2020年（第70回）税理士試験　財務諸表論（第一問）の傾向と対策について考えてみました。

１　解答要求
２　カタカナ７文字の解答を要求した意味
３　過去第66回と第67回との関係
４　次年度以後の対策

１　解答要求

問題の冒頭に「会計利益の概念」に係る以下の各問に答えなさいとあります。

ここでの利益は「包括利益」と「純利益」（当期純利益）です。

この「純利益」というのがミソでしょうか。

組替調整（リサイクリング）を介して包括利益と純利益の概念を問う出題といえるでしょう。



２　カタカナ７文字の解答を要求した意味

冒頭で「概念」を問うと言っているのに対して途中で登場する組替調整をカタカナ７文字で何というかという問は、とてもチグハグに感じられます。

「概念」が大事ならそれを何と呼ぶかの「表記」にそれほど拘る必要はないハズ。

なぜこのような出題になったかは、誤りの是正のような意味があったようにも感じられます。

「組替調整」と「リサイクリング」が同じではなく、異なるという誤った理解の是正ですね。

もっとざっくりは、「リサイクリング」不足ですね。

「リサイクリング」の理解や学習が不十分だからそこを重点的に出題したということです。

また、「リサイクル」という表記もみかけますが、概念フレームワークが改訂版でリサイクルからリサイクリングに表記をわざわざ改めたのですから、単に解答を求めた場合に「リサイクル」という語が出ないようにしたともいえるでしょう。



３　過去66回と67回との関係

本問は、第66回、第67回の第一問をやっていれば、ほぼそのままの知識で80％は解答が可能という近年にはみられない特徴を持っています。

このような出題（５年未満での内容の相似）は、過去２〜３０年を振り返ってもありません。

翌年に隣接（たとえば同一基準の違う部分）から出題されるのは割とあります。

しかし、同一項目の同一内容からの出題がこれほどの短期間で税理士試験で出題されるのは、はじめてといってもいい程に珍しいですね。

おおむねその分野をもう一度出すときには、基本的なところはともかく、過半の項目を入れ替えます。

しかし、出題の仕方は変えたものの内容的にはもろかぶりです。

もちろん、第66回や第67回にそういう出題がなされたことを知らなかったということはあり得ません。

第66回は包括利益を中心とした出題、第67回ではリサイクリングが問われており、その両方を「学習していれば」８割はとれる問題でした。

以前の問題の出来もきっとよくはなかったのでしょう。

もっとも66回と67では、包括利益基準の21項と２2項は出題されていませんでした。

今回は、いずれもここが記述ではなく、「択一」での出題になっています。

第66回と第67回の出題を中心にリサイクリングも含めた学習をしていれば、それをなぞるだけで、かなりの高得点がとれてしまう、まったく標準的な出題だったといえます。

直近３〜４年に出題があった「問題」を解いていればできます。

この意味は最近にでた項目でもやっておけってことですね。

また、包括利益（特にリサイクリング）についての告知に近い意味もあると推察します。



４　次年度以後の対策

これまでの傾向から４〜５年以内に25点に近い出題があった項目は出題されていません。

そのため包括利益が事前予想項目から欠落していたり、学習項目からも欠落していることは予想されますが、それで得点は望めません。

そう考えれば、予想項目だけでなく、重要なことは、直近で出題されようがしっかり学習しろというのがこの出題の直接的に近いメッセージであったと考えられます。

このような出題は続けてがあるかはわかりませんが、今後も考えられるでしょう。

ただし、ちょっとやっかいなのは、むしろこのような項目ごとにしっかりやれというのがもう他にない場合です。

もう一つあれば翌年も同様の傾向の出題がある可能性もあります。

この場合は同様の出題形式等が継続することになりそうです。

しかし、もうない可能性も小さくありません。

その場合には、大きく出題の傾向が変わる可能性がある点には注意する必要があります。




（関連動画）
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