リサイクリングは、いろいろな要素が複合してわかりにくくなっています。
誤解の多そうな部分を中心に考えてみました。
誤解の多そうな部分を中心に考えてみました。
1 リサイクリングは違う種類の利益の振替えである
2 組替調整額の控除だけではなく、純利益への加算を含む
3 振戻処理とは関係がない
4 現行の仕訳は、リサイクリングを行うことを前提にしているので今の仕訳で考えるとわからなくなる
5 リサイクリングをしないとキャッシュ・フローとズレる
1 リサイクリングは違う種類の利益の振替えである
2 組替調整額の控除だけではなく、純利益への加算も含む
3 振戻処理とは関係がない
4 現行の仕訳は、今のリサイクリングを行う処理を前提にしているので今の仕訳で考えるとわからなくなる
5 リサイクリングをしないとキャッシュ・フローとズレる
「修正国際基準」では、のれんの償却とともにリサイクリングを修正事項としています。
これまで国際基準に合わせる形で会計基準の改正が行われてきましたが、この2つの項目は、国際基準に合わせることはないといえそうです(とても大事ってことですね。)。
リサイクリングとは、過去(当期を含みます。)の包括利益(その他の包括利益、以下「OCI」といいます。)を純利益に振り替えることをいいます。
いったん計上した包括利益を種類の異なる利益に再び組み替えることから「組替調整」や「再分類」とも呼ばれます。
その他有価証券の例で考えてみましょう。
前期取得100円⇒前期末時価150円⇒当期150円売却
前期の包括利益50円(発生額50円)
当期の純利益 50円
当期の包括利益 0円(純利益50円+OCI△50円<組替調整額△50円>)
この前期の50円のOCIを当期の純利益に振替えるのがリサイクリングです。
なお、当期に取得し、それを当期に売却した場合には、OCIが当期に発生し、同額のリサイクリングを行うことになります。
2 組替調整額の控除だけではなく、純利益への加算も含む
「包括利益の表示に関する会計基準」には、リサイクリングについての規定がありません。
あるのはリサイクリングを行った場合の「表示」上の規定です。
日本基準は、リサイクリングを行うことが前提なのでこれを規定する必要がなく、リサイクリングを行った純利益からスタートして包括利益を計算する場合の表示について規定されているだけです。
組替調整額は、リサイクリングを行った場合の包括利益の計算上の調整額です。
先ほどの例でみておきましょう。
前期取得100円⇒前期末時価150円⇒当期150円売却
前期の包括利益50円(発生額50円)
当期の純利益 50円
当期の包括利益 0円(純利益50円+OCI△50円<組替調整△50円>)
組替調整額は△50円です(単に売却益⇒△、売却損+の調整をするだけです)。
OCIの計算上、減額された金額50円(組替調整額)は、純利益に振替えられます(これが当期の純利益=売却益です)。
3 振戻処理とは関係がない
いわゆる振戻処理とリサイクリングは関係ありません。
振戻処理は、時価評価した翌期首で時価評価されたその他有価証券を原始取得原価に戻す処理です。
時価評価が本来的な処理なら原始取得原価に戻す必要はありません。
原始取得原価に戻すのは、売価と原始取得原価との差額で売却益という実現利益を算出したいためと考えるべきでしょう。
いわゆる振戻処理自体は、リサイクリングとは関係がありません(その他有価証券を前期末の時価で売却すれば、振戻処理の金額と組替調整額は同額ですが、それがリサイクリングということではありません。)。
4 現行の仕訳は、今のリサイクリングを行う処理を前提にしているので今の仕訳で考えるとわからなくなる
現行の仕訳は、包括利益を前提にしているのではなく、純利益を前提にしたものです。
包括利益を考える場合には上手くいきません。
包括利益は、時価の変動額です。
別に期首に時価が原価まで戻っているわけではないので、期首の振り戻しはしないで考えるとよいでしょう。
前期取得100円⇒前期末時価150円⇒当期150円売却
前期取得:(借)投資有価証券100 (貸)現金預金 100
前期期末:(借)投資有価証券 50 (貸)評価差額金 50
当期期首:なし
当期売却:(借)現金預金 150 (貸)投資有価証券150
5 リサイクリングをしないとキャッシュ・フローとズレる
リサイクリングをした場合としない場合の当期の数値を先ほどの例で比べてみましょう。
リサイクリングあり
CF 50円
包括利益50円
純利益 50円
リサイクリングなし
CF 50円
包括利益50円
純利益 0円
リサイクリングを行わない場合、前期のOCIを当期の純利益にしないのですから、当期の純利益はゼロになります(日本基準ではあり得ませんが)。
このようにリサイクリングを行わない場合、キャッシュ・フロー(この場合150円−100円=50円)が純利益(0円)と一致しません。
リサイクリングをしないことでキャッシュ・フロー情報と純利益が一致しないこととなるのです。
リサイクリングをしなければ、純利益がキャッシュ・フロー情報の裏付けを欠く、業績指標としての有用性の無い利益になってしまいます。
これがリサイクリングを行うべき最大の理由です。
また、同額のOCI(累計額)を繰越利益剰余金に振替えれば、利益を経由せずに株主資本が増加することになり、クリーン・サープラス関係を害することになります。
「修正国際基準」では、のれんの償却とともにリサイクリングを修正事項としています。
これまで国際基準に合わせる形で会計基準の改正が行われてきましたが、この2つの項目は、国際基準に合わせることはないといえそうです(とても大事ってことですね。)。
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