変更・誤謬基準、読んでますか?

定額法等の減価償却方法は、会計方針です。

でも、その変更の取扱いにはちょっと注意が必要です。
企業会計原則の注解1の2の例示からもわかるように減価償却方法は、会計方針です。

会計方針は、会計処理の原則と手続ですが、手続の方ですね。

減価償却方法が会計方針なら、減価償却方法の変更は、会計方針の変更として遡及処理(遡及適用)することになりそうです。

しかし、遡及処理は、しません。

減価償却方法は、会計方針ですが、これを変更しても遡及処理しないというのが結論です。



(1)会計方針の変更……遡及処理

(2)会計上の見積りの変更……遡及処理しない

(3)(1)と(2)の区分が不明……遡及処理しない

(4)減価償却方法は、(3)と同じ扱い

減価償却方法の変更には、会計上の見積りの要素も入るため、区別が困難として、遡及処理をしません。

遡らずに当期以後に影響させるのが、減価償却方法の変更の取扱いです。



減価償却方法には、定額法や定率法があります。

利用期間にわたって同じように利用される固定資産には、定額法が適するといわれます。

これに対して、利用期間の初期では、比較的多く利用され、その後に利用の頻度が落ちる固定資産もあります。

たとえば、製造設備(機械)などです。

同様の機能を果たす機械を複数台所有しているときなどは、フル稼働しないのであれば、新しい機械を利用するケースが多いでしょう。

2台同じ役目の機械があって、どちらかを使うとすればオンボロよりも新しい方を使うのが人情です(人情か?)。

一つの機械に着目すれば、新しい段階での利用頻度が高いと想定できます。

利用頻度の高い初期段階でより多く価値の費消が行われているハズなのです。

このような資産には、初期段階で多くの償却費を計上する定率法が適するといわれます。

固定資産の利用状況等によって、適するであろう償却方法も異なります。

減価償却方法は、固定資産の利用状況によって左右されます。

固定資産の利用状況で減価(原価の消費)のパターンも変り、減価償却方法も変り得る。

このような原価の消費パターンの想定は、会計方針というよりは、会計上の見積りに近いともいえるでしょう。



もっとも、減価償却方法が会計方針の変更であることは間違いありません。

つまりは、減価償却方法の変更には、「会計方針の変更の要素」と「会計上の見積りの要素」が混在しているケースがあるわけです。

2つの要素を区別して、個々の減価償却の方法の変更ごとに別々の取扱いを行うことも考えられるでしょう。

しかし、基準では、減価償却方法の変更を会計上の見積りの変更と同様に遡及処理しないこととしました。

これは一つのあり得べき可能性からの選択といってよいでしょうか。

計算でも影響するであろう償却方法の変更の取扱い(会計上の見積りの変更と同じ)をしっかりおさえておきましょう。

なお、変更・誤謬基準は、平成23年4月以後の適用です。

試験的には、従来の取扱いも踏まえる必要がある点にも注意しましょう。



そうだ、会計基準を読もう!(減価償却方法の変更は、遡及処理なし)



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