さて、これまでみてきた内容が窺い知れる「解説」の記事を引用しておきましょう。
「……計算規則177条では、剰余金の額について、分配規制の趣旨である、株主と債権者との利害調整という役割に着目しつつ、将来の会計基準等の変更に対しても柔軟に適正な対応(むしろ、会社法としては対応しないという対応)をすることを可能とするため、前記のような、会社が対外的な活動によって上げた利益を源泉とする「その他利益剰余金」と債権者に対して株主に払い戻すことについての承諾を受けているというべき「その他資本剰余金」との合計額をもって算定することとしている。」
「解説」の文章は、会社法446条の規定についてのものです。
会社法では、これまでに設けられていた引当金や繰延資産についての規定を置いていません。
資産や負債の評価にも柔軟な姿勢をみせています。
変革著しい企業会計の制度に応じて個別的な会計処理等の規定を置くことは、もはや困難なのでしょう。
会社法が会計処理から緩やかに手を引いている。
そんな印象を持ちます。
このことはもちろん資本(純資産)についてもいえるでしょう。
会社法上、資本について、重要なのは、資本金、準備金、剰余金というくくりでしょう。
企業会計上は、維持すべき資本と処分可能な利益の区別が重要と説かれます。
会社法では、「その他資本剰余金の配当」と「その他利益剰余金の配当」を「剰余金の配当」と一括しています。
このことからも伺えるように会社法上、重視されているのは、あくまでも「剰余金」というくくりなのです。
そのくくりさえしっかりしていれば、その内訳には、それほど大きな関心を抱いていない。
具体的な会計処理は、会計基準にゆだねる。
それが、会社法のとった道といってよいでしょう。
「解説」110頁に剰余金と分配可能額の関係が説明されています。
やや長くなりますが、引用しておきましょう。
「会社法上の分配可能額の算定に関する規定の構造は、剰余金の額の変動に伴う分配可能額の変動に係る規定と、分配可能額固有の変動事由に係る規定とに分かれている。
そして、剰余金の額に関する会社法446条は、期中の資本取引を含めて、各時点において、剰余金の額、すなわちその他資本剰余金とその他利益剰余金の合計額がどのように変動しているのかということについてのみ規定するものである。したがって、剰余金の額は、会社法の概念というよりも、一定の会計基準等に従って行われる会計処理の結果、決定される概念であるといえる。
他方、分配可能額に関する会社法461条は、分配可能額の算定の基礎となる剰余金の額から、何を減額するのか、またはどのような事態が生じたときに、何を加算しまたは減算するのかという、もっぱら会社法上の政策的な理由により求められる規律についての規定である。
両者が別々に規定されているのは、このような趣旨の違いによる。」
剰余金の額は、その変動が446条に規定されています。
しかし、あくまでも変動が規定されているだけです。
実際のその他利益剰余金やその他資本剰余金がいくらかなのかは多分に会計処理が関連します。
しかし、会社法の大きな関心事は両者の合計額である「剰余金の額」です。
そして分配規制のハードルを規定するのは、ただ会社法のみです。
分配可能額の算定にあたって控除する金額もあくまでも会社法上の規定のみによって規律され得るといってよいでしょう。
分配可能額と剰余金の配当(7)へ
「……計算規則177条では、剰余金の額について、分配規制の趣旨である、株主と債権者との利害調整という役割に着目しつつ、将来の会計基準等の変更に対しても柔軟に適正な対応(むしろ、会社法としては対応しないという対応)をすることを可能とするため、前記のような、会社が対外的な活動によって上げた利益を源泉とする「その他利益剰余金」と債権者に対して株主に払い戻すことについての承諾を受けているというべき「その他資本剰余金」との合計額をもって算定することとしている。」
「解説」の文章は、会社法446条の規定についてのものです。
会社法では、これまでに設けられていた引当金や繰延資産についての規定を置いていません。
資産や負債の評価にも柔軟な姿勢をみせています。
変革著しい企業会計の制度に応じて個別的な会計処理等の規定を置くことは、もはや困難なのでしょう。
会社法が会計処理から緩やかに手を引いている。
そんな印象を持ちます。
このことはもちろん資本(純資産)についてもいえるでしょう。
会社法上、資本について、重要なのは、資本金、準備金、剰余金というくくりでしょう。
企業会計上は、維持すべき資本と処分可能な利益の区別が重要と説かれます。
会社法では、「その他資本剰余金の配当」と「その他利益剰余金の配当」を「剰余金の配当」と一括しています。
このことからも伺えるように会社法上、重視されているのは、あくまでも「剰余金」というくくりなのです。
そのくくりさえしっかりしていれば、その内訳には、それほど大きな関心を抱いていない。
具体的な会計処理は、会計基準にゆだねる。
それが、会社法のとった道といってよいでしょう。
「解説」110頁に剰余金と分配可能額の関係が説明されています。
やや長くなりますが、引用しておきましょう。
「会社法上の分配可能額の算定に関する規定の構造は、剰余金の額の変動に伴う分配可能額の変動に係る規定と、分配可能額固有の変動事由に係る規定とに分かれている。
そして、剰余金の額に関する会社法446条は、期中の資本取引を含めて、各時点において、剰余金の額、すなわちその他資本剰余金とその他利益剰余金の合計額がどのように変動しているのかということについてのみ規定するものである。したがって、剰余金の額は、会社法の概念というよりも、一定の会計基準等に従って行われる会計処理の結果、決定される概念であるといえる。
他方、分配可能額に関する会社法461条は、分配可能額の算定の基礎となる剰余金の額から、何を減額するのか、またはどのような事態が生じたときに、何を加算しまたは減算するのかという、もっぱら会社法上の政策的な理由により求められる規律についての規定である。
両者が別々に規定されているのは、このような趣旨の違いによる。」
剰余金の額は、その変動が446条に規定されています。
しかし、あくまでも変動が規定されているだけです。
実際のその他利益剰余金やその他資本剰余金がいくらかなのかは多分に会計処理が関連します。
しかし、会社法の大きな関心事は両者の合計額である「剰余金の額」です。
そして分配規制のハードルを規定するのは、ただ会社法のみです。
分配可能額の算定にあたって控除する金額もあくまでも会社法上の規定のみによって規律され得るといってよいでしょう。
分配可能額と剰余金の配当(7)へ
このブログにコメントするにはログインが必要です。
さんログアウト
この記事には許可ユーザしかコメントができません。