「資本と利益の区別の原則」は、その前段で、「資本取引」と「損益取引」の区別を要求しています。

「資本取引」とは、資本主(株主)からの直接的な資本の拠出取引及びその増減取引をいいます。
典型的には、会社設立時の資本金の受入取引やその後の増資・減資取引が「資本取引」に該当します。
もっとも、会計を誰の立場によって行うかの見方(「会計主体論」)によっては、「資本取引」の範囲も異なります。

「損益取引」とは、資本取引以外の取引から生じた純資産の増減取引をいいます。
企業は資本主から資本を受入れ、これを運用して利益を獲得することを目指しています。
この利益の獲得過程における純資産の増減取引である費用収益の発生取引が「損益取引」です。
「資本取引」と「損益取引」を混同すれば、企業の正しい財政状態や経営成績を示すことはできません。

(まとめ)
「資本取引」とは、資本主からの直接的な資本の拠出及びその増減取引をいい、「損益取引」とは、資本取引以外の経営活動による間接的な純資産の増減取引をいう。
(簿記上の取引との関係)
資産、負債、資本(純資産)に増減をもたらす経済的事象を簿記上の取引といい、簿記上の取引が行われた場合に、記録(原初的には仕訳)が行われます。
「資本取引」と「損益取引」という取引の類型は、簿記上の取引を二つに分けたものではありません。
例えば、資産と資産の交換取引(例・当座預金××× 現金×××)は、「資本取引」にも「損益取引」にも該当しません。