税理士試験 簿記論 講師日記

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デリバティブ・ヘッジ会計

デリバティブ・ヘッジ会計

<テキスト記事一覧>
デリバティブの概要
デリバティブ取引の基本的な会計処理
先物取引
先渡取引
オプション取引
スワップ取引
ヘッジ会計の概要

<軽めの記事一覧>
金利スワップ
金利スワップと為替予約
為替予約の会計処理
独立処理と振当処理
独立処理の考え方としての処理
独立処理
独立処理の仕訳


税理士試験 簿記論 講師日記 全テキスト記事一覧

独立処理による仕訳

為替予約取引は、将来の変動相場による現金収入(未収金)と固定相場による現金支出(未払金)の交換取引です(逆もありますが)。

独立処理では、為替予約を予約相場のみを使って換算します。

1ドルの取引を想定し、予約相場が次のように推移したものとすると実際の仕訳は次のとおりです。

(1)予約(100)仕訳なし

(2)決算(104)(借)為替予約  4 (貸)為替差損益 4

(3)決済(106)(借)為替予約  2 (貸)為替差損益 2
   現金預金  6    為替予約  6

最後の仕訳は、次の方が一般的かもしれません(どちらでもかまいません)。

(3)決済(106)(借)現金預金  6 (貸)為替差損益 2
            為替予約  4


(1)予約時
為替予約は、将来の現金収入(未収金)と現金支出(未払金)の交換取引です。

予約を行った段階では、両者(借方と貸方)は、等価であり、仕訳処理は要しません。

この考え方は、一般的なデリバティブ取引に共通です(差金決済が前提のため)。


(2)決算時
為替相場(予約相場)は100から104へと変動しています。

現金支出(未払金)は固定されており、変るのは借方・未収金です。

実際の仕訳では、為替予約が一般的ですが、この場合の性格は、「為替予約未収金」であり、これを勘定科目とする場合もあります。

為替相場が100→104と動くことで、未払金を固定していると未収金が増えるので「益」が生ずることになります。


(3)決済時
決済時の考え方は、決算時の延長でいけるのではないかと思います。

いったん、為替予約を決算時のように換算しておいて、(為替予約2 為替差損益2)、

そこまでの為替予約6を現金預金で精算するという形です。

この為替予約6は、予約時から決済時までの予約相場の変動分になります。

もう一方の仕訳が一般的です。

借方・現金預金は、予約時から決済時までの予約相場の変動分です。

貸方・為替差損益は、前回の換算時(決算時)から決済時までの予約相場の変動分です。

貸方・為替予約は、決済直前で計上されている為替予約です。

この決済時の仕訳をどちらでもかまいませんので、貸借差額を使わないできれるようにしておく必要があります。


独立処理

為替予約取引は、将来の異なる変動相場と固定相場による現金収支の交換取引です。

変動相場による現金収入(未収金)と固定相場による現金支出(未払金)の交換取引を考えてみましょう。

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独立処理の考え方としての処理

今、輸入取引を例にとって考えてみましょう。

【輸入取引】(借)仕  入×××    (貸)買 掛 金×××(変)

【為替予約】(借)未 収 金×××(変) (貸)未 払 金×××(固)

為替予約は、スワップ(交換)の一種で、将来の現金収入(借方・未収金)と将来の現金支出(貸方・未払金)の交換取引です。

独立処理は、輸入取引で生じた買掛金と為替予約とを別個に換算する方法です。

買掛金は、通常どおり、現物の為替相場で換算することになります。

問題は、為替予約についてです。
取引金額を1ドルとして予約相場が次のように推移したとしましょう。

予約100 → 決算104 → 決済106

貸方・未払金は、固定されています。
変るのは、借方の未収金です。
借方の未収金が、

100→104→106

と動くことになります(次の処理は、実際の処理ではなく、あくまでも考え方です)。

(1)予約(100)
(借)未 収 金100 (貸)未 払 金100

(2)決算(104)
(借)未 収 金  4 (貸)為替差損益 4

(3)決済(106)
(借)未 収 金  2 (貸)為替差損益 2
   現金預金106    未 収 金106
   未 払 金100    現金預金100

独立処理と振当処理

為替予約の会計処理には、独立処理と振当処理があります。
極めて、ざっくりとこの二つの会計処理を考えてみましょう。

(1)輸入取引
(借)仕  入×××    (貸)買 掛 金×××(変)

