将来減算一時差異

【将来減算一時差異の考え方】

将来減算一時差異とは、将来に課税所得（税額）増やすような一時差異のことです。

費用１００−損金算入限度額６０＝超過額４０

企業会計上の費用が１００あって、損金算入限度額が６０であれば、差額の４０は、税法上の損金になりません（損金不算入）。

この金額（損金不算入額）に税率（法定実効税率）を乗じた金額が税効果額です。

超過額４０×税率４０％＝税効果額１６

具体的処理は、

発生：（借）繰延税金資産１６　（貸）法人税等調整額１６

です。

費用−損金算入限度額＝超過額　の関係は、

（棚卸資産の評価損の場合）商品評価損−損金算入限度額＝評価損否認額

（減価償却の場合）減価償却費−償却限度額＝償却限度超過額

（引当金の場合）引当金繰入額−引当金繰入限度額＝引当金繰入超過額

名称が変るだけで、基本的な考え方は同じです。

なお、一時差異は、会計と税法の一時的な差であり、その差異の解消時には、上記仕訳の反対の仕訳を行います。

解消：（借）法人税等調整額１６　（貸）繰延税金資産１６


【将来減算一時差異のまとめ】

１．種類：商品の評価損否認額、償却限度超過額、引当金繰入限度額、未払事業税等
２．金額：超過額（費用−限度額）×税率（法定実効税率）
３．発生：繰延税金資産　×××　法人税等調整額×××
４．解消：法人税等調整額×××　繰延税金資産　×××

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Comments

[1. 中嶋]

先生、リクエストしたあとすぐに税効果をアップしてもらってすごく嬉しいです。
ほんとはいろいろな人にこのブログを紹介したいのですが、そうすると質問がいっぱい来て先生の手が回らなくなるのでは、と考えるとちょっと躊躇して
しまう自分が悲しい・・・（笑）

[2. 講師]

機動性が命です（内容じゃないのかみたいな）。

でも、簿記のブログですから、しかも簿記論中心なんで、対象狭すぎです。はい。
それに質問自体のハードル（質問するのって、難しいんですよね。あまり優秀とはいえなかったもんで、よくわかります）は、高いと思いますんで、なんとかなるんじゃないかなあと思ってます。

[3. 五科目受験野郎]

はじめまして簿財勉強しています。
問題集を解いてて、”税効果会計のところで将来減算一時差異の繰延税金資産の回収可能性に問題はないものとする”という文章があったのですが、これは前期末に計上されている一時差異がすべて当期に解消されると解釈していいでしょうか？　将来加算一時差異もむずい...^^;

[4. 講師]

はじめまして、よろしくお願いします。

繰延税金資産の回収可能性というと、当期に計上する繰延税金資産そのものの話ですね（前期の一時差異が解消することとは別の話だと思います）。

将来減算一時差異（税金の前払）は、将来の税金（所得）が減る差異です。
将来の税金が減る前提としては、将来の所得→税金が、発生している必要があります。
将来の所得・税金がなければ減る可能性もありませんので。

繰延税金資産の回収可能性（将来の税金の減）がなければ、当期に繰延税金資産を計上すること事態に問題があるけど、それはないので、当期の繰延税金資産を計上していいよという資料ということになるかと思います。

[5. ぺんは剣より強し]

先生こんばんわ。
未払事業税の税効果について質問です。

「未払事業税」自体がよく分かりません。
というのも、税金／租税のところで「未払事業税」といった勘定科目が出てきません。

「未払法人税等」なら出てきますが・・・。

あと、この未払事業税は、資本割ですか？
それとも所得割ですか？そのあたりとの絡みも気になります。
恐らく、所得割ですよね？
資本割は、租税公課扱いですから、販管費に表示されるので、PLの下の方（税引前当期純利益より下）には、出てこないはずですから・・・・。

指導よろしくお願い致します。

[6. 講師]

ペンは剣より強しさん、こんばんは。

借方の話と貸方が食い違っているんです。

（借方）
法人税等→法人税、住民税、外形以外の事業税
販管費→外形部分の事業税

（貸方）
未払法人税等→法人税、住民税、全部の事業税

つまり、取扱いがちょっと異なるのは、外形部分の事業税（資本割等）だけなんです。
それが販管費というだけです。

税効果会計の適用される未払事業税は、事業税の未払分全部です。
その分は、勘定科目としては全部、未払法人税等です。
税効果会計は、外形部分も含んだ未払事業税の全部に適用されます。

