棚卸資産会計基準、読んでますか?

今回は洗い替え法と切放し法の話です。
棚卸資産の評価を切下げた翌期の処理には、洗い替え法と切放し法があります。

洗い替え法はいったん前期末に計上された損失を戻し入れる方法で、切放し法ではそのままです。

洗い替え法では帳簿価額が原価に戻りますが、切放し法では正味売却価額のままです。

その後も棚卸資産が未販売で残っていると、翌期にまた評価の問題が生じますが、このときに金額の違いがあらわれます。


(1)判定のハードル

固定資産の減損処理は、ある程度の損失の発生の可能性が高い場合に行われました。

減損の兆候があり、かつ、判定のハードル(割引前のCF<帳簿価額)にかかったときに減損損失を把握します。

このような減損の認識の考え方は「蓋然性基準」などとよばれたりします。

損失を把握するのに可能性の高さ(蓋然性)を求める考え方です。

棚卸資産の評価で、このような考え方をとりません。

固定資産の減損における判定がない感じです。

認識の基準=測定の基準といえるでしょう。

このような考え方は「経済性基準」とよばれたりします。

評価に何ら判定を伴わないので、正味売却価額の回復も反映する洗い替え法と整合的といわれます。

一方で、損失を将来に繰延べないために行われる点では固定資産の減損と同じですから、固定資産の減損と同様に洗い替え法は適切ではないという考え方もあります。


(2)間接控除か、直接控除か

棚卸資産の評価切下げの際の会計処理には、評価勘定を用いる方法と直接控除する方法があります。

評価勘定(引当金)→洗い替え法

直接控除→切放し法


(3)減価原因

物理的劣化・経済的劣化→切放し法(売価はもう戻らない)

その他の要因(市況の変化)→洗い替え法(売価が戻る可能性がある)

区別できれば要因ごとに選択を認める。


このようにいろんな要素が絡み合っているので、基本的には、棚卸資産の種類ごとに両方法の選択を認めることとしています。

そして減価要因を区別できる場合には、要因ごとに選択できることとされます(この場合は継続適用が条件)。


そうだ、会計基準を読もう!!(二つの処理方法を意識しておきましょう)



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