【質問】その他有価証券に税効果会計が適用されるのはなぜですか。

【回答】
もともと税効果会計の方法には、次の２つがあります。

（１）資産負債法　⇒　税務と会計の資産負債の違いに注目した方法

（２）繰延法　　　⇒　税務と会計の損益の違いに注目した方法

ほとんどの場合はいずれの考え方をとっても結論は変わりません。

しかし、その他有価証券の評価のように資産・負債に違いがあって、損益面が同じだと取扱いの差が出ます。


繰延法は、損益の違いに着目した方法です。

税務でも、会計でもその他有価証券の評価で損益は生じないので、繰延法をとった場合に税効果会計の適用はありません。


資産負債法は、資産負債の違いに着目した方法です。

資産負債法によれば、会計では時価評価ですが、税務では原価評価なので違いがあり、税効果会計の適用があります。

わが国の会計基準は、資産負債法をとっています。

ですので、税効果会計の適用ありになります。


より具体的な会計処理で少し考えてみましょう。


（購　　入）１，０００円
（期末時価）１，１００円
（実効税率）４０％

購入：投資有価証券１，０００　現　　金１，０００
期末：投資有価証券　　１００　評価差額　　　６０
　　　　　　　　　　　　　　　繰延税金負債　４０

この期末の仕訳は、次の処理ではいけないのでしょうか？

期末：投資有価証券１００　評価差額１００

仮に、評価差額が全額損益になるとします。

結果として純資産（剰余金）が増えるのは、税金の影響部分を除いた６０ですので、結論的には、評価差額６０、繰延税金負債４０でないとおかしいです。


会計処理を考えてみましょう。

「仮に」評価益が益金になるとして、その税金部分の処理と決算振替も考えます。

購入：投資有価証券１，０００　現　金　１，０００
期末：投資有価証券　　１００　評価益　　　１００
期末：法人税等　　　　　４０　未払法人税等　４０
期末：評価益　　　　　１００　損　益　　　１００
期末：損　　益　　　　　４０　法人税等　　　４０
期末：損　　益　　　　　６０　繰越利益剰余金６０

（損益計算書）
評価益　　　　１００
法人税等　　　　４０
（貸借対照表）
投資有価証券　１，１００
繰越利益剰余金　　　６０

トータルしてみると損益計算書の当期純利益に影響しているのは、評価益１００−法人税等４０の６０です。

貸借対照表の資産は、有価証券が１，０００→１，１００です。

純資産は、繰越利益剰余金が６０増えます。


「仮に」評価益が益金にならないとしても税効果会計の適用を考えれば、結論は大きく変わりません。

購入：投資有価証券１，０００　現　　金１，０００
期末：投資有価証券　　１００　評価益　　　１００
期末：法人税等調整額　　４０　繰延税金負債　４０
期末：評価益　　　　　１００　損　　益　　１００
期末：損　　益　　　　　４０　法人税等調整額４０
期末：損　　益　　　　　６０　繰越利益剰余金６０

（損益計算書）
評価益１００
法人税等調整額（借方）４０
（貸借対照表）
投資有価証券１，１００
繰越利益剰余金６０


このように考えると仮に評価差額が損益（収益）になるとしても、その収益が益金になるならないにかかわらず法人税等も考えれば増える純資産（繰越利益剰余金）は１００ではなく、６０になります。

その他有価証券に税効果を適用した場合にも増える純資産（その他有価証券評価差額金）も１００ではなく、税金の影響分も考慮した６０でよいことになります。