「継続性の原則」は、会計処理等の継続性を要請する原則ですが、会計処理の継続性が要請されるのは、次の二つの理由からです。

(1)財務諸表の期間比較の可能性の確保
企業会計原則は、注解3において、次のように述べています。
「企業が選択した会計処理の原則及び手続を毎期継続して適用しないときは、同一の会計事実について異なる利益額が算出されることになり、財務諸表の期間比較を困難ならしめ、この結果、企業の財務内容に関する利害関係者の判断を誤らしめることになる。
従って、いったん採用した会計処理の原則又は手続は、正当な理由により変更を行う場合を除き、財務諸表を作成する各時期を通じて継続して適用しなければならない。 」

(2)利益操作の排除
企業会計原則において、触れられていませんが、継続性の原則には、利益操作を排除する目的もあります。
企業会計では、一つの会計事実に対して複数の会計処理方法が認められている場合が少なくありません。
会計処理方法の違いは、そのまま利益計算の違いとなってあらわれます。
例えば、減価償却の計算方法として定額法を採用するか、定率法を採用するかで企業利益の額は異なってきます。
このような会計処理方法を変更することによって経営者に利益を操作する余地を与えないことも継続性の原則の狙いといってよいでしょう。

(まとめ)
継続性の原則には、財務諸表の期間比較の可能性を確保し、経営者による利益操作を排除する狙いがある。
(期間比較の可能性)
減価償却方法として定額法を想定すると財務諸表の期間比較の可能性の確保の意味はよくわかります。
耐用年数を通じて定額法による償却額は変りません。

しかし、定率法による場合は、単純な意味での期間比較の可能性が確保されているとは言いにくい面もあるように思えます。
定率法による減価償却費は、逓減していきますが、その金額自体を単純に比較することはできません。
期間比較の可能性の確保も限定的というべきなのかもしれません。