理論は覚えるもの。

そう思ってしまうと覚えることから逃げられないのかもしれません。

まず、発想を改めること。

それがスタートです。
理論が覚えられない。

そうぼやく方ほど模範答案を一字一句おぼえようとしていないでしょうか?

果たしてそれでよいのでしょうか?

ちょっと道順を覚える場合を例に考えてみましょう。



駅からはじめていく目的地までの道を覚える。

そんなとき皆さんはどう覚えていますか?

地図を持っていくのが一番確実ですが、試験場に持ち込みはできません。

別の方法を考えるしかないでしょう。

道を覚えなければいけないからといって、いちいちすべての道沿いにある建物を覚えたりはしないでしょう。

ましてや何歩歩いたら右なんてことをいちいち覚えるなどということはしていないと思います。

たぶんもっとおおまかです。


(1)だいたいどっち

(2)直線を曲がる部分の目印を見つけておく


そんな程度のざっくりとした情報をインプットしようとするのではないでしょうか。


(1)方向性

もっとも大事なのは方向性です。

駅のどっち側?

方向はどっち?

まずはそれが大事です。

いきなり反対側に進んでしまっては話になりません。

おそらくはおおまかに「あっち」というメドをつけているハズです。


(2)変化の目印をつける

目標までが一本道であればそれほど苦労はしません。

どこかで曲がらなければならない。

その場所が問題です。

逆にいえばそこをおさえてしまえばいいんです。

角のコンビニを右ね。

2つ目の信号を左。

そんな極めてラフな、でもしっかりした情報で目的地にはたどりつけるハズです。



自分のたどる道を道なりの建物も含めて覚え込んでしまう。

そんな人はいないハズです。

日常生活では模範答案を「丸覚え」するようなことはしていないのではないでしょうか。

日常でやっていることとまるで違う「丸覚え」がうまくいかないのはむしろ自然なのです。

ではどんな感じで理論学習をすすめていけばよいのでしょうか。

ちょっとファイナンス・リースの例で考えてみましょう。



(1)方向性

まずは重要句を一言でいえることをめざしましょう。

ファイナンス・リースの定義はリース基準の5項です。

ファイナンス・リース取引は、どんな取引かをざっくり確認します。

テキストやこのブログなどを読んでいくと、ファイナンスリース取引は、法的には賃貸借ですが、その性格が売買に近い取引とわかります。

性格が売買なので売買処理も行われます。

ただ、その実質が売買とだけいっても具体的にどんな取引がファイナンス・リース取引に該当するかはわかりません。

そこで基準では、具体的な要件をあげることでファイナンス・リース取引を定義しているのです。

その要件が、解約不能とコスト負担の2点です。

解約もできなくて、コストも負担しなければならないのであれば、それは売買と同じではないか。


解約不能+コスト負担→ファイナンス・リース


5項をよく読んでいくと、コスト負担の前に文章があります。

経済的利益享受+コスト負担となっています。

自分でコストを負担するのは、そもそも自分で利益を受けるからでしょう。


解約不能 + 経済的利益享受・コスト負担 → ファイナンス・リース取引


(2)目印をつける

重要句が確認できたら、重要句をきちんとつなげられるようにしておきましょう。

ここで大事なのはつながった文章を覚えることではなく、つなげられるようにすることです。

この違いがたぶん記憶の維持には重要です。


ファイナンス・リース取引の要件は二つです。

解約不能であり、維持コストを負担する取引。

ちょっと注意したいのが経済的利益享受のところです。

ここは筋道としては経済的利益を享受するから、コストを負担する訳ですが、基準では両者を「かつ」でつないでいます。

この「かつ」には両方の意味がありますので、この「かつ」は使いたいです。


ファイナンス・リース取引→「解約不能」+「経済的利益享受」かつ「維持コスト負担」 


ここから文章をおこしてみれば、

ファイナンス・リース取引は、解約不能なリース取引で、借手がリース物件からの経済的利益を享受し、かつ、維持コストを負担する取引をいう。

こんな感じでしょうか。

この文章をまた一字一句覚えるということでは意味がありません。

それでは後で使える(応用できる)理論にはなりませんし、記憶の残りも実はそれほど多くないハズです。

大事なのはすごく重要なことの意味をとりながら簡単な文章を作文できるようにしておくことです。

決して誰かの作文を再現できるようにすることではありません。

はじめは時間もかかるかもしれませんが、直前のヤマ当てもかねるつもりでぜひ真剣に取組んでみてください。



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