仕入(売上原価)100=100(売上総利益)


当初持っていたモン吉くんのお金は100円です。

で、その100円を使って100円の利益をあげました。

このもうかった100円で市場でバナナを買って食べれば、モン吉くんはウッキッキーです。

毎日、モン吉くんは、市場でバナナを買ってはそれを売り、もうけでバナナを買って、そのバナナを食べて生活していました。



最初にもっていた100円(もとでとしての資本)を使ってしまわない。

もうけた100円(もうけとしての利益)でバナナを買ってたべる。

それを続けていれば、モン吉くんは幸せに暮らせたハズなのです。

しかし、事件は起りました。

それは悲しい悲しい出来事でした。



モン吉くんの大冒険(2)

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