概念フレームワーク、読んでますか?

今回は、資産概念と試験での出題との関係を考えてみました。

概念フレームワークは、単独での出題よりも、他の会計基準との関連での出題が想定されます。

より具体的な出題の関係でいうと財務諸表の構成要素の定義を前提とした出題等が考えられます。

で、実際に具体的な出題との関連を考えてみました(力作です←自分で言うな)。

重要性が高いのは資産概念についてです。

資産概念は、世界的にも大きな違いはなく、出題しやすい項目の超有力候補です。

具体的な規定は、第3章の財務諸表の構成要素の4項と注2です。



概念フレームワークでは、資産は「経済的資源」と定義されています(4項)。

経済的資源は、「キャッシュの獲得に貢献する便益の源泉」です(注2)。

つまりは、「キャッシュの獲得に役立つもの」を資産と考えている訳です。

そんな理解で具体的な資産項目を考えてみましょう。

静態論(換金価値のある財産)と動態論(前払費用)との比較もあわせて考えてみました。

このような視点での出題が平成18年の公認会計士試験でありました。

同様に平成18年の全経上級でも出題されています。

こちらはむしろ繰延資産をメインとした出題でした。

よく出てるんですね。

って、えーっと、いわゆる「オドシ」ってやつです。



(1)繰延税金資産(税効果会計基準 前文二2最後の方の3行参照)

まずは繰延税金資産です。

繰延税金資産は、税効果会計の適用時に生ずる資産項目です。

繰延税金資産は、売却(換金)できる訳ではありません。

しかし、将来の法人税を減らす効果をもっています。

すぐキャッシュにはならないけど、将来のキャッシュの獲得に貢献しているでしょう。

現金化できないので静態論のもとでは資産性なしです。

動態論のもとではどうでしょうか?

動態論のもとでの貸借対照表項目は、損益計算を行った残り(未解決項目)と考えられています。

このような意味での資産の典型が広い意味での前払費用(支出未費用)です。

繰延税金資産は、税金費用の前払と考えられます。

動態論のもとでは「前払いの費用として」資産性を持ちます。


繰延法と資産負債法の関係も視野に入れるとラフには次のように整理できるでしょうか。

静態論……資産性なし

動態論……資産性あり(前払税金費用)………繰延法

概念フレームワーク……資産性あり(将来キャッシュの出の減額効果あり)……資産負債法




(2)繰延資産(企業会計原則 注解15)

もう一つが繰延資産です。

静態論と動態論の考え方は、繰延税金資産と同様です。

売却価値を有しないので静態論のもとでは資産性なしです。

動態論のもとでは典型的な資産項目です(この点は注解15とテキスト等を参照してみてください)。

悩ましいのが概念フレームワークです。

繰延資産について、まだ新しい会計基準は公表されていません(無形資産の中で検討されています)。

企業会計基準委員会のものでは「実務対応報告」での対処です。

ここでは注解15の考え方を維持しています。

ということは現状の「制度的な取扱い」は、資産性ありです(でも許容)。


概念フレームワークでは、資産の本質をキャッシュの獲得への役立ちと考えています。

これを素直に考えるなら現状の繰延資産のすべてに資産性があるかは別の問題でしょう。

創立や開業にあたって何らかのコストを負担しても、それが直ちにキャッシュの獲得に貢献するとは限りません。

創立や開業をしなければ、事業活動を営むことはできませんので、何らかの意味で企業に便益をもたらすことは間違いありません。

しかし、その支出によって、具体的なキャッシュの獲得を想定できるほどの何かが生み出されるとは限らないのです。

創立や開業のコストより、たとえば企業広告などの方がよほどキャッシュの獲得に貢献するように思えます。

広告で社名を認知した人が商品を買ってくれる可能性が高まるでしょう(これを資産計上すべきだということではありません)。

繰延税金資産とは異なり、現状の繰延資産としてあげられている項目でも、キャッシュの獲得に直接的に貢献していると思えないものが多そうです。

概念フレームワークの資産概念に照らして、個別に検討しなおせば、資産ではないという項目は多いといえそうです。

同等物をのばーして考えればいろんなものが入ってくるんでしょうが、のばしすぎはいけません。

つまりは、すごく素直に概念フレームワークの資産概念を考えた場合は、資産性が認められないものが多いといえそうです。

ざっくりとまとめておきましょう。


静態論……資産性なし

動態論……資産性あり(前払費用)

概念フレームワーク
……将来のキャッシュの獲得に貢献する:資産性あり
              貢献しない:資産性なし



こういう所(筋道を通した場合と実際とが異なる場合)が実際の試験でも狙われやすいです。

同等物の考え方次第ではムニャムニャ(←ってなんだ。!!←うやむやでした)になってしまいそうな気もしますが、現行制度上は資産、でも現状の繰延資産には、資産性に問題があるものも多そうです。


そうだ、会計基準を読もう!!(繰延税金資産や繰延資産の資産性に注目だよ♪)



会計基準を読もう!!<目次>