今年の大ヤマの棚卸資産基準を最初から読んでみました(長いです)。

単独の記事としても読めるようにしましたが、試験までに皆さんもぜひ結論の背景を含む「全文」に目をとおしましょう。

項数ごとに予想ランクA〜Dもつけてみました。
1・2項(目的)D


3項(範囲)B
棚卸資産の範囲で意識したいのが、事務用消耗品等の管理目的の資産を含む点です。
最終的に売上原価にならない(つまりは売らない)のが他の棚卸資産との大きな違いです。
売却に、トレーディングを含む点にもやや注意です。


4項(時価)B
市場価格があれば市場価格、なければ合理的な価格です。
出題されそうという感じではないですが、基礎的な知識及び若干、他とのからみがあります。


5項(正味売却価額)B
売ったときの値段です。
正味売却価額=売価−見積追加製造原価・見積販売直接経費
棚卸資産の評価は取得原価で、正味売却価額がこれを下回る場合は、正味売却価額ですので、この規定はしっかりおさえましょう。


6項(再調達原価)C
買ったときの値段です。


7項(通常の販売目的で保有する棚卸資産の評価基準)AA
通常の販売目的(販売するための製造目的を含む。)で保有する棚卸資産は、取得原価をもって貸借対照表価額とし、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額とする。この場合において、取得原価と当該正味売却価額との差額は当期の費用として処理する。

棚卸資産基準の柱になる規定です。
かなりしっかり読み込みましょう。
次の語句は、間違えないようにしましょう。
取得原価(○)、取得価額(×)
当期の費用(○)、当期の損益・損失(×)


8項 C
合理的に算定された価額には、期末前後実績値や契約による売価も含むんですね。
参考程度に。


9項 C
営業循環過程から外れた棚卸資産の代替的方法です。
倉庫にほっぽりっぱなしの商品なんかですね。
ゼロや備忘価額(1円)評価を含む処分見込価額までの引き下げもありです。
出題はないかな。


10項 A
再調達原価をとれるケースです。
これは出題の目もありでしょう。
再調達原価の方が把握しやすく、正味売却価額と値動きがリンクしているケースです。
継続適用を要件とします。
試験傾向的にこういう簡単な指摘もありです。


11項 C
複数の市場に参加できる場合です。
これはいいかな。


12項 B
適用単位です。
収益性の低下の有無の判断、簿価切り下げは、個別品目ごと(個々の商品等ごと)に行います。
一個一個売る訳ですから、一個一個で考えろってことですね。
継続適用を要件として、グルーピングできます。
こういうタイプもありです。


13項 B
売価還元法の規定です。
これまで連続意見書にあった規定と同じ感じです。
理論で問われる可能性は高くない気がしますが、売価還元法と棚卸資産基準との評価の関係は計算でも必要ですので一回は考えておきましょう。
売価還元平均原価法採用時は、売価還元法の評価額と正味売却価額との比較です。
売価還元低価法採用時は、値下額等が売価合計額に適切に反映されている場合には、これを収益性の低下に基づく簿価切下げ額を反映したものとみなすことができる取扱いです。
理論の出題としは薄めかな。


14項 A
洗替え法と切放し法の適用です。
ここはありだと思います。
基本は棚卸資産の種類ごとに両方法を選択適用できます。
売価の下落要因を区分把握できる場合には、要因ごとに選択適用できます。
ただし、継続適用が要件です。


15項(トレーディング目的で保有する棚卸資産の評価基準)A
出題可能性ありでしょう。
基本的な考え方は、売買目的有価証券やデリバティブ取引により生ずる正味の債権・債務と同様です。
貸借対照表価額:市場価格に基づく価額
評価差額:当期の損益
市場価格に基づくという微妙な言い回しは、付随費用を考慮してのものでしょうか。


