モン吉くんと学ぶ商品勘定の処理（４）

（決算整理の意味）
講　師：「シークー・クーシー（仕入／繰越商品、繰越商品／仕入）の２つめの仕訳が期末の原価を引いていることになるよね？」

モン吉：「期末の原価を引く？」

講　師：「仕訳をちょっと並べてみようか。」


仕入：（借）仕　　入２００　（貸）現　　金２００

売上：（借）現　　金１００　（貸）売　　上１００

決算：（借）繰越商品１００　（貸）仕　　入１００


講　師：「この仕訳の仕入の金額を追いかけると売上原価が出るよね。」

モン吉：「最初の借方・仕入２００−決算の貸方・仕入１００ですね。」

講　師：「そうだね。これがシークー・クーシーの２つめのクーシーの仕訳の意味さ。」

モン吉：「貸方・仕入が売れ残り分の原価を引くって意味なんですね。」

講　師：「仕訳を忠実にうつしたのが元帳だから仕入勘定でちょうど同じように売上原価が計算されていることになるね。」

モン吉：「仕入勘定で売上原価？」

講　師：「そう、仕入勘定上で売上原価を計算するための仕訳がクーシーさ。」

モン吉：「借方の繰越商品は？」

講　師：「売れ残り分は資産なんで借方の繰越商品で万事うまくいくって訳さ。」

モン吉：「なんか不思議です。」

講　師：「つづけて次の期も考えてみよう。」


（条件）原価：１００円　売価：１２０円

（当期）期首：なし　仕入：２本　売上：１本　期末：１本

（翌期）期首：在庫１本　仕入：なし　売上：１本　期末：なし


モン吉：「売れ残っていたジュース１本が売れたんですね。」

講　師：「そうだね。これも仕訳を追いかけてみようか。」


仕入：なし

売上：（借）現　　金１２０　（貸）売　　上１２０

決算：（借）仕　　入１００　（貸）繰越商品１００


講　師：「さっきよりわかりやすいかな。」

モン吉：「今度は期中に仕入が登場しませんね。」

講　師：「そうだね。だからって売上の全部が利益じゃおかしいだろ？」

モン吉：「売れ残っていた商品の原価を売上原価に足す感じが決算整理仕訳なんですね。」

講　師：「おっ。すごいじゃないかモン吉くん。」

モン吉：「なんか決算整理仕訳の意味がちょっとわかってきました。」

講　師：「借方の仕入は、仕入勘定で売上原価を出すために期首の在庫を足す感じなんだ。」

モン吉：「貸方の繰越商品で期首の商品がなくなってちょうどよくなるんですね。」

講　師：「そうだね。これがシー・クーの意味だね。」


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Comments

[1. sakurako]

お久しぶりです。
モン吉君、大活躍ですねー
しかも、かなり分かりやすいですね。

因みに会計人コース、年間購読検討中です

[2. 講師]

お久しぶりです。
ええ、モン吉くんは大活躍です。
はい。

会計人コースは、質・量ともにオススメです。

[3. たまごそば]

こんばんは。

今週はゆっくりと思ったのですが
モン吉くんといっしょに
商品勘定をもう一度きちんと考えようと
企業会計原則その他関連基準を
棚卸資産の部分から深く掘り下げています。

試験用の丸暗記的な読み方をやめ、
ゆっくり落ち着いて読むと驚くべき新事実が
たくさん書かれていたので赤面しています。(*^^*)
(←今更気づいたらしい・・反省)

棚卸資産にも減損のような部分があってびっくりしました
モン吉くんのバナナが10円になっちゃったら・・
いたんで捨てちゃったら減耗？
おなかがすいて食べちゃったら・・
なんてことを考えつつ、
ドキドキしながら楽しんで読み進めています。

ずっと気にしていることなので質問します。
売上、仕入はP/L科目ですよね。
返品があった場合、
違う会計期間に売れたもの、
仕入れたものの場合はどうなるのですか?

[4. 講師]

こんばんは。

おっ。基準と一緒に学ぶっていうのは素晴らしいですね。
棚卸資産関連は何故か充実していると思います（充実しすぎで、ここまではいらないだろというところが多いですが）。
特に棚卸資産基準はお気に入りです。
興味を持ちながら読めるといいですよね。

（１）前期に仕入れて、当期に返品。
（２）前期に売上げて、当期に返品。

（１）は、そのままの感じに近いです。

前期期中：仕　　入１００　買掛金１００
前期決算：繰越商品１００　仕　入１００

当期修正：買掛金１００　繰越商品１００

[5. 講師]

