工事契約の認識基準としては、成果の確実性が認められる場合は工事進行基準、そうでない場合は工事完成基準が適用されます。

工事完成基準が実現基準と同じというのはわかりやすいです。

しかし、ちょっとわかりにくいのが工事進行基準。

この工事進行基準について整理してみました。
(1)従来の取扱い

まずは、工事契約基準以前の取扱いの確認です。

企業会計原則の注7に長期の請負工事に関する収益の認識に関する規定があります。

工事進行基準と工事完成基準の選択適用です。

企業会計では複数の会計処理が多く認められています。

企業は色んなことをする。

どんな形で会計処理を行うのがよいのかは、どんな事をしているのかを一番よく知っている企業のハズ。

会計処理の選択も経営者に委ねるのがよいという考え方が背後にあるのでしょう。

長期工事の請負に関しても複数の会計処理が認められていました。



(2)工事契約基準での取扱い

複数の会計処理の許容には問題もあります。

つまり、利益操作の余地を残し、財務諸表の比較性を害するのです。

工事契約基準では、会計処理の選択の余地をなくしました。

つまり、成果の確実性が認められる場合は工事進行基準を適用し、成果の確実性が認められない場合は工事完成基準を適用します。

企業が一般的に手掛けている事業で成果がどの程度確実かがわからないということはないでしょう。

ごく一般的な工事であれば、通常は成果の確実性が認められます。

自分の家をつくる大工さんに、「家どのくらい進行しました?」なんて聞いて「いや、皆目わからねえ。」なんてことはないでしょう。

まあ、細かい誤差はあるにしても半分終わったとか、もう8割は終わったとかは言えるハズです。

ところが例えば、これまでに成功事例の少ない事業を行う場合などはそうとは限りません。

ロケットをつってくれといわれて、つくったはいいけど打ち上げ失敗。

これではどの程度、完成に近づいたかがつくっている本人にもわかりません。

工事契約基準では、ごく一般的な事業には、工事進行基準を適用しているとみるべきです。

もっともごく一般的な事業とロケットの打ち上げ事業のような新規事業等との間に線を引くという作業は大変でしょうが。

工事契約基準の認識基準に対する理解は、工事進行基準と工事完成基準のいずれかと考えるより、基本的には工事進行基準を適用し、これを適用できない(適用するのが合理的でない)場合には、工事完成基準を適用すると考えるべきでしょう。



(3)工事進行基準の考え方(企業会計原則)

従来の工事進行基準は、収益の認識基準として位置付けられていました。

収益を工事の進行程度に応じて見積もるのが工事進行基準です。

生産の進行や完了に応じて収益を認識する基準は広く「生産基準」と呼ばれています。

工事進行基準は、生産基準の一種です。

また、工事進行基準は、工事の進行により収益を認識するのですから、発生主義による収益認識といわれることもあります。

いや、収益の認識は実現主義なんだから工事進行基準による収益の認識も実現主義なんだよという方もいるかもしれません。

この辺りは、「発生」や「実現」の厳密な定義がない以上、考え方に整合性があることが大事といえるでしょうか。

かつて、費用の額が先に決まり、これに収益の額が対応させられる例をあげよという出題があったことがあります(平成12年第二問)。

これがまさに工事進行基準(原価比例法をとった場合)を意味しています。

ごく一般的にいえば、工事進行基準は発生主義(発生基準)による収益と費用を認識する基準といってよさそうです。



(4)工事進行基準の考え方(工事契約基準)

現在の会計基準の利益認識の基礎にある考え方は「投資のリスクからの解放」です。

「投資のリスク」は投資の不確定性を意味します。

リスクから解放されるとは、「不確実性」の不がとれて「確実」になることを意味します。

リスクからの解放は、基本的には純利益の認識に関する考え方ですが、純利益は「収益−費用」ですから、収益と費用の認識に関する考え方ともいえます。

むろん純利益や収益・費用の定義にもこのことが反映されています。

このリスクからの解放の考え方を従来の考え方と対比しておく必要があるでしょう。

リスクからの解放の考え方のポイントは、企業の行う投資を大きく事業投資と金融投資とに分ける点にあります。

事業投資はいわば本業です。

金融投資は余裕資金での時価の変動を狙った資金運用といえるでしょうか。

その線引きは簡単ではありません。

投資の目的(狙い)に応じて、成果(純利益)の認識、そして資産等の評価を考えようというのがリスクからの解放の考え方です。

事業投資に関しては、従来と変わりありません。

その意味では、従来の発生、実現、対応の考え方と同じです。

リスクからの解放は、実現概念を進歩・進化させて、これに発生と対応の意味をも持たせたものといってもよいかもしれません。

これに対して大きく意味が異なるのが金融投資です。

時価の変動を狙ったような投資ならその成果も時価の変動で捉えるべきことになります。

金融投資に係る資産については、時価で評価して、評価差額が当期の損益とされるわけです。



(5)まとめ

工事進行基準は、従来的な考え方をとるなら発生主義(基準)の適用ということもできるでしょう。

リスクからの解放を下敷きにした工事契約基準では、一見、異なる根拠を持つようですが、事業投資に関しては、これまでと大きく異なるところはありません。

もっとも大きく異なるのはそもそもの選択(任意か、強制)の話ということになります。