法律等に準拠した会計を「制度会計」といいますが、同じ「制度会計」でも、「会社法会計」と「金融商品取引法会計」では、その目的が異なります。
一般的には、「会社法会計」は、債権者保護に重点がおかれ、「金融商品取引法会計」では、投資家保護に重点がおかれているといわれます。

「会社法会計」では、債権者保護に重点がおかれています。
株式会社企業に関心を持つ者(利害関係者)には、株主や債権者、将来の株主候補としての投資家等の多様な人々がいます。
これらの利害関係者のうちでも原初的な資金の提供者である株主は重要です。
ただし、株式会社には、有限責任制(株主が出資した金額を限度としてしか責任を負わない制度)があります。
そのためか会社法の規制は、むしろ債権者にむけられることが多いようです。
株主は、有限責任しか負わないので、その分、債権者に配慮する必要があるということです。

これに対して「金融商品取引法会計」の対象となる企業は、株式を公開している大規模な株式会社等です。
誤解を恐れずにいえば、投資家がきちんとした投資判断を行うための材料を提供する手段として「金融商品取引法会計」を位置付けるとよいかもしれません。
投資家に向けられた会計、それが「金融商品取引法会計」といってよいでしょう。

(まとめ)
「会社法会計」は、債権者保護に、「金融商品取引法会計」では、投資家保護に重点がおかれる。
(受託責任遂行機能)
出資者は、企業に資金を提供します。
企業は、出資者から資金の提供を受けます。
そもそも、出資者と企業は、このような委託者(出資者)と受託者(企業)の関係にあります。

委託者たる出資者は、企業に対し、委託した資金を最低でも保持し、さらに利益をあげることを望みます。
受託者たる企業は、委託された資金を運用し、利益を獲得する使命を持つといってよいでしょう。

受託者たる企業に課されたこのような使命、責任の事を、受託責任といいます。
受託者たる企業は、どのように受託責任を果たしているのかを委託者たる出資者に説明する義務を負います。
このような受託責任を果たすための説明責任(会計責任)が、会計の本質といえるでしょう。

「企業会計」にはこのような意味での「受託責任遂行機能」が不可欠です。
受託責任遂行機能は、「会社法会計」(債権者保護)や「証券取引法会計」(投資家保護)のいずれにおいても求められる機能(役割)といえます。