(2)為替予約
(借)未 収 金×××(変) (貸)未 払 金×××(固)


【独立処理】
独立処理は、外貨建金銭債権債務(買掛金)と為替予約を別々に換算(評価)する方法です。
輸入取引で生ずる外貨建債権債務(買掛金)は、現物の相場でそのまま換算します。
為替予約は、予約時点では、上記のような処理を行う訳ではありません(仕訳なし)。
その後は、先物相場の変動部分で評価されます。

【振当処理】
振当処理は、いわば上記の(1)の貸方・買掛金(変)と(2)の借方・未収金を相殺してしまう考え方です。
もっとも両者は、逆の性格をもっていますが、全く等価という訳ではありませんので、実際には、その差額を処理しなければなりませんが。

為替予約と会計処理方法

ちょっと、外貨建の仕入取引を考えてみましょう。

(1)(借)仕  入1万ドル (貸)買掛金1万ドル(変動)

貸方の買掛金はドル建です。
仕訳上は、仕入時の為替相場で換算されます。
日本円で支払うのであれば、実際の決済段階では、その決済段階の為替相場で換算して決済する必要があります。

為替予約は、「1万ドルの固定相場での受取」と「1万ドルの変動相場との支払」の交換取引です。

(2)(借)未収金1万ドル(変動) (貸)未払金1万ドル(固定)

よくある出題では、(1)の輸入取引に(2)の為替予約をぶつける訳です。
そうすることで、(1)の貸方・買掛金(変動)と(2)の借方・未収金(変動)の影響がちょうど逆に働きますので、為替相場の変動による影響を減殺することができます。

ただ、取引としては、輸入取引と為替予約は別々に存在します。
その別々に存在する取引を別々に考えるのが、独立処理で、一体として考えるのが振当処理でといってよいでしょう。

金利スワップと為替予約

先日、「金利スワップ取引」をご紹介しました。

かなり強引ではありますが、次のような組み合わせを考えました。

【借  入】(借)○○○×××     (貸)未払金×××(変動)

【スワップ】(借)未払金×××(変動) (貸)未払金×××(固定)

これを相殺すると次のような感じになります。

【借  入】(借)○○○×××     (貸)未払金×××(固定)

つまりは、変動金利を固定金利に置き換える効果があることになります。


為替についても同様のことがいえます。

いま、外貨建の仕入取引を考えてみましょう。

【仕  入】(借)仕  入×××     (貸)買掛金×××(変動)

これに変動相場による受取と固定相場による支払の交換取引を重ねてみましょう。

【スワップ】(借)未収金×××(変動) (貸)未払金×××(固定)

未収金(変動)と買掛金(変動)を相殺するとすれば、次の取引が残ります。

【仕  入】(借)仕  入×××     (貸)買掛金×××(固定)

つまりは、変動相場を固定相場に置き換える効果があることになります。

で、このスワップ取引が「為替予約」です。

金利スワップ取引

ちょっと急な感じですが、スワップ取引についてです。

スワップ取引の典型としては、固定金利と変動金利の交換(金利スワップ)があります。
もう少し正確にいうと一定の金額、条件での固定金利と変動金利の交換ということになるでしょうか。

例えば、借入金1千万円を前提に考えてみましょう
固定金利と変動金利の交換を行うということは、無理やり仕訳でいうとすると次のような感じになるでしょうか。

(借)未払金×××(変動金利) (貸)未払金×××(固定金利)

もっとも、実際には、このタイミングでは、借方と貸方の価値は見合っている筈(等価)で、仕訳処理は行いません。

これとは別に借入金(変動金利)を行った際には、変動金利での未払金が生ずると考えられます。

(借)○○○×××       (貸)未払金×××(変動金利)

