手形割引の会計処理がなんとなくしっくりとこないのは、手形割引の取引(の会計処理)に問題があるからではなく、当初の取引(または仕訳処理)に問題があるからです。

問題があるといっても、現状では、それは一般的に行われている処理です。

ですから、これからの話は、現状では、必ずしも行われていない理論的な処理ということになります。

この点を十分、踏まえておいてください。


ただ、試験的に出題の可能性がない訳でもなく(最重要項目という訳ではありませんが)、たとえば、平成8年度 第一問 問1は、このような問題意識のもとに作成されたと考えられる出題です(これも例によって、半分は、没問になった可能性が高いですが)。

上級問題6です(かなり見にくくなっております。すんません。)


結論的なことを最初にいっておくと、売上に利息は含まない方が理論的です。

例えば、現金正価(現金での販売価額)が100円、掛け(手形でも考え方は同じです)での販売価額が120円という場合の処理を考えてみましょう。

掛けによる場合は、2月後を期日とし、1月後に決算をむかえた例で考えてみましょう。

現金での販売の場合には、全く問題はありません。

現金100 売上100

でいい訳です。

問題は、掛けの場合です。


(現在の一般的な処理)

販売時:(借)売 掛 金120 (貸)売  上120

決算時:処理なし

決済時:(借)現  金120 (貸)売 掛 金120


(理論的な処理)

販売時:(借)売 掛 金100 (貸)売  上100

決算時:(借)売 掛 金 10 (貸)受取利息 10

決済時:(借)現  金120 (貸)売 掛 金110
                  受取利息10


経験的には、この処理は、かなりわかりにくいです。

それは、売った金額120円で売上をたてるというのが簿記の初歩の学習時から当然のごとく行ってきたことに由来するのでしょう。

この売上に対応する売掛金(受取手形)の金額も当然120円ということなります。

次回は、やや横道にそれる感はありますが、もう既にくねくねしておりますので、売上は120か(利息込)、100か(利息抜)について、考えてみようと思います。



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