16項 C
トレーディング目的の棚卸資産の評価は、具体的には、売買目的有価証券に準じてねという取扱いです。
それだけです。


17項(通常の販売目的で保有する棚卸資産に係る損益の表示)AA
通常の販売目的で保有する棚卸資産について、収益性の低下による簿価切下額(前期に計上した簿価切下額を戻し入れる場合には、当該戻入額相殺後の額)は売上原価とするが、棚卸資産の製造に関し不可避的に発生すると認められるときには製造原価として処理する。また、収益性の低下に基づく簿価切下額が、臨時の事象に起因し、かつ、多額であるときには、特別損失に計上する。臨時の事象とは、例えば次のような事象をいう。なお、この場合には、洗替え法を適用していても(第14項参照)、当該簿価切下額の戻入れを行ってはならない。
(1)重要な事業部門の廃止
(2)災害損失の発生

表示に関する規定です。
計算でも必須なのできちっと読み込みましょう。
基本は売上原価ですが、臨時、かつ、多額な場合は、特別損失です。

かっこ書の意味は、洗替え法採用時の戻入れと評価損を相殺しろってことですね。
戻入れと評価損の表示区分が異なると利益の最終値が一緒でも段階的な利益が異なってしまいます。


18項(通常の販売目的で保有する棚卸資産に係る損益の注記)B
収益性の低下による簿価切下げ額は、注記するか、独立科目として表示します。
重要性の原則の適用(金額の重要性)はありですね。


19項(トレーディング目的で保有する棚卸資産に係る損益の表示)B
トレーディング目的で保有する棚卸資産に係る損益は、原則として純額で売上高に表示します。
売上高の純額表示は珍しいので、軽めに意識しておきましょう。


20項(適用時期等)D
平成20年4月1日以後開始事業年度からです。
今年の3月決算から強制適用されます。
今年のヤマにあがっている理由です。


21項 C
変更初年度の取扱いです。
棚卸資産に係る損益は、原則として売上原価です。
特別損失として計上するケースは限定的ですが、変更初年度に限っては、期首在庫部分については、特別損失への計上を認めています。
理論ではないかな。
計算もないか。


22項(議決)略


23項(検討の経緯)B
これまでの取扱いの整理です。
むしろ基準を読まなくてもこの程度は説明できるようにしておきましょう。
原則:原価法で、低価法も適用できる。
強制評価減あり。
これまでの出題傾向ではありです。


24項 C
これまでの原価法と低価法の選択適用が継続適用のもとではありながらも認められてきたことと国際的な会計基準との調和の観点からの提言が行われていました。


25項〜26項 略


27項(対象から除外される範囲)C
金融商品会計基準(売買目的有価証券)、研究開発費基準(市場販売目的のソフトウェア)は適用対象外です。
この規定での出題はなし。
ヒネリ部分としてはないとはいえない感じでしょうか。


28項(棚卸資産の範囲)B
棚卸資産の範囲4つです。
連続意見書にも規定があり、また、過去における出題(それぞれに該当する具体例の指摘)もあります。
(1)直接的販売目的(商品、製品)
(2)あとちょっとで販売目的(仕掛品、半製品)
(3)販売のための製造目的(原材料、工場消耗品)
(4)販売・管理活動目的(事務用消耗品、包装用資材)


29項 C
事務用消耗品等は国際的な会計基準では棚卸資産に含まれていません。
それほど重要性は高くありませんが、簡単な指摘等に備えましょう。


30項 C
28項の4つ(範囲)は、国際的にはなんだけど(4つめの事務用消耗品等)そのままにしておきますという規定です。


31項 C
棚卸資産には、未成工事支出金等も含まれます。
あとは仕掛品ですね。
ここは規定を知らなくても科目は出せないとまずいです。
ちなみにソフトウェアの仕掛品は、無形固定資産の仮勘定です。


32項(販売用不動産等)C
土地は他の棚卸資産とは異なり、同じものが存在しません。
販売用不動産や開発事業等には、価格の測定に幅があり、客観性に欠ける面があります。
そんな理由で対象から除外することを求める意見もあります。
でも、これまでも強制評価減なんかでは時価を出していたし、対象から除外する理由としては乏しいので他と同じにやってねという感じです。


33項(用語の定義)C
連続意見書では、正味実現可能価額という表現がとられていました。
これと棚卸資産基準における正味売却価額が同じ意味であることの確認です。
けど、概念フレームワークは正味実現可能価額なんだよな。