（２）が問題ですね。
実務的には、前期損益修正をたてなかったりするかもしれませんが、理論的には、前期の修正だと思います。

前期期中：仕　　入１００　買掛金１００
前期期中：売掛金　１２０　売　上１２０
前期決算：なし

当期修正：繰越商品１００　前期損益修正１００
当期修正：前期損益修正１２０　売掛金１２０

基本的には、逆仕訳に近いですが、売上や仕入のところが前期損益修正になる感じでしょうか（科目を別にする場合もあると思います）。

これは分記法の方がわかりやすいですね。

前期期中：商　　品１００　買掛金１００
前期期中：売掛金　１２０　商　品１００
　　　　　　　　　　　　　商品販売益２０
前期決算：なし

当期修正：商　　品１００　売掛金１２０
　　　　　前期損益修正２０

税理士試験簿記論では直前でふれるかなあという感じのところです。

[6. ことら]

前期損益修正については、ぼんやりとした理解しかなかったのですが、先生の解説を読むと前期損益修正には、前期の会計処理の誤処理の修正として生じるものと、前期の決算日現在に存在していた資産などに当期になって一定の事実が発生したため生じるものがあるということになりますね。

貸倒引当金の引当不足のため、当期に貸し倒れた金額との差額を貸倒損失とするのは、重要性の原則からでしょうか。
本来は過年度修正となりますか。
簿記論ではそんなに厳密に使い分けていないのでしょうけど。

特別損益は、臨時損益と前期損益修正に区分できると思うのですが、減損損失は臨時損失でしょうか。では臨時償却はどちらなんでしょうか。

色々聞いてばかりで申し訳ないです。
財務諸表論勉強していないので、頓珍漢なこといっていたらすみません。

[7. ことら]

昨日のコメントの修正です。

前期損益修正となるものは、前期の誤処理の修正、前期保有資産等（等は負債の場合もあるかと）の当期の事実発生だけでは言い表わせていなかったです。

前期に商品や固定資産を売却した場合は、前期末に資産等がないわけですから、前期以前の取引について値引き等をした場合は、前期以前の取引について値引き等の一定の事実が生じた場合と言わなければならないですね。

前期売上当期返品は消費税法の影響か、前期損益修正になるとはきちんと理解していませんでした。
固定資産の値引きの場合は前期損益修正で処理しているのに、矛盾していました。

どうもありがとうございました。

[8. 講師]

ことらさん、大変、失礼いたしました。
昨日、ちょっと手違いがあって、コメントを削除してしまいました。
同一内容のものをだいぶたってからコピーで復元したのですが、今度は自分でコメントできなくなってました。
びっくりです。
現在は、復旧いたしました。
中途でコメントが消えていて、返信も遅くなってしまってすいませんでした。
以下は、昨日書いたものですが。

ご質問自体を受け付けている訳ですから、簿記会計関連の限定はありますが、質問は大歓迎ですよ。
ただ、それをきちんと整理してお答えできるかとは別問題ではあります。
そしてこのご質問がうまく整理できないご質問だったりするのがちょっと悔しいですが、それは力不足ということでちょっと大目にみてください。

[9. 講師]

いずれも色んな意味でしびれる視点です。
両方とも見積もりが絡む点が難しくしているのかもしれません。
商品を売った→かえってきた
処理はややこしいですが、事実関係ははっきりしています。

これに対して、どれだけ回収できるのか、どれだけ使えるのかは、事後で考えてもそれが見積もりが正しくて状況が変化したのか、見積もりが誤っていたのかの判断は難しいと思います。
そんな点からなかなか理論的にもきちんと整理しにくい（しても有効性が低い）面はあるかもしれません。

貸倒引当金のケースは、基本的には、見積もり誤り（前期損益修正）ということでいいんだと思います。
ただ、期末にはピンピンしていた売掛先に当期になんか悪い事件でも起こって、その影響で倒産→回収不能なんてことがあるとそれは見積もりの誤りとはいえなさそうです。

[10. 講師]

（１）見積もり誤り→前期損益修正
（２）状況の変化　→当期の損失
という関係は一応はあるかもしれません。
実務指針でもこのあたりは踏まえているようです。
ただ、とても明らかなケース以外は、実際には微妙です。
で、簿記論でも全部を貸倒損失として処理するのがほとんどです。

減価償却についても微妙な面があると思います。
さかのぼって修正しないという前提ですと減損損失は臨時損失的です。
臨時償却は前期損益修正的とはいえるかもしれません。

ただ、臨時償却と減損の境界線というか、これはものすごく微妙で、現状の減損損失には、臨時償却部分も入ってしまっています。

いや、これは会計学的にも両方（貸倒引当金と減価償却）ともかなり面白い問題だと思います。
特に減価償却は、今後の試験への影響もあるんで、ちょっと本腰を入れなければと思っていたところです（って、これからかいみたいな）。

[11. 講師]

前期分の売上の当期返品と前期取得固定資産の当期値引。
そういえば、固定資産の値引は取り上げられることが多いと思いますが、売上返品等はそれほどみかけません。
これは多分、売上返品等は前期損益修正にしなくても当期の売上から（不合理ではありますが）引いてしまえばそれほど大きな問題はない。
でも、固定資産の値引は、引くものがないってところあたりかもしれません。

