企業会計は、企業の活動結果の財務諸表による報告を意味しますが、その報告の真実性を求めたのが「真実性の原則」です。
真実性の原則にいう真実とは、たった一つの真実(絶対的真実性)を意味しているのではなく、「相対的真実性」を意味しています。

企業会計上認められている会計処理の方法等は、一つとは限りません。
減価償却を例にとれば、定額法、定率法等の複数の方法が認められています。
いずれの方法を採用するかにより、結果としての財務諸表の数値も異なります。
また、具体的な償却計算についても耐用年数や残存価額の算定には確定値だけでなく、見積もりが不可欠です。
これらの方法の選択や見積りにより、経営者や会計担当者が異なれば、財務諸表の数値は異なってきます。
そのため真実性の原則にいう真実性もたった一つの絶対的なもの(絶対的真実性)ではなく、「相対的真実性」であるといわれています。

(まとめ)
真実性の原則にいう真実は、たった一つの絶対的な真実ではなく、相対的な真実を意味している。
(財務諸表の性格と真実性)
財務諸表は、歴史的事実と会計慣習と個人的判断の総合的表現であるといわれることがあります。
財務諸表の作成の基礎となるのは、簿記的な記録であり、それは、財務諸表の作成時点からすれば過去の歴史的な事実を基礎としています。
その意味で、財務諸表は、「歴史的な真実」をあらわしています。

もっとも記録・測定・報告のルールは、慣行に委ねられており、一つの会計事実について、複数の会計処理が認められていることも少なくありません。
その意味で、財務諸表は、「相対的な真実」をあらわしています。

また、具体的処理にあたって見積り等を行う場合に経営者や会計担当者の個人的な判断は不可避です。
その意味で財務諸表は、「主観的真実」をあらわしています。


(会計目的の歴史性と真実性)
売買目的の有価証券やその他有価証券は時価で評価することとされます。
かつて、有価証券は原則として、原価で評価されていました。
昔の基準と今の基準では、財政状態や経営成績も異なることになります。
会計目的は歴史的にみて常に同じであり続けた訳ではありません。
会計報告の真実性も時代とともに移り変わっていくものである点には注意する必要があるでしょう。