34項 C
売価は典型的には、市場での売却価額をいいます。
それ以外にもその企業だけが売手となるようなケースも含みます。
基本的には、棚卸資産であって正味売却価額がない資産はないってことでしょう。


35項(これまでの扱い)A
これまでの会計処理の概要です。
出題傾向からはありです。
これまでの原価法の考え方は適正な期間損益計算を行う見地からのものです。
あくまでも当期の実現収益とこれに対応する棚卸資産原価との差し引きで損益計算を行う。
当期の損益は、時価変動等でゆがめられてはならないという考え方です。
低価法はあくまでも、原価法の例外的な方法にすぎません。
その根拠は、保守主義に求められます。


36項(棚卸資産の簿価切下げの考え方)AA
……収益性が低下した場合における簿価切下げは、取得原価基準の下で回収可能性を反映させるように、過大な帳簿価額を減額し、将来に損失を繰り延べないために行われる会計処理である。……

結論の背景部分の中心的な規定です。
とても重要性は高いです。

取得原価(基準)の考え方とそれに基づく棚卸資産の簿価切下げの考え方はしっかりと自分の言葉でもかけるようにしておきましょう。

これまでの取得原価基準の考え方は原価をあくまでも名目上の原価と考えていました。
買った値段が原価、そんな理解です。
しかし、取得原価の意味を、将来の収益を生み出すのに有用な原価を意味するとの考えもあります。
この考えのもとでは単なる「原価」ではなく、むしろ「回収可能な原価」を意味することになります。
原価のうちの「回収可能」な部分を示すのが取得原価基準とみるわけです。

このような考え方のもとで収益性の低下を織り込んだ処理は、金融商品会計基準や減損会計基準においても行われています。
棚卸資産についても収益(→売上)性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合には、帳簿価額を切下げる処理が考えられます。
収益性が低下した場合の簿価切下げは、取得原価基準の下で回収可能性を反映させるように、過大な帳簿価額を減額し、将来に損失を繰り延べないために行われる会計処理です。

「回収可能原価」が棚卸資産基準のもとにおける「原価」の正体です。
そのことを「取得原価基準」との関連において説明できるようにするとともに、棚卸資産基準の評価の本質をしっかりとおさえましょう。


37項 AA
それぞれの資産の会計処理は、基本的に、投資の性質に対応して定められていると考えられることから、収益性の低下の有無についても、投資が回収される形態に応じて判断することが考えられる。棚卸資産の場合には、固定資産のように使用を通じて、また、債権のように契約を通じて投下資金の回収を図ることは想定されておらず、通常、販売によってのみ資金の回収を図る点に特徴がある。このような投資の回収形態の特徴を踏まえると、評価時点における資金回収額を示す棚卸資産の正味売却価額が、その帳簿価額を下回っているときには、収益性が低下していると考え、帳簿価額の切下げを行うことが適当である。

36項とともに重要規定です。
投資の態様に応じた資産の評価を考えておきましょう。

そもそもは損益計算の見方がスタートです。
100円突っ込んで、120円になってかえってきた。
100円投資して、120円を回収した。
100円の商品を買って、120円で販売し、代金は現金で受け取った。
損益計算を企業の投資額とその回収額との差し引き計算とみる考え方が根底にあります。
といってもそれほど特殊な見方ではなく、100円で買った商品を(投資)、120円で売って現金を受け取った(回収)。
回収額が投資額を超える部分が利益です。
投資額を超えて回収した部分といっても同じです。
そんな利益計算を念頭におきましょう。

様々な資産の会計処理は投資の性質に対応しています。
収益性の低下を考える場合も投資の回収形態に応じて判断することが考えられます。
固定資産は使用を通じて資金を回収します。
売掛金等の債権は契約に従って返済を受けることで回収します。
棚卸資産は、販売によってのみ資金回収が行われます。
棚卸資産の資金回収額を示したものが正味売却価額です。
この正味売却価額が簿価を下回っているときに収益性が低下していると考えて帳簿価額の切下げを行う訳です。


