「正規の簿記の原則」は、正確な会計帳簿の作成を要請する原則です。
「正規の簿記の原則」にいう「正規の簿記」であるためには、次の3要件が必要です。
(1)網羅性……すべての取引を記録すること。
(2)秩序性……秩序立った一定のルールに基づいて記録すること。
(3)立証性……事後に検証可能な資料に基づいて記録すること。

「正規の簿記の原則」の文章に「すべての取引につき」とあるように、網羅性が正規の簿記の要件として必要ということは頷けます。
これは記録して、これは記録しないなどと、記録すべき取引を選ぶ(一部を記録しない)ことがあってはなりません。

そのような記録が、経営者や経理担当者の単なる記憶や憶測によってなされても困ったものです。
その意味で、立証性(証憑準拠性、検証性とも呼ばれます)も必要でしょう。

やや、わかりにくいのが秩序性ですが、複式簿記は、正規の簿記の要件である秩序性を満たすにふさわしい簿記であるといえます。

(まとめ)
正規の簿記の原則にいう正規の簿記であるためには、網羅性、秩序性、立証性の3要件を満たす必要がある。
(正規の簿記と複式簿記)
複式簿記には、明確な意味での秩序性(ルール)が存在します。
簿記は、企業活動の帳簿記録であり、仕訳→総勘定元帳という順で記録が行われます。
複式簿記の成立に欠く事のできない帳簿(主要簿)の役割を考えることで、「複式簿記の」秩序性はみえてきそうです。

主要簿には、仕訳帳と元帳があります。
仕訳帳は、取引を発生順(歴史順)に記録する帳簿であり、元帳は、仕訳帳の記録を勘定口座(内容)ごとに移記する帳簿です。
(1)歴史的な記録であることと、(2)内容に応じた記録であることが複式簿記の秩序性とみてよいのではないでしょうか。

ただし、このように仕訳帳と元帳を備えていなくても、例えば特に固定設備も持たず、小規模事業者で収支をすべて現金によって行っているようなケースでは、現金出納帳の記録に債権債務(貸し借り)等の記録を加えた程度でも、必要にして十分な記録といえる場合もあるでしょう。
この場合には、上記のような意味での複式簿記の精密な秩序性には劣るでしょうが、正規の簿記の要件を満たすに十分な秩序性を有しているといってもよいでしょう。