退職給付引当金=退職給付債務−年金資産 です。

今、ある時点(当期末)の退職給付引当金の計算を具体的にみてみましょう。


【退職給付債務の計算】

退職給付債務は、次のような手順で計算します。

(1)退職給付見込額の計算

退職給付見込額は、将来の退職金(退職一時金+退職年金)の予想額です。

この予想は、とても難しいです。

簿記論で、退職給付見込額を計算させることは、やや考えにくいです。


(2)当期までの発生額の計算

例えば、第1期入社から3年後に退社予定(早っ)のA氏の3年後の退職金予想額(退職給付見込額)が363万円とします。

今、A氏の第1期末までに発生している退職給付見込額は、363万円×1年/3年=121万円と計算されます。


(3)発生額の割引計算

ただ、退職給付見込額は、あくまでも将来の支払額です。

同じ121万円でも現在(第1期末)とその2年後(第3期末)の価値は異なります。

それを現在時点で計上する訳ですから、利息部分は小さくていいハズです。

つまりは、将来の退職給付を割り引いて計算します。

これを割引計算すると、

121万円÷(1.1)2=100万円



【年金資産の計算】

当期末の年金資産=前期末の年金資産+期待運用収益額

または、

当期末の年金資産=前期末の年金資産×(1+期待運用収益率)

です。

年金資産は、退職金の支払に特定された準備預金(のようなもの)でした。

前期までの年金資産の金額は、前期に計算済です。

これに収益(受取利息等)を加えます。

これが、期待運用収益額と呼ばれます。

期待運用収益額は、

前期末の年金資産×(1+期待運用収益率)

で計算されます。

ここで注意したいのは、あくまでも「期待」運用収益額(率)である点です。

退職給付引当金は、期首時点で、期末時点の事を考えて設定されるのが一般的です。

この場合の「期待」運用収益額(率)は、あくまでも期首時点での予想に過ぎません。

もちろん実際(実績)と異なる事が考えられます(というか、通常は異なります)が、その取扱いは、後日ふれます。



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