以上、費用収益対応の原則についてみてきました。

最後に損益計算書原則の関係を簡単にまとめておきましょう。
企業会計原則一Aを整理すると収益は実現(主義)、費用は発生(主義)により認識されます。

費用はさらに対応により絞り込まれます(費用収益対応の原則)。

損益計算上はこのように認識された収益と費用が対応表示されます(費用収益対応表示の原則)。



昨年の税理士試験の第2問では「配分」が出題されました。

通常、配分(費用配分)といえば、当期を中心に考えると過去支出(取得原価)を当期と当期以後に振り分けることを意味します。


原価 ⇒当期の費用
    次期以後の費用(資産)


減価償却を想定するとよいでしょうか。


固定資産の取得原価 ⇒ 減価償却費
            固定資産


企業会計原則における費用配分もこの意味で使用されています。

しかし、支出と費用との関係を考えると他にもいくつかのパターンが考えられます。

たとえば、退職給付引当金などは将来の退職金支出をそれ以前の期間に割り振っているとみることもできるでしょう。

これは企業会計原則にいう費用配分とは呼べないものの、極めて相似する関係にあることがわかります。

逆方向ですね。

費用配分の原則の意義が書かれた固定的な文章をその字句に捉われて学習していてもその関係にはなかなか思いが至らないかもしれませんが。

学習の途上で過去の支出を費用として振り当てるのなら、将来の支出を過去に遡って計上するケースはどうなるのかについて事前に一度でも考える機会を持つことができたか(一度でいいです)。

それが昨年の出題である第二問の合否に関わるといってもよいように思います(出題のポイント参照)。


近時の税理士試験の財務諸表論の出題を考えると重要概念について、より深く学習することが求められているといえます。

私が企業会計原則上の重要概念としてよくあげる「発生」、「実現」、「対応」、「配分」のうち、発生は平成21年、実現は平成18年、配分は平成23年に出題されています。

本年の出題にもそのような視点が求められるハズです。

仮に「対応」が出題されるとするならば、異なる対応概念を知ることがムダになるとは思えません。

いや、むしろ、ある特定の考え方を表記した字句にこだわり、見えにくくなることがあるリスクに思いをよせるべきなのかもしれません。

この「対応とは何か」をしっかりと読んだ受験生の皆さんが本試験で「文章として覚えた答え」ではない「自らひねり出した合格答案」を書かれることを期待して長かったシリーズの終わりとします。


対応とは何か(完)