38項(品質低下または陳腐化に起因する簿価切下げとそれ以外に起因する簿価切下げ)B
収益性の低下要因の話です。
低下要因には、物理的な劣化、経済的な劣化、市場の需給変化があります。
物理的な劣化は、日焼けによる変色等で、これまで品質低下評価損で対応していました。
経済的な劣化は、陳腐化(流行おくれ)で、これまで陳腐化評価損で対応していました。
市場の需給変化が低価法評価損で対応していた部分です。

物理的な劣化→品質低下評価損
経済的な劣化→陳腐化評価損
市場の需給変化→低価法評価損

前二者と後者ではやや異なります。
前二者(品質低下・陳腐化品)がいわばちょっと欠陥品であるのに対して、後者は棚卸資産自体は正常です。
この違いが売価の回復可能性に影響します。
いったん日焼けした棚卸資産の色はもとに戻りません。
もちろん売価の回復も見込めません。
これに対して、市場の需給変化から売価が変化したものについては、売価がもとに戻る可能性があります。

物理的な劣化→品質低下評価損→回復しない
経済的な劣化→陳腐化評価損 →回復しない
市場の需給変化→低価法評価損→回復するかも

これが洗替え法と切放し法の選択に影響します。
過去の傾向からも今年はありでしょう。


39項 B
これまでは会計処理も品質低下・陳腐化と需給変化とでは異なりました。
しかし、いずれも正味売却価額の下落によって収益性が低下している事実は変わりません。
会計処理を区別する必要もないというのが基準の立場です。
また、これらの要因を区別することが難しい面もあります。
そこで基準では、これらを収益性の低下という観点からは相違がないものとして取り扱っています。


40項(正味売却価額の考え方)B
37項の再掲に近いです。
棚卸資産の場合には、販売により投下資金の回収を図るため、収益性が低下しているとみて、帳簿価額を正味売却価額まで切下げることが、他の会計基準との整合的です。


41項 AA
棚卸資産への投資は、将来販売時の売価を想定して行われ、その期待が事実となり、成果として確定した段階において、投資額は売上原価に配分される。このように最終的な投資の成果の確定は将来の販売時点であることから、収益性の低下に基づく簿価切下げの判断に際しても、期末において見込まれる将来販売時点の売価に基づく正味売却価額によることが適当と考えられる。

期末の正味売却価額を採用する理由です。
リスクからの解放を念頭においた規定で重要性は高いです。

投資のリスクは、投資の不確定性を意味します。
リスクからの解放は投資の不確定性からの解放、つまりは、確定です。
概念フレームワークでは、リスクからの解放を「投資に応じて期待された成果が事実として確定すること」をいうとしています。
投資のリスクから解放された段階で、投資の回収額が収益に計上され、投資額が費用に計上されることになります。

棚卸資産への投資は、将来販売時の売価を想定して行われます。
その期待が事実となり、成果として確定した段階、つまりは販売段階で投資額は売上原価に配分されます。
このように最終的な投資の成果は将来の販売時点です。
収益性の低下に基づく簿価切下げの判断に際しても、期末において見込まれる将来販売時点の売価に基づく正味売却価額によることが適当ということになります。
とても美しい規定だと思います。


42項 B
期末の正味売却価額の意味です。
実際の販売は期末よりも先です。
ですので将来販売時点での売価を意味することもあるでしょう。
契約によって売価が決まっている場合やそのものに売価がない仕掛品なんかも将来の見込みで考える必要があります。
もっともこれらの見込みは難しい場合も多いですので、期末前後の販売実績をとる場合もあります。
つまりは、期末の正味売却価額といっても、いくつかの意味が考えられます。
(1)期末の正味売却価額
(2)将来の販売時点での正味売却価額(期末前後の販売実績に基づく価額)
これらを含んだ上での「期末における正味売却価額」なんですね。


43項 B
期末という一定時点を想定してしまうとある突発的な要因により、異常な水準になっていることも考えられます。
期末の正味売却価額が不適切である場合は、期末付近の平均的な正味売却価額をとるのが合理的です。


