昔に比べると貸借対照項目を時価で計上するケースが随分と増えました。

いろんな資産を時価で評価してますね。

あっ。負債は時価評価しないんでしょうか。
結論的には、一部の負債(デリバティブ等)を除いて、時価評価されません。

その理由をちょっと考えてみましょう。



金融資産で市場取引がされるなら明確な時価があります。

それが社債であれば発行している側は負債として計上しているハズ。

その負債の時価を把握することは可能です。

しかし、現状では負債は時価評価していません。

それはなぜでしょうか。

その前にまずは、社債を時価評価する場合の会計処理を考えてみましょう。


100円で発行した社債の時価が90円に下落した場合です。


発行:(借)現金預金100 (貸)社  債100

決算:(借)社  債 10 (貸)評 価 益 10


資産の場合であれば、時価が上がれば評価益、下がれば評価損が出ます。

負債はその逆。

下がれば評価益、上がれば評価損です。

なんかちょっと変ですね。



そもそも社債の時価が下がる大きな要因がその企業が危なくなったから。

企業が危なくなる ⇒ 負債の時価が下がる ⇒ 評価益 ⇒ もうかった?

何かおかしくないでしょうか。


社債を保有している側からすると社債の時価が下がって評価損を計上するのは自然です。

でも社債を発行している側は時価が分かっても時価評価しません。

自らの信用が落ちて、負債を時価評価して評価益を計上するのがおかしいからです。



金融商品に関する会計基準では、社債を時価評価しないことの理由を時価での清算に制約があるためと説明しています。

余裕資金で運用する売買目的有価証券のように事由に売却できるならいったん売却したと考えることに大きな違和感はありません。

しかし、お金がないから社債で資金を調達したのにその社債の清算を想定した処理(時価評価)を行うのはおかしいでしょう。

こんな理由から社債は時価評価されていません。



負債の時価評価は広がりのある論点。

まずは、余りなじみのない負債の時価評価の会計処理となぜ時価評価をしないのかの簡単な理由をおさえておきましょう。