2020年（第70回）税理士試験　財務諸表論（第二問）の傾向と対策について考えてみました。

１　出題内容
２　テーマ性
３　基礎との関係
４　今後の対策

１　出題内容

出題は、資産・負債の定義を軸にした出題でした。

第二問では、一つのテーマのもとに全体が構成されていました。

また、昨年のそれほど一般的とは思えない語句の指摘と企業会計原則の穴埋めが消え、正直、ほっとしました。

単純な規定の穴埋が本試験で出題されるとその対策にあらゆる会計基準の穴埋を想定するという妙なことになってしまいかねないからです。

もう本試験で会計基準の穴埋は出さないで欲しい（いや、話がズレてきた）。



２　テーマ性

出題は、問１と問２の２問構成ですが、資産と負債をテーマにした出題でした。

具体的な資産の定義そのものとこれを前提とした利益観及びオペレーティング・リース取引における資産性が問１で問われています（これについては使用権モデルの話を持ち出すまでもなく、現行制度上でも概念フレームワークにいう資産性はあるというのが私の考え方です。）。

問２では、資産除去債務の会計処理が問われていますが、減価償却方式は、残存価額で考慮する方式であり、耐用年数が尽きる前に帳簿価額（つまり資産）がマイナスになってしまう欠点をはらんでいます。

引当金処理と資産負債の両建処理は、当初の貸借対照表計上額、つまり資産と負債にそれぞれ特徴があり、それをどう意義づけるかが資産負債の両建処理の大きな特徴です。

つまり、昨年とは異なり、問１と問２のいずれもが資産と負債という当初のテーマを軸に展開されています。

また、今回の数字の計算では実際の制度上は適用されない規定（資産除去債務の減価償却方式）での計算も求められているのが特徴的でした。



３　「基礎」との関係

昨年の出題のポイントには、「基礎」という語が５回も登場しました。

それは端的に「基礎」が大事だという意味です。

今回の出題はやや難易度が上がった印象はありますが、そこから大きくズレてはいません。

基礎的といえる範囲での出題といってよいでしょう。



４　今後の傾向と対策

初年度と２年目での傾向の違いは、それを改良した場合が多いです。

今回でいうとテーマ性の付与でしょうか。

とすると２年目の出題により近い出題が３年目は予想されるでしょう。

一つのテーマの下の２問構成（現行で行われない計算を含む）が予想しやすいといえます。

さて、何が出題されるのでしょうか？



（関連動画）
・2020年度（第70回）税理士試験　財務諸表論　解説動画　第二問