44項(正味売却価額がマイナスの場合)B
正味売却価額は、売価−追加コストですので、追加コストが売価を超える場合は、正味売却価額がマイナスになります。
棚卸資産の評価をマイナスにすることはできませんので、そのマイナス部分は、注解18(引当金)の問題として対処することになります。


45項(期末時点の正味売却価額の下落が収益性の低下と結びつかない場合)B
棚卸資産は、販売によって資金を回収します。
販売そのものは将来時点で行われますので、正味売却価額も厳密には「将来販売時点」の正味売却価額を意味しています。
したがって、期末における正味売却価額が帳簿価額より下落していても、期末に見込まれる将来の正味売却価額が帳簿価額より下落していなければ、収益性の低下には結びつかず、簿価切下げを行う必要はありません。
しかし、私たちの生活実感からいっても、売価は徐々に下げるケースが多く、期末の正味売却価額が下落している場合の多くは、収益性の低下に結びつくといってよいでしょう。


46項 B
45項とは逆に、期末の正味売却価額が帳簿価額を下回っていなくても、将来の正味売却価額が帳簿価額よりも下回っている場合には、収益性の低下を反映するように帳簿価額を切下げる必要があります。


47項(販売活動及び一般管理活動で保有する棚卸資産の簿価切下げ)B
事務用消耗品等は、販売により資金を回収する資産ではありません。
正味売却価額の下落が収益性の低下に結びつく訳ではありません。
もっとも棚卸資産価格の下落が物理的ないしは経済的な劣化に起因している場合には、収益性の低下に準じて簿価の切下げを行う必要があります。


48項(正味売却価額の見積り)C
正味売却価額を常に見積もる必要があるのかについてです。
棚卸資産の正味売却価額は、市場価格か、市場価格がなければ合理的に算定することになります。
棚卸資産の市場価格が存在しないことも少なくないことから、収益性が低下していないことが明らかである場合には、正味売却価額を見積もる必要はありません。


49項 C
滞留在庫品等の取扱いです。
期末前後の販売実績を含めて正味売却価額を把握することが難しい場合があります。
そんなケースでは陳腐化が生じている場合が多く、滞留在庫となっている棚卸資産や処分待ちの棚卸資産については、帳簿価額を処分見込価額まで引き下げる等の処理が認められます。


50項 B
再調達原価を採用することができる場合です。
原材料等の購入品については、売価を把握する必要性に乏しく、通常は再調達原価の方が把握しやすいでしょう。
再調達原価が把握しやすく、再調達原価が正味売却価額に歩調を合わせて動く場合には、再調達原価を採用することができます。
継続適用が要件です。
購入時の付随費用は重要性等を考慮して含めないことができます。


51項 C
複数市場に参加し得る場合です。
(1)直接販売と代理店を通じた間接販売
(2)正規販売とアウトレット
(3)契約による売価が決まっている場合と契約がない場合


52項 C
複数市場がある場合の売価についてです。
複数の売却市場がある場合には、実際に販売が可能な売価をとります。
棚卸資産をそれぞれの市場向けに区分できないときは、販売市場比率に基づいた加重平均売価によります。


53項(収益性の判断及び簿価切下げの単位)C
棚卸資産に関する投資の成果は通常は、個別品目ごとに確定するから、収益性の低下を判断し、簿価切下げを行う単位も個別品目単位が原則です。
しかし、次のような場合には、複数品目をひとくくりとして扱うことも認められます。
(1)補完的な関係にある複数商品
(2)同一の製品に使われる材料、仕掛品、製品を一グループとした扱う場合


54項(売価還元法を採用している場合)B
売価還元平均原価法を採用している場合には、正味売却価額が帳簿価額よりも下落している場合には、正味売却価額で評価します。


55項(売価還元低価法)C
売価還元低価法を採用している場合には、これまでの実務上の取扱いなどを考慮して、値下額等が売価合計に適切に反映されている場合には、収益性の低下に基づく簿価切下額を反映したものとみなされます。


56項(洗替え法と切放し法)B
洗替え法と切放し法との比較が続きます。
簿価切下額の戻入れを行う洗替え法の方が、正味売却価額の回復という事実を反映するため収益性の低下に着目した簿価切下げの考え方と整合的であるという考え方があります。

