会社法上の分配可能額のスタートは前期末の「剰余金」です。

まずは、剰余金そのものを整理しておきましょう。
剰余金は「その他資本剰余金」と「その他利益剰余金」からなります。

資本準備金以外の資本剰余金が「その他資本剰余金」です。

資本金及び資本準備金減少差益、自己株式処分差益が該当します。

利益準備金以外の利益剰余金が「その他利益剰余金」です。

繰越利益剰余金や任意積立金(新築積立金等)が該当します。


いきなり純資産項目からスタートするので分かりにくいですが、仮に純資産=株主資本と考えるとその意味が見えてきます。

資産−負債=純資産(株主資本)

純資産(株主資本)−資本金−準備金=剰余金

純資産は、プラスの財産である資産からマイナスの財産である負債を控除した金額です。

配当する前に借金を返すのは当然ですから資産の全額を配当はできません。

負債を控除した残りの純資産(株主資本)が配当の元になるのは当然でしょう。


それだけでは不安なのでここから一定の金額を控除する。

そのメインが資本金です。

「資本金」は登記の必要もあり、減少に厳格な手続が必要です。

いわばその予備として存在するのが「準備金」です。

純資産から資本金と準備金は除いた残りを配当等していいというのが剰余金からスタートする意味です。


旧商法下では配当の限度額は純資産からスタートしていました。

その方が感覚的にはわかりやすいですね。

ただ、今は純資産と株主資本とで多くの食い違いが生じています。

そこでダイレクトに剰余金からいった方がいいんじゃね。

というのが今の規定で、ここの基本的な考え方は以前と変わっていません。


分配可能額のスタートである剰余金は簡単です。

直近の貸借対照表のその他資本剰余金とその他利益剰余金の合計です。

ざっくりした分配可能額の計算方法を示しておきましょう。

詳細は次回以後にて。

分配可能額=直近の期末剰余金の額
      −分配可能額からの控除額
      ±効力発生日までの株主資本の計数の変動額




分配可能額の計算(3)



分配可能額の計算(1)