計算で出てくる二択も根拠をおさえておけば忘れにくいハズ。

どうしても説明しにくいのがリース資産計上額です。

全部で4つにわかれて、3つが「小さい方」ってやつですね(いい加減な)。

なぜ小さい方をとるのでしょうか。

保守的に見積るという説明は、計算を間違えないという意味では有効ですが、もう少し正確な説明を考えてみました。

(1)取扱いの確認

かなり省略しますので、正確な記述はテキスト等を参照ください。

1.貸手(リース会社)の購入価額がわかる場合
 
移転  → 「貸手の購入価額」
 移転外 → 「貸手の購入価額」 と 「割引価値」の小さい金額


2.貸し手(リース会社)の購入価額が不明
→「見積現金購入価額」 と 「割引価値」の小さい金額




(2)移転で貸手の購入価額がわかる場合

リース基準のはじめのページを見ると現在のリース基準が平成19年にできたことがわかります。

実際にできたのは平成5年。

平成19年の改正では、所有権移転外ファイナンス・リース取引における賃貸借処理を禁止しています。

ファイナンス・リース取引における考え方に大きな変更はありませんでした。

平成5年当時の考え方が今も生きているといえます。

有価証券も時価で評価されるのは減損や低価基準に限られていました。

多くの資産は当然のごとく取得原価で評価されていました。

リース基準もむろんその中でできた基準です。

リース基準で資産と負債を両建するのは、ファイナンス・リース取引がお金を借りて、資産を買ったことを表現しているに過ぎません。

しかし、法的には買っておらず、買値の取り決めもないです。

リース資産計上額(リース債務計上額)は推測するしか方法がありません。

所有権移転ファイナンス・リース取引は売買取引とその実質が大きく変わらないため、貸手の現金購入価額がわかるならそれをとるべきでしょう。



(3)移転外で小さい方をとる理由

かなりわかりにくいのが、移転外で貸手の見積現金購入価額と割引価値の小さい金額をとる理由です。

借方(資産)側と貸方(負債)側から推定しようというのが両金額の意味でしょう。

それではなぜそのうちの小さい金額をとるのでしょうか。

これについては、所詮は見積りだから小さい金額をとるとか、保守的に小さい金額をとると説明されているケースを見ることがあります。

小さいということを記憶にとどめるにはよいでしょうが、やや正確性には欠けるようです。

実際の理由として大きいのは残存価額を考慮してリース料を決めているケースを想定したというところのようです。

所有権移転外ファイナンス・リース取引では物件を最後に返還します。

物件に残存価値があるのであれば、それをそもそものリース料を安くすることにあてるケースも考えられるでしょう(残存価額なんかないというケースも少なくないと思いますが)。

そうするとリース料総額は、その残存価額部分だけ小さくなります。

それを割引計算すれば、その金額は推定が正しければ割引価値は見積現金購入価額よりも小さくなります。

つまり、割と両方が正しく算出されたものとした場合に見積現金購入価額が小さくなるケースが考えられるので、これに合わせて両金額の小さい方という判断基準にしたというあたりが正しい理由のようです。

所有権移転ファイナンス・リースについては、必ずしもこの理由はあてはまりませんが、移転外と同様の基準にしたという理解で大きく違ってはいないようです。




所詮はいずれも「推定値」です。

計算を間違えなければよいですが、気になるかたのためのご参考です。

実際的な不合理を避けるためといった程度の理由になりますので、理論での出題があることもないでしょう。

やや面倒な「小さい方」をとる理由についてでした。