配当可能額があるとする記述の多くが陥っているであろう誤り。

それが、「分配可能額」と「剰余金の額」との混同ではないでしょうか。

混同がいいすぎなら違いを明確に意識していない。

そういっていいでしょう。

そのことが結果としての誤りにつながっているようです。

これもやはり旧商法時代の考え方を引きずったものでしょう。

旧商法時代の配当可能利益は、純資産(資産−負債)から分配してはいけないものを控除して算出しました。

期末時点の利益剰余金の変形がそのまま配当可能利益だったのです。

会社法では、効力発生日の「分配可能額」を配当等の限度にしています。

分配可能額は、期末の剰余金の額をスタートに計算します。

しかし、効力発生日の「剰余金の額」を計算する訳ではなく、あくまでも効力発生日の「分配可能額」を計算するにすぎません。

ただのハードルとしての金額です。

この意識が薄いと混乱します(私がそうでした)。



これに対して剰余金の額は、必ずしも会社法固有の考え方というより会計処理の結果導かれた金額という側面があります。

資本剰余金と利益剰余金をくくった「剰余金」は、会社法の考え方です。

でも、今、いくらの資本剰余金があるのか。

いくらの利益剰余金があるのか。

これは帳簿の記録がないとわかりません。

剰余金が会計処理を何らかの意味で元にしていることは間違いありません。

しかし、分配可能額は違います。

分配可能額は、剰余金の額をスタートにして計算されたただの「金額」にすぎません。

剰余金の額を基礎に計算はしています。

しかし、そこに一定の加工を行って計算されたただの金額です。

分配可能額は、会計記録とリンクしていません。

剰余金の額とは別に決められている点に注意する必要があります。



分配可能額のマイナスがただちに剰余金のマイナスを意味する訳ではありません。

分配可能額はマイナスだけど、剰余金はプラスの場合もあります。

臨時計算書類を作成して、期中の損益を分配可能額に反映させることができます。

この場合は、分配可能額は増えるけど、剰余金の額は増えません。

分配可能額と剰余金の額は、別ものです。

分配可能額と剰余金の額を明確に区別しないとおかしな議論につながる可能性がある。

そのおかしな話の一つが分配可能額とは区別された配当可能額の話ではないでしょうか。



剰余金の配当を行った結果、準備金を計上し、剰余金を減らす。

しかし、減るのは効力発生日の分配可能額ではなく、剰余金です。

次回以後の配当の際には、分配可能額の控除項目になるか、スタートの剰余金の額が減ります。

準備金の計上は、「次の」分配可能額の計算に影響します。

影響するのは、あくまでも「次の」分配可能額にすぎないのです。