税理士試験　簿記論　講師日記

税理士試験簿記論、財務諸表論、簿記検定の問題、学習方法等をアドバイス。

2005年06月03日22:32

カテゴリ: 合併、株式交換等

（★）合併の会計処理

【合併会計の考え方】
合併の会計処理には、２つの方法があります。
１つは、パーチェス法と呼ばれる方法です。
パーチェスは、買収といった意味で、ある企業が他の企業を買ったように処理する方法です。
もう一つは持分プーリング法です。
合併によって持分（出資）の関係は変わるけど、他の状況は変わらないものとして会計処理を行います。

【取得と持分の結合】
合併の会計処理には、パーチェス法と持分プーリング法がありますが、その分岐は、合併が取得か、持分の結合かによります。
取得とは、その合併が企業が他の企業を買ったに等しいような合併をいいます。
持分の結合とは、その合併が出資の関係が変わっただけで以前と大きな違いがないような合併をいいます。
その分かれ目は対価の種類と支配の関係に注目して行われます。
より具体的には、次の要件のすべてを満たす合併は、持分の結合と判断され、それ以外の合併が取得と判断されます。
（１）合併の対価が議決権のある株式である。
（２）議決権の比率が等しい
（３）その他の支配の事実がない

【パーチェス法】……時価での清算
パーチェス法では、被合併会社から受入れた資産及び負債をいわば時価で取得したものと考えます。
受け入れた資産と負債の時価を超えて対価を支払った場合のその超える部分の金額がのれんとして計上されます。

（借）諸資産×××（時価）（貸）諸負債　×××（時価）
　　　のれん×××　　　　　　　資本金等×××（対価）

【持分プーリング法】……簿価での引継ぎ
被合併会社の資産及び負債は、帳簿価額で引継がれます。

（借）諸資産×××（簿価）　（貸）諸負債　×××（簿価）
　　　　　　　　　　　　　　　　　資本金等×××（簿価）

＜テキスト記事一覧＞
・企業買収
・合併の意義と種類
・企業評価額の算定
・合併比率と増加資本金
・合併の会計処理の考え方
・抱合株式の処理
・自己株式の移転
・合併の会計処理

・税理士試験　簿記論　講師日記　全テキスト記事一覧

コメント一覧 (11)

- 1. ぺんは剣より強し
- 2009年04月15日 02:08
- 先生こんばんわ
  
  プーリング法について質問です。
  
  パーチェス、プーリング共に学習したので仕訳はどうするのか分かります。
  
  パーチェスは、文字通り購入なのでイメージがわきやすいです。
  
  しかし、プーリング法の方は、イマイチイメージがわきません。
  先生のテキストの中で「出資の関係が変わっただけで・・・」とありますが、どういうことでしょうか？
  
  指導よろしくお願いいたします。
- 2. 講師
- 2009年04月15日 09:49
- ペンは剣より強しさん、こんにちは。
  
  持分プーリング法は、固定資産どうしの交換をイメージしてみてはいかがでしょうか。
  同種の資産（車両と車両）を交換しても、損益はたてずに、もっていた資産の簿価で仕訳をきっておわりです。
  持分プーリングの考え方もこの同種の資産の交換の会計処理に通じるところがあります。
  
  甲　＋　乙　＝　甲’
  
  こんな吸収合併の場合に甲社と乙社は別々の会社で別々の株主がいる。
  それが甲’と一つになって、全部甲’の株主になる。
  でも、やってることは前とちっとも変らない。
  そんなケースもあると思います。
- 3. 講師
- 2009年04月15日 09:49
- たとえば、別々の会社だったのが、ひとつの会社の別別の事業部門になったにすぎない。
  そんなケースでは、むしろ簿価を合算した感じが会計処理としては適当でしょう。
  甲社が残るのであれば、甲社は乙社の簿価を引継ぐ。
  それが持分プーリング法です。
  特に乙社の株主からすれば、甲社の株主にかわる訳ですが、実態は、出資の関係が大きく変っているほどには変っておらず、単に簿価を引継ぐ処理が行われます。
  
  あと持分プーリング法は、廃止予定ですので、考え方は必要かもしれませんが、軽めでいいかもしれないですね。
- 4. ペンは剣より強し
- 2009年04月17日 01:53
- 先生こんばんわ
  分かりました
  ありがとうございます
  
  ところで、持分プーリング法は、廃止予定なんですね。ええ～！って感じでした。
- 5. 講師
- 2009年04月17日 22:25
- ペンは剣より強しさん、こんばんは。
  