※実際に未払金が生じる訳ではなく、将来の変動金利での支払を仮にあらわしたものです。

(2)変動金利での借入 + (1)変動金利受取・固定金利支払のスワップ

この二つの取引を行うと、事実上、変動金利での支払いを固定金利に置き換えることができます。

もう一度、仕訳を並べてみましょう。

【借  入】(借)○○○×××       (貸)未払金×××(変動金利)

【スワップ】(借)未払金×××(変動金利) (貸)未払金×××(固定金利)

借方と貸方にそれぞれ未払金(変動金利)があります。
両者は、受取と支払でちょうど逆の関係にありますので、これを相殺すると、次のようになります。

【借  入】(借)現金預金×××      (貸)未払金×××(固定金利)

当初は、変動金利による借入が、固定金利に置き換わっていることがわかります。
つまりは、変動金利による借入がある場合に変動金利受取・固定金利支払のスワップを行うと、変動金利の支払を固定金利に置き換えることができる訳です。


【関連記事】
スワップ取引

ヘッジ会計の概要

【ヘッジ会計の意義】
ヘッジ会計とは、ヘッジ関係(「そん」と「もうけ」が相殺されるような関係)にある対象(例えば売掛金)と手段(例えば為替予約)の損益のバランスをとるための特別な会計処理をいいます。

「ヘッジ対象」とは、「リスクにさらされている項目」をいいます。
「ヘッジ手段」とは、「そのリスクを回避するための項目」をいいます。

売掛金は、実際の入金段階の為替相場で入金されます。
それまでの為替相場の変動の影響を受けます。
1ドルの商品を掛売りすれば、1ドルの売掛金が生じます。
商品を売った段階の為替相場が1ドル=100円でも、その後に1ドル90円になってしまえば、90円の入金しかありません(もちろんその逆の可能性もあります)。
損をするかもしれないリスクにさらされているのがヘッジ対象です。

入金額は為替相場の変動の影響を受けます。
でも自分は100円の入金があればいいよ。
そんな場合には、入金時の相場を事前に確定させてしまえばよいでしょう。
そのためには、たとえば為替予約(決済時の相場の予約)を行えばよいです。
この場合の為替予約がヘッジ手段です。

為替予約は単独でも行うことが可能です。
しかし、上記の場合の為替予約は、外貨建売掛金という不安定な(為替リスクのある)項目とセットで行われています。
このような損益面でのセット(相殺される関係)を狙った項目同志の損益は、同じ会計期間に計上するのが合理的です。

ヘッジ対象とヘッジ手段にかかる損益を同一の会計期間に帰属させることにヘッジ会計の目的があります。


【ヘッジ会計の処理方法】
ヘッジ会計の処理方法には、「繰延ヘッジ会計」と「時価ヘッジ会計」があります。
原則として、繰延ヘッジ会計が適用され、時価ヘッジ会計が適用できる場合は、その適用も認めてられています。

(1)繰延ヘッジ会計(原則)
繰延ヘッジ会計は、損益の先送りです。
原価評価されているヘッジ対象、または将来生じる予定のヘッジ対象に係る損益が認識されるまで、時価評価されているヘッジ手段に係る損益や評価差額を資産・負債として繰延べる会計処理方法が繰延ヘッジ会計です。

(2)時価ヘッジ会計(例外)
時価ヘッジ会計は、損益の前倒しです。
ヘッジ対象とヘッジ手段をともに時価で測定することにより、両者の時価の変動によって生じる損益を発生期間の損益として認識する方法をいいます。


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デリバティブの概要
デリバティブ取引の基本的な会計処理
先物取引
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スワップ取引

【スワップ取引の意義】
スワップ取引は、「将来の現金収支の交換」です。
典型的には、固定金利と変動金利による現金収支の交換があります。
スワップ取引はこのような利子率、通貨、有価証券の相場や指数等によって決定される将来キャッシュ・フローの交換を意味しています。


