試験に直接出題されるわけではないものの、大ヤマの理論よりも重要な概念があります。

ここをきっちり自覚していないと満足な解答がかけないことは少なくありません。

その一つが認識です。
認識という語の意味を理解するには、「いつ」という話からスタートするのがよいでしょう。

経験的には、入り口では、まず何よりも、わかりやすさを最優先すべきです。


認識=いつ


たとえば、「収益の認識」は、「収益をいつ計上するか」の問題を意味します。

もちろん「費用の認識」は、「費用をいつ計上するか」の問題です。

この「認識=いつ」は、とてもわかりやすく、おおむね正しいでしょう。

ただ、必ずしも仕訳のうえでいつ収益や費用を計上するのかの問題と決め付けるとやや正確性を欠きます。

たとえば、家賃1年分を会計期間(1年)の中間で支払った場合は、その支払額の全額が費用として仕訳処理されます。

しかし、実際には決算修正が行なわれるため、あくまでも当期の費用になるのは、当期分の家賃だけだからです。

単に「いつ」計上するかとしてしまうと最初の支払段階でいつ計上するかの話と間違えやすい可能性があります。

もう少し正確にいうと認識は、どの会計期間に帰属されるかの問題というべきでしょう。


認識=会計期間の帰属


「収益の認識」といった場合は、「収益をいつの会計期間のものとするか」の問題であることになります。

むろん「費用の認識」は、「費用をいつの会計期間のものとするか」の問題です。

帰属といった場合は、誰のものか(人)というときと、どの期間に入れるべきか(期間)というときがありますが、この場合は、期間帰属の問題を指しています。

このように収益や費用の認識といった場合は、収益や費用をいつの会計期間のものとするのか、つまり、その期間帰属の問題を意味しています。

その前提には、収入や支出をどの会計期間の収益や費用とするのかの話があることもわかるでしょう。

伝統的には(昔は?)、認識という語は、費用や収益についていわれることが多かったようです。

しかし、最近では、費用や収益という損益計算書の項目だけでなく、財務諸表の構成要素すべてにいわれることも多いようです。

費用や収益だけでなく、資産や負債などにも「認識」という語が使われることがあるのです。

収益や費用だけでなく、資産等についても認識というためには、その意味が期間帰属ではちょっとまずいです。

資産や負債は、おおむね期末にあるものであって、帰属させるものではないからです。

一定の支出があって、それをいつの会計期間の費用とするかが費用の認識の問題であり、この場合は、「期間帰属」といってもよいでしょう。

しかし、資産なども含めていうときは、少し表現を変えた方がよいかもしれません。

たとえば、概念フレームワークでは、認識を次のように定義しています。

「財務諸表における認識とは、構成要素を財務諸表の本体に計上することをいう。」


認識=財務諸表への計上


こうすると収益や費用だけでなく、資産や負債の場合でも通用します。

もっとも収益や費用に限定すれば、期間帰属であってもいつの財務諸表に計上するかという意味でしょうから、期間帰属といういい方の場合と異なるわけではありません。

むしろ費用や収益については、期間帰属の方がイメージはわきやすいかもしれません。

逆に財務諸表への計上と割り切ってしまうだけでは、正確かもしれませんが、そこから何かを想像することは難しい気がします。

つまり、そこから派生する余地が少ないのです。



このように認識という重要句をややニュアンスの異なるいくつかの言葉で表すことができます。

認識を単に「いつ」ととらえれば、とてもイメージがわきやすいけれども不正確な可能性も残します。

認識を「期間帰属」とすれば、収益と費用に関しては、収入や支出との関連やイメージを伴いますが、資産等には不適切です。

認識を「財務諸表への計上」とすれば、正確ですが、収益や費用について、必ずしもイメージを伴わない可能性があるでしょう。



ちょっとまとめておきましょう。

(1)いつ(簡単だけどやや不正確)

(2)期間帰属の決定(意味が収益と費用に限定される)

(3)財務諸表への計上(正確だけど、関連性に乏しい)


過去の財務諸表論の出題を振り返るとこの認識という語が頻繁に登場していることがわかります。

その多くは、収益や費用に関してです。

実際の出題でもその意味をしっかり把握したうえで回答しないとトンチンカンな解答になってしまうケースは少なくありません。

もちろん、その前提としてその意味を踏まえながらの学習が必要なことはいうまでもありません。

認識の意味を単に覚えるということではなしに、一度は十分な検討のうえ、しっかりと使えるようにしておきましょう。