財表理論で穴埋めが出題されている傾向は続いています。

その中でやっかいなのが会計基準等の穴埋めではなく、作文のケースでしょう。
昨年の第二問は「配分」がテーマでした。

穴埋めの問題は作文ですが、非常に考えて枝を消していることが窺えます。

このような作文の穴埋めに対処するにはどうすればよいのでしょうか?

ややさかのぼりますが、平成21年の穴埋めを例に考えてみましょう。



まずは、実際の問題と異なりますが、次の穴埋めを考えてみてください。


( ア )及び( イ )が、キャッシュ・フロー計算書の資金の範囲に含まれる。



キャッシュ・フロー計算書の資金の範囲に関する問題です。

ア「現金」、イ「現金同等物」という答えが返ってくるでしょうか。


この問題であれば、それで結構だと思います。

ただ、文末がちょっと怪しいですね。

(ア)と(イ)が資金に「含まれる」とすれば、それ以外にも資金はあるハズ。

「現金と現金同等物」が資金ですからちょっと変です。

この文章ではそもそもちょっと足りないというべきかもしれません。

実はこの文章は、平成21年の出題の文章を切り抜いた一部です。

実際の出題は次のとおりです。


キャッシュ・フロー計算書における資金の範囲は、これとかかわる貸借対照表上の科目の範囲と異なっている。短期投資に該当する貸借対照表項目のうち( ア )及び( イ )という要件を満たすものが、キャッシュ・フロー計算書の資金の範囲に含まれる。



これが実際の出題です。

今度の解答は何になるでしょうか。

正解は、表現の仕方は色々ありますが、(ア)が「換金が簡単であること」、(イ)が「価値の変動リスクが少ないこと」です。

現金はそもそも「投資」ではありませんし、現金・現金同等物という解答は「要件」とはいえないでしょう。

また、冒頭で触れたように資金の範囲に含まれるということから資金のすべてを言っているのではなく、現金同等物のみについて言っていることもわかります。

事後的に振り返れば、色々なことが言えますが、当時、現金と現金同等物という解答を書いた方は多かったようです。

おそらく、資金には現金と現金同等物があるが、現金同等物の要件を2つあげよといった設問なら間違いは随分減ったに違いありません。



大事なのは問題の内容をよく読むことに尽きるのでしょう。

自らの記憶の引出しからあることを並べる前に問題で問われていること(文章の内容)をよく読む。

そのうえで解答すべきなのです。


この文章をみたとき現金・現金同等物って解答あるだろうなと思っていたら、実際には予想以上に多くて驚いた記憶があります。

私がこれに類する出題に出くわしたときにいつも感じるのは出題の多様性です。

それは文章の多様性といってもよいでしょう。

実質的な意味内容が一つであったとしても、その表現形式としての文章は多様なのです。

問題の問い方ももちろん多様。

その多様性にはじめから気付いていればそれに応じた解答もできるかもしれませんし、対策も打てるでしょう。

出題の多様性に気づかぬまま本試験をむかえないよう過去出題やその他の異なる問題にあらかじめ接しておく必要があるのではないでしょうか。