  税理士試験の出題準拠法令等はその年の４月中旬なんですが、実際の出題を見ているとその年の３月決算法人に適用が強制される規定等が出題の中心になっているように感じます。
  
  あまりに早い改正等の情報よりは、基本的に重要な考え方をしっかりやっておく方が有用かなあとも思っています。
- 6. ペンは剣より強し
- 2009年04月18日 10:55
- 先生おはようございます。
  基本理解を徹底します
  ありがとうございます。
  
  もうひとつイメージ出来ないことがあります。
  「持分プーリング」：共有
  「パーチェス」：支配
  です。
  
  議決権比率は合併後に随時変化しますよね？
  取得会社の株主だった人が、被取得会社の
  株主の味方になれば、議決権比率は流動的だと思いますが・・・・。
  そういう意味では、合併時点で「支配」のつもりが時間の経過と共に「共有」になったり、また逆のパターンになることもあるのでは？
  
  「共有」「支配」はあくまで合併時点での仕訳をイメージしやすくするためのキーワードと思えばいいのでしょうか？
  
  指導よろしくお願いいたします。
- 7. 講師
- 2009年04月18日 22:34
- ペンは剣より強しさん、こんばんは。
  
  これはあくまでも「合併」の段階ですね。
  固定資産どおしの交換にしろ、合併にしろ、法的には、とても大きな変化があります。
  固定資産では、資産が変りますし、合併では会社が変ります。
  でも、実質的には、前とあまり変らない場合には、前と同じ簿価を引継いで、前と状況が異なる場合には、いったん投資を精算（売却）して、再投資（取得）を行ったと考えます。
  
  あくまでも「交換」や「合併」というきっかけがあったときの話しと考えるとよいのではないでしょうか。
  合併の場合にその判断の大きな要素が「支配」という感じだと思います。
- 8. ペンは剣より強し
- 2009年07月10日 01:23
- 先生こんばんわ。
  
  逆取得の判定について質問です（「取得」ではなく「逆取得」です。）
  
  専門学校のテキストでは、「取得」「持分結合」の判定は、”議決権比率要件”に着目すると５０対５０±５％の範囲内とありました。
  つまり、合併の場合、合併会社株主の議決権比率が、
  ４５％～　５５％は、「持分の結合」
  ５６％～１００％は、「取得」
  　０％～　４４％は、「逆取得」
  と理解すればよかったですか？
  
  専門学校の問題で「合併の逆取得」を問われる問題がありました。
  この問題は、結合後の議決権比率が合併会社株主より被合併会社株主の方が高くなる場合でした。
  で、その議決権比率は、被合併会社株主側は、約５４．５％でした。
  僕は、上の判断より±５％の範囲内に入っているので「持分の結合」として解答しました。
  結果、間違いでした。「逆取得」として「持分プーリング法に準じた処理方法」で会計処理しないければなりませんでした。
  
  かなり悔しいのですが、未だに専門学校の解答が解せません。
  
  指導よろしくお願い致します。
- 9. ペンは剣より強し
- 2009年07月10日 01:38
- 先生こんばんわ。
  
  もうひとつ質問です。
  「逆取得」時の「持分プーリング法に準じた処理」の仕訳がイマイチよく分かりません。
  
  「資本構成をそのまま引き継ぐのではなく、払込資本を増加させる」とありますが、これだけではイマイチです。
  
  被合併会社の「資産」、「負債」、「払込資本のみ」を引き継ぐということでしょうか？
  つまり、利益剰余金は無視？
  評価差額金は、どうなるのでしょうか？
  
  また、この仕訳について会計諸則集で指示があるのでしょうか？
  
  持分プーリング法は以前先生に教えていただいた通り諸則集でも廃止予定のようなことを書いていました。
  
  指導よろしくお願い致します。
- 10. 講師
- 2009年07月11日 08:40
- ペンは剣より強しさん、こんにちは。
  
  議決権比率要件はいいと思います。
  基準では５０％のおおむね５％の範囲といってますね（注3）。
  
  逆取得のケースは、基準の三２（６）③と注１５にあるようです。
- 11. 講師
- 2009年07月11日 08:50
- 会計処理としては、資産、負債を引継いで、株主資本は取得企業の払込資本を増加させます（この部分だけ特殊ですね）。
  株主資本以外の評価差額等は、帳簿価額を引継ぐようです。
  
  会計処理は、適用指針の設例１０というのにあることはあります（たぶんごらんになっている問題より大きいですのでしんどいと思います。）
  それ以外にも資本構成を引継ぐ処理もみとめられているようですので、何でもありに近くなっちゃってますね。
  この辺は、問題の文章をよく読んで判断する必要があるかと思います。