概念フレームワークは、二つの利益を併記しながらも包括利益より業績指標としての純利益を重視する道を選びました。

そしてこの純利益と資本(株主資本)との関係を極めて重視しています。

資本は増えたけど、利益は増えない。

あるいは、資本は増えないけど利益は増えた。

そんなことがあったのでは、資本と利益の関係はぼやけてしまいます。

投資家から集めた資本がどの程度の効率をもって働いたのか。

そのことを明らかにするためには資本と利益の関係を明確にしておく必要があります。


資本と利益の関係は、投資家の側からすれば、投資と利益の関係に置き換えることができます。

自らの投じた資金がどれだけの効率をもって働いたのかが、投資と利益の関係です。

投資家は自ら投じようとしている資金がどれだけ効率よく働くのかの予想をもって投資判断(売り買いの判断)を行います。

概念フレームワークでは投資家の投資意思決定に対する有用性をもっとも重要な財務情報の性格としました。

このことをふりかえるまでもなく、投資家の投資意思決定に投資と利益の相対的な関係が重要であることはわかるでしょう。


純資産(資本)と利益の関係がきちんと維持されている関係は、ときにクリーンサープラス(関係)と呼ばれています。

サープラスは「余り」というような意味ですので、あえて訳せば、「余剰金」や「剰余金」(←会社法上意味ではありませんが)といったあたりでしょうか。


純資産(資本)は増えたけど、剰余金は増えないという関係は、ダーティーサープラスなどともよばれます。


財務報告においてクリーンサープラス関係を維持することが投資家が投資判断を行う上では不可欠です(企業評価を行う上での前提になります)。


現行の一個前の制度では、クリーンサープラス関係が崩れていました。

原因は、主としてその他有価証券評価差額金にあります。

資本取引以外の純資産の増が純利益になっていなかったのです。


この点を純資産の部を工夫することにより解消しているのが現行の個別財務諸表制度です。

現行制度では、純資産の部を株主資本と株主資本以外に分けました。

純資産のうち株主資本を峻別し、この株主資本の増が純利益となるように工夫したのです。

これにより、それまでのダーティーさの解消が計られています。


概念フレームワークで純利益を重視する以上、純利益と株主資本の関係をきちんと保っておく必要があります。

このような関係を株主資本と当期純利益との間で保っているのが現行制度上の財務諸表といえるでしょう。


単純な純資産の部の変更に目をうばわれず、株主資本を何故に別掲したのかに目をむけたいものです。

株主資本の別掲は、株主資本と純利益の関係の純化(クリーンサープラス関係の維持)にその狙いがあります。


包括利益と純利益(9)