保守主義の原則の具体的な適用例としては、次のようなものがあります。
(1)各種引当金の計上
(2)割賦販売における回収基準(回収期限到来基準)による収益の認識
(3)減価償却方法としての定額法に対する定率法
従来あげられることの多かった低価主義は、その他有価証券の部分純資産直入法に姿を代えて生きているといえるかもしれません。
後入先出法は棚卸資産基準の改正により廃止されています。

(まとめ)
保守主義の適用例には、引当金の計上、回収(期限到来)基準、定率法等がある。
(保守主義の行方)
本文の保守主義の適用例を見ても、例えば減価償却費の定額法と定率法とでは、定率法の方が保守主義的です。
保守主義を貫くなら、定率法がよいことになります。
しかし、定額法も認められています。

保守主義が絶対的であるならそもそも複数の利益が算出される方法が同時に認められる必要はありません。
つまり、利益の異なる処理方法は、不要となるハズです。
しかし、現実的には、複数の会計処理方法が認められています。
このような現象が生ずるのは、企業会計の中に異なる視点が混在しているからでしょう。
保守主義は、あくまでも極めて実践的、実務的な要請であり、それは適正な損益計算を行うといった視点とはズレがあるのです。
理論(適正な損益計算)と政策(保守主義)とが企業会計原則上も混在している点には留意する必要があります。

大きな流れとしては保守主義の考え方は縮小しつつあります。
かつて有価証券や棚卸資産は、原価と時価を比較していずれか低い金額を評価額としていました。
有価証券では、その他有価証券の部分純資産直入法にその名残りをみることができます。
棚卸資産の評価は、現在では原価主義の適用形態として原価と時価(正味売却価額)の低い金額をとることとされています。
それは低価主義の採用ではなく、原価主義、原価基準の適用だと考えられています。
また、従来は認められていた後入先出法は廃止されました。
純粋な理論としては異質であり、縮小傾向にありながらもなお語らざるを得ない点に実践的要求としての保守主義の奥深さがあるかもしれません。