簿記は仕訳にはじまって、仕訳に終わるといわれます。

ほとんどの問題は、仕訳がきれればできるハズ。

仕訳を経由した学習の必要性を強調しすぎることはありません。

しかし、正直、仕訳が弱い(でもある程度の点数はとれる)という方も少なくありません。

この場合、直前模試等の終盤で失速してしまう可能性が高いようです。

もしかすると考えなければいけないのは、仕訳を経由しないでもある程度いけてしまう点なのかもしれません。

なぜ仕訳を経由しないである程度まできてしまうのかを考えてみました。
簿記の記録は、仕訳→元帳→試算表という順で行われます。

実際の出題では、資料は試算表という形で与えられることが多いです。

決算整理型であれば、決算整理前の試算表に決算整理仕訳を加味すれば、決算整理後の試算表はできるハズです。

貸借対照表や損益計算書は、決算整理後試算表の延長にすぎません。

ふだんからできるだけ仕訳という武器を磨いておく。

そしてそれをできるだけ活用するのが「簿記のコツ」のハズです。



しかし、見る限り、なかなかその姿勢を貫くのは難しいようです。

理由はいくつかあるでしょうが、その一つに解法の進化があるかもしれません。

ある種の図を書いたり、特定の手順で計算することで特定の問題がすばやく解ける。

それは確かによいことなのかもしれません。

しかし、ある特定の問題を解けるようになっても、簿記の基礎的な力、つまり、仕訳の力が向上していることにはなりません。

特定の解法が通じないときには、簿記の力(仕訳の力)に頼らざるを得ませんが、それが育まれにくい素地をつくっている可能性が高いです。

そして、特定の解法が通じないのが、本試験であったりする訳です。



私は、上記のような理由で仕訳や勘定記入を利用しない解法をあまり信用していません。

もっとも理解の段階で図等を用いるのは大いに結構です。

これは使うべきでしょう。

しかし、いつまでもそれに頼りすぎるのはよくないと思います。

ただ、例外がいくつかあります。



一つは、時間(期間)の関係を整理するときです。

時間の関係は、きちんと時点をとった方がよいでしょう。

覚えられるものでもありませんし。



もう一つは、図等が極めてシンプルな場合です。

図の意味等がきちんとわかってその図を利用する分には、全く問題ありません。

シンプルな図等は応用価値も高いでしょう。

図等の解答への利用にあまりいい顔をしないのは、図の意味もわかってないのにパターン化することで問題を解けるようにだけしていると急激にツケが回ってきて、それを拭うのが難しくなるからです。

この対応は本当に難しいです。

そんなときは最初からやり直す以外にないのですが、本人がそのことを自覚していない場合が多いからです。


増えた、減ったといったそんな関係を図示するのは多いに結構です。

仕入勘定(ボックス図)や割賦売掛金の図などです。

これらは基本的には、増えた減ったをただ図にして、若干の工夫を加えたシンプルなものです。

むしろ勘定記入の応用に近いでしょう。

これらは図そのものの理解が進むことで内容の理解も伴うようです。

それは図がシンプルであるからでしょう。

シンプルな図等は大いに活用すべきだと思います。



という訳で特定の図や解法に頼りすぎていると後で手痛いしっぺ返しをくらう可能性が高いです。

この記事を読んで自分のことか? と思われた方は、少しずつでもかまいませんから、仕訳を重視した学習に切り換えるようにしていきましょう。



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