簿記のはじめのころ、分かりにくかったのが付随費用です。

有価証券や固定資産、商品(仕入)のいずれも取得原価に算入するという取扱いですが、その理由を考えてみました。
一言でいってしまえば、正しい「期間損益計算」を行うためです。

仮に有価証券を10万円で取得し、手数料を1万円払い、これを15万円で売却した場合で考えてみましょう。

(1)手数料を原価に入れる場合

購入:(借)有価証券11万円 (貸)現金預金  11万円

売却:(借)現金預金15万円 (貸)有価証券  11万円
                  有価証券売却益4万円

(2)手数料を費用にする場合

購入:(借)有価証券10万円 (貸)現金預金  11万円
      支払手数料1万円

売却:(借)現金預金15万円 (貸)有価証券  10万円
                  有価証券売却益5万円


損益だけを拾ってみましょう。

(1)手数料を原価に入れる場合
購入:ゼロ
売却:+4万円

(2)手数料を費用にする場合
購入:△1万円
売却:+5万円


いずれも通算では+4万円の利益で変わりません。

これはそもそもの現金支出(購入代金+手数料)と現金収入(売却収入)が同じだからです。

って、同じ事例だからあたりまえですが。

同じ現金収支を前提にすれば、全体期間の利益は同じです。

各期の利益の合計は必ず全体期間の利益と一致します。

一致の原則なんていいますね。

それを期間的にどう配分するかの問題は別にあります。

正しい期間損益計算を行うためというのが付随費用を原価算入する理由といえるでしょう。



事後の売却等が損益取引でないと事情が少し変わります。

自己株式の例です。

自己株式の取得は、資本の減少取引、つまり資本取引です。

自己株式を売却(処分)しても損益は生じません。

自己株式に係る付随費用(取得・処分・消却)は、発生時に費用処理されます(処分は繰延資産計上可)。



付随費用の取扱いも根拠も一緒にみておくとおさえやすいですね。