【退職給付引当金における予定計算】

年金資産の評価や退職給付見込額(将来の退職金)の計算において、予定(予想)計算を行います。

退職給付費用=勤務費用+利息費用−期待運用収益

勤務費用=退職給付見込額の当期発生分の割引価値

利息費用=前期末退職給付債務×割引率

期待運用収益=前期末年金資産×期待運用収益率

このうち退職給付見込額(将来の退職金)、割引率、期待運用収益等は、あくまでも将来の予測であり、実際もそうとは限りません。



【数理計算上の差異の意味】
「数理計算上の差異」とは、年金資産の評価や退職給付債務の計算における予定と実績の違いを意味します。

また、割引率等の予定数値を変更することもありますが、このような予定計算を行う場合の数値変更に基づく差額も数理計算上の差異です。

見積段階では、この見積計算と実績計算の違いは、会計処理に反映されていません。

まだ計上されていない数理計算上の差異を、「未認識数理計算上の差異」といいます。

考え方は、過去勤務費用と同様ですが、過去勤務費用が仕訳でいえば、

(借)退職給付費用××× (貸)退職給付引当金×××

というようにほぼ、常に、同じ側にしか生じないのに対し、数理計算上の差異は、単なる予定計算と実績との差異であるため、両方が考えられるため混乱しやすい点でしょう(厳密には、過去勤務費用の逆もあります。)。



【会計処理】

(償却開始)発生年または翌年

(償却期間)平均残存勤務期間

(償却方法)定額法(残存価額ゼロ)、定率法

(会計処理)

(借)退職給付費用 ××× (貸)退職給付引当金×××

または退職給付引当金×××    退職給付費用×××

償却の開始は、発生年だけでなくその翌年からも認められているので、注意が必要です。

償却期間、償却方法、会計処理については、過去勤務費用と同様です。



<テキスト記事一覧>
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退職給付制度の仕組み
退職給付会計の一連の会計処理
退職給付引当金の計算
退職給付費用の計算
過去勤務費用
数理計算上の差異
会計基準変更時差異

<軽めの記事一覧>
未認識数理計算上の差異の償却開始年
未認識過去勤務費用の月割計算
会計基準変更時差異


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