簿記１級 会計学 ○×理論問題２１

【対象＝１級以上（簿記論以外）】

（問題）
（１）棚卸資産のなかには、通常の営業過程で販売されるために保有される財貨だけでなく、販売のために保有される用益が棚卸資産として扱われる場合もある。

（２）発生主義原則のもとでは、すべての費用は常に財貨・用役の価値費消という事実に即して認識される。

（３）将来の期間に影響する特定の費用は、次期以後の期間に配分するため、経過的に貸借対照表の資産の部に記載しなくてはならない。

（解答）

（１）○
（２）×
（３）×

（解説）
（１）棚卸資産を構成するのは、財貨のみではありません。用役も棚卸資産を構成します。
「連続意見書第四　第一　五」参照

（２）費用収益対応の原則により費用認識がなされる項目（引当金等）もあります。

（３）将来の期間に影響する特定の費用の繰延は、強制（しなければならない）ではなく、任意（できる）になります。
「貸借対照表原則一　Ｄ」、「注解１５」参照

Comments

[1. しんのすけ]

いつも楽しく拝見させていただいております。毎回新たな発見があり、なるほどとうなっております。
さて、当問題の(3)将来の期間に影響する特定の費用についてですが、連続意見書第五においては「前払費用は、企業会計原則注解の十五が述べているように、一定の契約に従い、継続的に役務の提供を受ける場合において、ある期間中に、いまだ役務の提供を受けていないにもかかわらず、これに対して支払われた対価を意味している。したがって、かかる役務の対価は、普通、時間の経過によって、役務の提供を受けるに従い、次期もしくは次期以降の損益計算に、費用として計上されるべき性格を有しているから、これを貸借対照表の資産の部に掲記しなければならない。」としていますが、これに関しては、どのようにうけとめればよいでしょうか。

[2. 講師]

しんのすけさん、はじめまして。
そういっていただけるとうれしいです！！
がんばりまっす。

ご質問ですが、注解１５（繰延資産）と注解５（前払費用等）との違いということになるかと思います。

注解１５と注解５（１）でもっとも大きく異なるのは、「役務の提供」を受けているか否かだと思います。

注解１５（繰延資産）　→役務提供は受けている
注解５（前払費用）　　→役務提供を受けていない

役務の提供を受けているというのを「価値の消費」があったと置き換えても同じかと思います。

「支出」、「費用（価値の消費）」、「費用（損益計算書上の費用）」の関係で考えてみますと、

繰延資産……支出→費用（価値の消費）→繰延資産→費用（損益計算書上）
前払費用……支出→前払費用→費用（損益計算書上）

[3. 講師]

って、わかりにくいですが、
繰延資産は、支出があって、それが価値の消費されたという意味では、「費用」なんですが、これを繰延資産にして貸借対照表に計上することもできる。
これを償却すれは、損益計算書上の費用になります。

前払費用の場合は、支出して、役務提供を受けた部分（価値の消費があった部分）が損益計算書上の費用になります。
残り（役務提供を受けていない部分）が前払費用になります。

問題文における将来の期間に影響する特定の「費用」は、すでに価値の消費（役務提供を受けた）部分という意味で使われていると考えるべきだと思います。
つまり、問題文は、注解５を考慮する必要はなく、繰延資産のみを指していると考えてよいと思います。

って、なんか微妙にズレている気もしますが、ズレてたらまた、おっしゃってくださいね。

[4. しんのすけ]

早速のご回答ありがとうございます。
「将来の特定の費用」＝役務の提供を受けている＝資産計上は任意
「前払費用」＝役務の提供を受けていない＝資産計上の強制
と、自分なりに結論付けました。
期間損益計算の考え方がその根底にあるのですね。
とてもすっきりいたしました。独学で勉強中なので、講師の方に直接質問でき、かつ回答いただけるこのブログは、私にとって「ありがたい」の一言です。感激いたしました。これからもお体に気をつけて、益々ご活躍ください。行き詰ったときは、また質問させていただきます。ありがとうございました。

[5. 講師]

おおっ。
いい感じですね。
繰延資産の場合には、役務提供も受けちゃってるから、法的には、もう何の権利もない、何の財産性もないから、商法上は、「資産として計上できる」、それをうけて企業会計原則も任意という軟弱な規定になっているようです。

また、何かありましたらお声をおかけください。
勉強、がんばってくださいね。