「入門の入門」の次は、テーマごとに「入門」記事を書こうかと思っていましたが、重要な収益認識の5ステップについて、ごく簡単にみておきましょう。

収益認識基準では、顧客との契約により生ずる収益を次の5つのステップにより認識します。

(1)顧客との契約を認識する
(2)契約における履行義務を識別する
(3)取引価格を算定する
(4)契約における履行義務に取引価格を配分する
(5)履行義務を充足した時に又は充足するにつれて収益を認識する。


長いのが苦手なので短くしてみました。

(1)契約の識別
(2)履行義務の識別
(3)取引価格の算定
(4)(2)に(3)を配分する
(5)収益の認識


いや、あんまし変わらないか。
以下、簡単な事例を前提に考えましょう。

【事例】(コンビニでの)ポイント付販売1,000円、付与率10%、失効率30%
*付与率は商品の販売で付与されるポイントの割合
*失効率は、使われないポイントの割合

(1)契約の識別

まずは、契約の内容を把握します。

契約は法律上の約束です。

きちんとした契約書をかわすこともあるでしょう。

コンビニで買い物をするときは売物をお客さんがお金と一緒にレジにもってくれば契約が成立します。


コンビニでの商品販売は契約とその履行(商品の受渡しと代金の収受)が同時です。

また、それと同時にポイントを付けて、そのポイントと引き換えに将来に商品を引渡す義務を負います。


それほど複雑な取引でなければ、契約の識別は難しくありません。

コンビニでのポイント付商品販売の場合は、「商品の販売」と「ポイントの付与」が内容です。


(2)履行義務の識別

契約の内容が把握できれば、その契約によって、しなければならない義務を把握します。

ポイント付販売であれば、商品を引き渡すこととポイントの付与(による将来の商品の引渡し)です。

商品の引渡義務とポイント発行による将来の商品の引渡義務といったところでしょうか。


この履行義務ごとに収益を認識していくことになります。


(3)取引価格の算定

取引金額は、お客さんがレジに持ってきた商品の価格1,000円です。

取引の総額と考えるとよいでしょう。


(4)(2)に(3)を配分する

この事例で注意を要するのがこの過程です。

履行義務に取引価格を配分します。

履行義務(商品販売+ポイント)に取引価格1,000を割り振るわけです。

商品1,000円を売ることで、将来の義務を負えば、実際のそのときに商品販売の履行義務の価格(実際は売上)は1,000円より少なくてよいハズです。

仮にポイントがその場で使えれば(通常は使えないですが)その分少なくてもよいです。

これをきっちり反映させるため取引金額1,000円を商品代金1,000円とポイント代金の比率で按分します。

ポイント代金はいくらにすればよいかというと実際には使わない人もいるので商品代金1,000円×付与率0.1×(1−失効率0.3)=70と計算します。

売上計上額 1,000×1,000÷1,070=935
ポイント分 1,000×70÷1,070=65

つまり、商品の引渡義務に配分される取引金額は935円、ポイントによる将来の商品引渡義務に配分される取引金額は65円です。


(5)収益の認識

商品の引渡義務は、店頭で果たします。

この部分は収益を認識(売上を計上)します。

ポイントによる将来の商品引渡義務は、他社ポイントを利用している場合は、未払金を計上します。

現金1,000 売 上965
        未払金 35

*貸方の未払金は、自社ポイントでは、「契約負債」になります。
 契約負債は、前受金に近いと考えるとよいでしょう。


まずは、収益認識の5ステップをしっかりとおさえましょう。

独特な用語と一連の流れをおさえるのがポイントです。