我国のこれまでの制度会計の枠組みは、トライアングル体制と呼ばれていました。
商法会計・証券取引法会計・税務会計の三者が、微妙なバランスの中で制度会計が形成されていたのです。
このような制度会計の仕組みは、日本独特のもので、和を重んじる極めて日本的な仕組みといってよいのかもしれません。

現在では、このトライアングル体制は、崩れています。
このバランスの崩壊をもたらしたのは、証券取引法会計といってよいでしょう。
それまでは、それぞれが他を尊重し、よくいえば調和をもって、悪くいえば、妥協しながら、それぞれの領域が成り立っていました。
それが、新会計基準(証券取引法会計の系列に属します)と呼ばれる一連の会計基準にみられるように、他の制度会計領域をさほど顧みることなく著しい変革を伴ったのです。
これに対して税務会計は、距離を置き、商法会計は、接近の道を歩みました。

このように新たに形成されたといってもよい我国における制度会計の目指しているものは、いったい何でしょうか。

それは一言でいえば、「投資家の投資意思決定支援」とでもいうべきものです。
投資家が投資を行う際の判断基準となりうるような財務報告が求められているといってよいでしょう。

この事を現在の会計基準の設定主体である企業会計基準委員会が外部委託して公表された討議資料「財務会計の概念フレームワーク」は、かなり鮮明に表明しています(概念フレームワークについては、簡単なご紹介記事「概念フレ−ムワーク(1)〜(3)」をご参照ください)。

「投資家の意思決定に資するデイスクロージャ制度の一環として、それらを開示するのが、財務報告の目的である。」