概念フレームワーク、読んでますか?

今回は、ディスクロージャー制度における各当事者の話です。
ディスクロージャー制度の関係者には、(1)経営者、(2)投資家、(3)監査人がいます。

会計情報を提供するのが「経営者」です。

会計情報を利用するのが「投資家」です。

会計情報の信頼性を高めるのが「監査人」です。

それぞれの当事者を概念フレームワークは、どのように位置づけているでしょうか。



(1)投資家

企業に資金を投ずるのが投資家です。

投資家は、企業が発行する株式や社債を証券市場で購入します。

概念フレームワークでメインの利害関係者としているのが投資家です。

一般的な利害関係者には、この他に債権者がいます。

投資家には、市場で社債を購入する債権者(債券者)は含まれますが、直接企業に資金を貸し付ける銀行等は含まれません。

また、投資家には、現在の株主等のみならず、将来の株主等が含まれる点も意識しておきましょう。



一口に投資家といっても個人投資家から証券会社や機関投資家といった投資のプロまでさまざまです。

概念フレームワークで想定しているのは、投資のプロです。

誰にでもわかるというスタンス会計基準をつくったら、きっと膨大な量になってしまいます。

投資家のレベルはプロにあわせるので、必要なら素人はプロに情報をもらえばよい。

そんなスタンスをとっています。

まあ、私は投資のプロなので安心です。

ええ、安心です(←なぜ、二度いう)。



(2)経営者

会計情報を開示するのが経営者です。

どのような情報を開示するかといえば、あくまでも事実の開示です。

企業がこれまでにあげた成果情報としての利益。

そしてそれを生み出すために投下した資本がどのような形で運用されているのか。

このような情報(投資のポジションと成果)を示すのが財務報告の目的でした。

企業評価を行うのは、あくまでも投資家です。

投資家は、企業の過去の成果などを参考に将来の成果(キャッシュフロー)を予想します。

それをもとに投資家は企業評価を行います。

経営者は、企業評価を行う上で、一般には投資家よりも優位に立つでしょう。

しかし、株式を発行する企業が自らの評価を行うのは、いかにもマズイです。

あくまでも予想・予測を行うのは投資家であり、経営者は、事実の開示に徹するというのが概念フレームワークの立場です。



(3)監査人

情報の信頼性を高めるのが監査人です。

監査人は、会計基準に準拠した財務諸表が作成されているかの保証を与えます。

そもそもディスクロージャー制度は、企業の私的開示制度でした。

このような私的開示制度における監査には、いわゆるボンディングの意味があります。

ボンディングは、自己抑制などと訳されますが、自分の行動を制約することを意味します。

お金を借りる(利率を下げる)のに、もうお酒も飲みませんし、博打もしません。

レベルは低いですが、こんなのもある種のボンディングといえるでしょうか。

企業でいえば、変な用途には使いませんからお金を貸して下さい。

こんなのもボンディングの一種でしょう。

財務諸表の監査には費用もかかりますが、あえてこれを行うことで財務諸表の信頼性を高めるのがネライです。

そのことが「あの企業はちゃんとした財務諸表をつくってるのね」という投資家の信頼につながります。

その信頼がお金を借りるときの金利が安くなったり、企業自身の評価があがったり、プラスとなって返ってくるのです。



ディスクロージャー制度は、各当事者に便益をもたらします。

投資家は、監査人の監査を受けた信頼性の高い財務情報を安いコストで入手できます。

企業も財務情報がきちんとしているならちょっと利率(資本コスト)を下げられるというならやはり便益をうけます。

会計基準は、また監査人の監査を実施する際の基準にもなります。



監査人はよいとして、投資家と経営者は、しっかり位置づけをしておきましょう。


そうだ、会計基準を読もう!(各当事者の簡単な意義と役割をおさえましょう)


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