【基本的会計処理】
(1)契約時
仕訳なし
(2)決算時
評価益………スワップ資産     ××× スワップ利益(評価益)×××
評価損………スワップ損失(評価損)××× スワップ負債     ×××
(3)交換時
利益の場合……現金預金  ××× スワップ資産×××
                        スワップ利益×××
損失の場合……スワップ負債××× 現金預金×××
           スワップ損失

※仕訳の勘定科目には、さほど気にする必要はないと思います。
スワップ取引では、キャッシュ・フローの交換が差金決済で行われます。
そのためスワップ損益については、例えば金利を対象としたスワップ取引(金利取引)の場合、(スワップ)受取利息、支払利息といったその取引に係る勘定が用いられることが多いです。

オプション取引

今回は、デリバティブ取引に一種であるオプション取引についてです。

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先渡取引

デリバティブの一種に先渡取引があります。

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先物取引

今回は、デリバティブ取引の一種である先物取引についてです。

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デリバティブ取引の基本的な会計処理

【デリバティブの会計処理】
(1)原則
デリバティブ取引は、契約締結時に認識し、決算日ごとに時価評価されます。
貸借対照表には、正味の債権債務を時価で資産または負債として計上するとともに、時価の変動による評価差額は当期の損益とされます。

(2)例外(ヘッジ会計)
デリバティブがヘッジ目的として利用される場合には、ヘッジ会計とよばれる特別な会計処理を適用することができます。
ヘッジ会計には、繰延ヘッジ会計と時価ヘッジ会計とがあります。


【時価】
デリバティブは、時価評価され、その評価差額は、その期の損益とされます。
問題は、その時価でしょう。
いわゆる市場(取引所)があるものについては、その市場での価格を、市場がないものについては、合理的に算定することになります。
デリバティブ取引のうち取引所取引が前提であるもの(先物・オプション)については、市場価格(貸借対照表日の取引所の終値)、相対取引が行われるもの(先渡・スワップ)については、合理的に算定された価額が時価とされるのが一般的といってよいでしょう。
簿記論で、時価を計算して算出することはないでしょう。

デリバティブの概要

【デリバティブとは】
デリバティブは、派生金融商品や金融派生商品とも呼ばれます。
本体である元の資産に派生して生ずるのがデリバティブです。
「金融商品(株式等)の取引価格等の数値に依存してその価格が決定する取引」の総称です。

元になる金融資産は、原資産と呼ばれます。
「原資産の指数に依存する金融商品」がデリバティブといってよいでしょう。
金融商品の種類は様々です。
また、その金融商品に関する数値にも様々なものがあります。
むろん、これらに依存するデリバティブ取引も極めて多種多様です。


【デリバティブの分類】
金融商品会計基準によれば、デリバティブは、先物取引(フューチャー)、先渡取引(フォワード)、オプション取引、スワップ取引の4つが示されています。
先物取引及び先渡取引は、いわば「将来における売買の約束」です。
先物取引が取引所取引(取引所を経由する取引)で差金決済(売りと買いの差額だけの決済)を前提とするのが一般的であるのに対して、先渡取引が相対取引(1対1の取引)で、現物の受渡しを前提とするという違いがあります。
オプション取引は、「売買する権利の売買」を意味し、取引所取引です。
スワップ取引は、「将来キャッシュ・フローの交換」で、相対取引です。


【デリバティブ取引の利用目的】
デリバティブ取引の利用目的には、次のようなものがあります。
会計処理を理解する上でも(3)のヘッジ目的が重要です。

(1)投機目的
デリバティブは、単独で取引の対象となり、もちろん価格も形成される訳で、単純な価格変動による利益を得る目的でデリバティブが利用されることがあります。

(2)裁定目的
現物市場と先物市場ないしは先物市場の異なる価格間の差異を利用した利益を獲得を目的して利用される場合があります。

(3)ヘッジ目的
特定の資産・負債の相場変動による影響を減殺し、または、変動が予定されるキャッシュ・フローを固定することによって、その資産・負債の損失の可能性を減殺する目的で利用されることがあります。
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暮木孝司

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