分配可能額=直近の期末剰余金の額
      −分配可能額からの控除額
      ±効力発生日までの株主資本の計数の変動額


今回は、分配可能額の計算上の控除額のつづきです。
分配可能額の計算上、控除すべき金額には、次の3つがあります。

1.自己株式の帳簿価額
2.のれん等調整額に係る金額
3.その他有価証券の借方の評価差額


今回は、このうちその他有価証券の借方差額をみておきましょう。


その他有価証券の評価差額の処理方法には、「全部純資産直入法」と「部分純資産直入法」がありました。

結論的には、両方法で分配可能額は変わりません。

どっちでも変わらなくするためには、その他有価証券の借方の評価差額だけを控除すればよいことになります。

ちょっと順を追ってみていきましょう。



まずは、部分純資産直入法です。

部分純資産直入法により評価減すると、その分の剰余金(繰越利益剰余金)が減ります。

すでに減っているので分配可能額の計算上は何もする必要はありません。

そうでないケースの借方差額を控除します。

全部純資産直入法による借方差額ですね。

簡単な例でみておきましょう。


前期末残高:現金預金200 資本金100 繰越利益剰余金100


この段階での分配可能額は、剰余金(繰越利益剰余金)100です。

期中にその他有価証券を購入100⇒期末時価90


<部分純資産直入法>

期中:(借)投資有価証券100 (貸)現金預金100

期末:(借)投資有価証券評価損10 (貸)投資有価証券10
      損       益10    投資有価証券10
      繰越利益剰余金  10    損    益10

剰余金(繰越利益剰余金)は10減って、90です。

分配可能額は90です。

そもそもの繰越利益剰余金が減ってますね。


<全部純資産直入法>

期中:(借)投資有価証券100 (貸)現金預金 100

期末:(借)その他差額金 10 (貸)投資有価証券10


剰余金は当初の繰越利益剰余金100のままです。

分配可能額は剰余金100−その他有価証券評価差額金の借方差額10=90です。

どっちの処理でも分配可能額を一緒にしたってことですね。

そのためには借方の有価証券評価差額金を控除する必要があるわけです。



結論は、借方のその他有価証券評価差額金を控除する。

これだけです。

ただストーリーを一度だけでも追っておくと、忘れにくいですよね。

一度だけ、一度だけでよいのでストーリーを追いかけておきましょう。




分配可能額の計算(6)



分配可能額の計算(1)