相変わらず、目の付け所がすばらしいですね（少しでも整理がつけばよいのですが）。

[12. ことら]

色々詳しく解説頂き、ありがとうございました。
かなり整理できました。
先日のわたしのコメント、そんな事情があったのですね。
星をつけたのに消えていたので、とても不思議でした。

特別損益の区分として、臨時損益と前期損益修正があると思っていましたが、勘定科目ごとに明確に区分されるものではないということかと思います。

減損損失は過年度修正的な意味で捉えられていることが多いと思いますが、例えば当期新製品が発売されたことにより、所有していた固定資産の耐用年数が短縮されることになった場合は、過年度の償却計算はそれぞれの時点で正しかったと思うので、過年度の修正ではなく当期の損失として把握すれば良いような気がするのですが・・・。

[13. ことら]

減損損失については、先生のおっしゃるように臨時損失的であるけれども、過年度修正の部分も確かに含まれていると思います。
減損損失の正体はというと、損失の認識の仕方が、取得価額を基に費用の適正な期間配分という考えから離れて回収可能価額と簿価の差額から算出される訳ですから、色々な要因に基づく損失がごちゃまぜになって、算出方法の結果となって生じているという感じがします。

貸倒損失についても色々なケースがあるわけですね。
簿記論では貸倒損失として処理するのが一般的ですが、そうすると販売費・一般管理費または営業外費用として表示していることになりますね。

[14. ことら]

もともと営業取引の結果として生じた損失である事に着目して、当期生じた債権だろうが前期以前に生じた債権だろうが一緒の取り扱いと考えれば良いでしょうか。

かなり整理できましたといっておきながら、まだまだでした。

財表勉強していないので、財表ではどんなこと学習するのか気になります。
色々なことが解決するのでしょうか。
財表に合格したのは6・7年ぐらい前ですので、すっかり忘れてしまっています。

[15. ことら]

すみません。間違えました。
12のコメントの減損損失は過年度修正的な意味で・・・というところ、減損損失は臨時償却と書いているつもりで間違えてました。
臨時償却です。
なんのこっちゃ的な話になってました。

[16. 講師]

いや、やっぱりしびれますね（笑）。

貸倒引当金の設定不足を簿記で貸倒損失一本でいっているのは、そこまで区別する実益も小さい、かつ、理論的な整理がきちんとできていないといったあたりが正直なところかもしれません。
そういえば以前は貸倒損失と貸倒引当金繰入を一緒にして貸倒償却とする処理もよく見かけました。
今は分ける処理がほとんどです。
そうした方がよいという流れ（のようなもの）が定着していくと簿記の本なんかもそうなっていく面があるのかもしれません（こう考えると結構、いい加減な気もしますが）。

[17. 講師]

＞Iもともと営業取引の結果として生じた損失である事に着目して、当期生じた債権だろうが前期以前に生じた債権だろうが一緒の取り扱いと考えれば良いでしょうか。

ここは、実務指針あたりを読みますとそう考えているように思います（ただ、見積もり誤りに関しては前期損益修正だと思いますが、それを分けにくいといったあたりでしょうか）。
元本債権が営業か営業外かに注目して、貸倒引当金繰入の区分を考えているあたりは、そんな考えを下敷きにしているのではないかと思います。

耐用年数の変更に関しては、今、議論が熱いようです。
当初の見積もり誤りに関しては残存耐用年数での償却。
状況の変化に関しては当期の損失。
ざっくりとはそんな感じだと思います。

[18. 講師]

こう考えると貸倒損失と減価償却で考えなければいけないことは実は一緒だったんですね。
ビックリしました。
ちょっと明確に意識していませんでしたのでおかげさまで整理が少しつきました。

今、過年度遡及修正に関する論点整理というのが企業会計基準委員会から出ていてこれを読むべきか悩んでいました。
読んだ方がいいに決まってますが、長すぎです。
でも拾い読みするくらいの元気が出てきました。

やや、遅れて試験（財務諸表論）で反映するところではないかと思います。
現状の財務諸表論のテキストや講義ではありまり反映されていないと思います。

[19. ことら]

「こう考えると貸倒損失と減価償却で考えなければいけないことは実は一緒だったんですね。」
なるほど
こう言い切って頂きまして、すっきりしました。
恐れ入りました。

貸倒損失の見積りと耐用年数の見積り、
一見関係のなさそうな貸倒損失と減価償却ですが、見積りを行っていることにより、理論的には過年度遡及修正が発生するという共通性を有していたのですね。
私も驚きでした。

[20. 講師]

なんとなく似ているというのとはっきりと共通性を自覚するのは、たぶん後の他との関連の理解で発揮する威力が違いますね。
私も今回明確に自覚できてよかったです。
いやいや、なんか儲かった気分です。
どうもありがとうございました。