「企業実体の公準」とは、企業を会計が行われるための計算単位(会計単位)とする前提です。
例えば、「特定のA社」の会計は、「A社」について行うというあたりまえの前提ともいえるでしょう。

企業会計は、企業の経済活動の記録・測定・伝達を意味します。
このような会計行為は「特定の企業」を単位に行われなければ意味がありません。
A社の売上が、いつの間にかB社の売上になったなどというのは、妙な話です。
そんな当たり前の仮定、前提が、「企業実体の公準」です。

もっともそんな怪しげな事が行われる余地が大きいのは、会社よりも個人企業かもしれません。
個人企業では、事業主の営利目的活動(つまりは、企業としての活動)と消費活動(最終消費者としての活動)が同時に行われることは少なくありません。
ひとつの行為の中に両方の側面が含まれている場合もあります。
たとえば、店舗と住宅が一緒の土地・建物の固定資産税を払った場合は、企業活動としての側面と消費活動としての側面の両者を含んでいます。
しかし、あくまでも事業主個人の活動と企業活動とは区別して記録されなければなりません。
資本主(個人事業主)からは独立した別個の会計単位が設けられ、その会計単位ごとに会計が行われるのは、当然でしょう。

(まとめ)
「企業実体の公準」とは、会計が行われるための計算単位(会計単位)が設定されるとの前提をいう。
(会計主体論)
企業会計が誰の立場から行われるかの議論は、「会計主体論」と呼ばれます。
「会計主体論」には、「資本主理論」、「代理人理論」、「企業体理論」等があります。
「会計主体論」は、会計を誰の立場にたって行うかの議論であり、会計単位の設定を前提とする「企業実体の公準」は、このような「会計主体論」とは別個に存在します。

「資本主理論」は、会計を資本主(株主)の立場で考え、「代理人理論」は、資本主の代理人の立場で考えます。
「企業体理論」では、資本主からは独立した企業の立場で会計を考えることになります。

(会計単位と法的な単位の関係)
会計単位の設定は、必ずしも法的な主体の単位(会社)とは一致しません。
例えば、本支店会計では、同一の会社内部の本店と支店をとりあえずは別個の会計単位として設定します。
逆に連結財務諸表では、法的には異なる主体を一つの会計単位とみています。

(過去出題)
(1)会計公準と会計主体は、それぞれどのように定義できますか(平成11年度 第二問)。
(2)会計公準と会計主体は、それぞれなぜ必要とされるのですか(平成11年度 第二問)。
(3)会計主体について、……個別財務諸表における質的に相違する2つの見解を取り上げ、それぞれの要点を述べなさい(平成11年度 第二問)。
(4)会計主体について、……連結財務諸表における質的に相違する2つの見解を取り上げ、それぞれの要点を述べなさい(平成11年度 第二問)。