棚卸資産にかかる損益計算の面だけを考えると洗替え法の方が合理的といってよいかもしれません。
例えば、次のケースで考えてみましょう。
第1期 100円で取得 期末時価90円
第2期 在庫
第3期 時価が反騰し、120円で販売

第3期の損益は、洗替え法では20円、切放し法では30円と計算されます。
20円という金額の説明は簡単です。
100円で買った商品を120円で売ったから利益は20円です。
でも、30円の説明は大変です。
20円足す前に切下げた分10円です。
時価が反騰した場合には、商品の販売益を算出するという面からすると洗替え法の方が合理的なことがわかります。


57項 B
いったん切下げた帳簿価額を戻入れるのは適切ではないという考えがあります。
この場合には、間接処理(評価性引当金)と洗替え法が、直接処理と切放し法が整合的です。


58項 B
収益性の低下要因が物理的・経済的な劣化である場合には、売価の反騰は考えにくく、切放し法、それ以外では洗替え法が適切との指摘もあります。
洗替え法を採用しても、正味売却価額の回復がなければ、切放し法と結果は変わらないため、要因ごとの選択も認められます。
実務的には、どちらが簡便かは一概にはいえないので、いずれに方法も適用可能とし、継続適用が要件とされています。


59項 B
複数の会計処理を認めるのは適当ではないとう指摘もあります。
しかし、正味売却価額が回復するケースは多くなく、また、正味売却価額が回復している場合には、通常は売却され、在庫としては残らないと見込まれることから、両方法を選択させても結果は大きく異なりません。


60項(トレーディング目的で保有する棚卸資産の評価基準)A
トレーディング目的で保有する棚卸資産については、投資者にとっての有用な情報は棚卸資産の期末時点の市場価格に求められます。
したがって、市場価格に基づく価額をもって貸借対照表価額とします。
前提は、活発な取引が行われるよう整備された、購買市場と販売市場とが区別されていない市場の存在です。
市場価格の変動にあたる評価差額は企業にとっての投資活動の成果であることから、評価差額は当期の損益として処理します。

評価(市場価格→投資者に有用)、そして評価差額(当期の損益→投資活動の成果)と区別してしっかりとおさえましょう。


61項 C
トレーディング目的の棚卸資産に係る会計処理は、売買目的有価証券の会計処理と同様であり、具体的な適用は金融商品会計基準に準じます。


62項(通常の販売目的で保有する棚卸資産に係る表示)A
企業が通常の販売目的で保有する棚卸資産について、収益性が低下した場合の簿価切下額は、販売活動を行う上で不可避的に発生したものであるため、売上高に対応する売上原価として取扱います。
ただし、製造に関連して不可避的に発生すると認められるものについては、製造原価とします。
重要性が乏しいときは売上原価に一括計上できます。

ここは取扱いの理由(販売活動を行う上で不可避)をしっかりおさえておきましょう。


63項 B
簿価切下げが販売促進に起因する場合も販売費として表示することは濫用をまねき適切ではない。
棚卸資産を見本品として使用した場合の他勘定振替までも否定する訳ではない。


64項 B
収益性の低下に基づく簿価切下げを行う場合には、従来の強制評価減が計上される余地はなく、著しい時価下落を理由に営業外費用・特別損失に計上することはできません。


65項 B
洗替え法を採用する企業は、前期の簿価切下額の戻入と当期の簿価切下額の損益計上区分とが異なる場合には、両者を同じ区分に計上します。


66項(通常の販売目的で保有する棚卸資産に係る注記)C
収益性の低下に基づく簿価切下げの注記または独立掲記が必要です。


67項 C
簿価切下額のうち期首棚卸資産に係る部分については、前期損益修正の意味があるため、特別損失処理を適用初年度の処理として認めています。
これはなしでしょう。

68項 C
早期適用時の留意点です。
(1)一部の早期適用はみとめない
(2)連結、個別の両方に同時適用すること
(3)受入準備が整った段階から適用できる
これはいいかな。