工事契約を含めた収益認識は、怪しいです。
(1)収益の認識基準との関係

工事契約基準は、工事収益と工事原価の認識を扱っています。

伝統的な「収益」の認識は、実現主義によっていました。

概念フレームワークでは「リスクからの解放」です。

この実現(企業会計原則の損益計算書原則三B)、そしてリスクからの解放(概念フレームワーク第4章57項)の考え方はよく整理しておきましょう。



他の収益認識の問題(特殊商品販売等)なども整理しておくとよいでしょう。

なかでも割賦販売は特徴的です。

一般の商品販売が商品の引渡しにより収益を認識するのに対して、工事進行基準ではそれ以前に収益が認識されます。

割賦販売では引渡しの後に収益が認識されるのですから極めて対称的といえます。



(2)比較可能性

従来の工事収益の認識は工事進行基準と工事完成基準との選択でした。

企業の実態を最もよく知るのは経営者です。

その経営者に実態に即した会計処理を選択させるのが実態を最もよく表すとの認識がからの取扱いでしょう。

この点に対しては比較可能性を欠くとの批判がありました。

比較可能性の視点は国際基準において強調されています。

概念フレームでは、必ずしも比較可能性の視点が重視されているとはいい難い(支える特性ではなく、一般的制約)ことからむしろ出題時に注目される可能性があるかもしれません。



(3)工事進行基準

工事進行基準に関して、これまであまりみることのなかった原価比例法以外の方法(施工面積や直接作業時間を基準とする方法)。

原価比例法以外の方法の指摘は、原価比例法が必ずしも合理的でない場合を想起させます。

また、例えば、ある期に作業場のミスなどにより予定よりも原価がかかってしまった。

工事原価がその分だけ増えるとすると工事利益は、その期に多く計上されてしまいます。

そんな不合理を防ぐには、工事原価総額をしっかりと見積ることができる必要があります。

大事なのは単純な原価の発生状況そのものではなく、工事の進捗状況である点を意識しておきたいところでしょう。



工事進行基準をとった場合の完成工事未収入金は、法的に債権とはいえません。

このような点を考えると資産負債アプローチの立場からは工事進行基準ってどうよ?という考え方もでてきそうです。

結論的には、金銭債権として扱いますが、金銭債権ではない点を踏まえておきましょう。

金銭債権に準じて考えるわけですから、貸倒引当金の設定や外貨である場合の換算もあります。

この辺も軽く視野に入れておきましょう。



(4)引当金

工事損失引当金は簿記論での出題事績もあり、要注意です。

一般的な引当金と合わせてしっかり学習しておきましょう。

工事損失引当金の計上のネライは、損失を将来に繰延べないという意味では、収益性の低下による棚卸資産の評価や有価証券や固定資産の減損処理とも共通します。