[7. ペンは剣より強し]

先生おはようございます

未払法人税について分かりました。

もうひとつ質問です。

どうして、事業税だけ税効果の対象になるのでしょうか？

法人税、住民税は、対象にならないのですか？

何か根本的なことがわかっていないような気がします。

[8. 講師]

ぺんは剣より強しさん、こんばんは。

未払事業税は、わかりにくいみたいですね。

法人税、住民税は、税務上、経費にならない（損金に算入されない）からです。
つまり、永久差異なんです。

事業税は、損金の額に算入されます。
ただ、損金の額に算入されるのは、実際には翌期です。
第１期分の事業税は、第２期中に申告期限がきて、それを納付します。
税務上、損金の額に算入されるのは、第２期にかかる申告です。
でも、企業会計上は、第１期の決算で未払計上します。
つまり、第１期の段階では、企業会計上は費用になっているけど、税務上は損金に算入されません。
ですので第１期には、税効果が必要になります。
このような差異が、将来減算一時差異の典型です。

この違い（差異）は、第２期に税務上、事業税の額が損金に算入されることにより解消されます。
翌期（第２期）には、解消の処理が行われることになります。

[9. ペンは剣より強し]

先生こんばんわ。
しつこくてすいません。
未払事業税の税効果について、先生の返事の中で奇異に感じたことを教えてください。


「第１期の段階では、企業会計上は費用になっているけど」とありますが、

そもそも「法人税等」は、「費用」という認識が私には無かったので、奇異に感じました。
もう少し詳しく言うと、「法人税等」の「事業税」のうち”租税公課”に相当する部分は、「費用」と思いますが、その他の部分は「費用」ではなく、あくまで「費用／収益」とは全く別物の「法人税等」と思っています。
だから、少し混乱しています。

それに加えて「税務上は損金に算入されません。」とあったので余計に「費用」でないものがなぜ「損金」にまで話が大きくなるの？
といった印象です。

やはり、混乱気味です。

もう少しでブレークスルー出来そうなのですが・・・。
指導よろしくお願い致します。

[10. ペンは剣より強し]

先生こんばんわ
もうひとつ指導お願い致します

未払法人税は、税金ですよね。
税金なのに、さらに法定実効税率を掛けるのも、イマイチ理解に苦しみます。

税務上は、損金算入だからでしょうか？

未払事業税の税効果は、難しいです。

[11. 講師]

ペンは剣より強しさん、こんばんは。

いえいえ、しつこいくらいの方が、後でぐっと伸びると思います。
とってもいいと思いますよ。

法人税等も費用なんです。
そもそも税効果会計は、税引前当期純利益と法人税等（という費用）の関係をちゃんとしたくて行うものです。

税引前利益１，０００　税率４０％　将来減算一時差異２，０００

こんなケースで

税引前利益１，０００
法人税等　１，２００
当期純損失　　２００

こんな感じにはしたくない。

税引前利益１，０００
法人税等　　　４００（１，２００−８００）
当期純利益　　６００

こうしたい。
でも、法人税等の１，２００も実際の法人税等の年間の負担額の意味があります。
ので、実際の科目は、法人税等をダイレクトに減らすのではなく、法人税等調整額という間接的な科目を用います。

（借）繰延税金資産８００　（貸）法人税等調整額８００

この仕訳の貸方・法人税等調整額は、まさに法人税等を調整する（この場合、法人税等を減らす）意味があることになります。

[12. 三毛猫]

先生こんにちは。
今度は、税効果について質問です。
損金不算入額×法定実効税率（40%）＝税効果額という部分の損金不算入額について、

第1期　事業税1,000を未払計上
→損金不算入額1,000
（繰延税金資産）400（法人税等調整額）400

第2期　第1期の事業税1,000を納付して、第2期の事業税3,000を未払計上した
→1,000は納付により、損金となり、3,000の損金不算入額が発生

2,000損金不算入額が発生したとして、
（繰延税金資産）800（法人税等調整額）800
2,000の発生と捉えていました。

テキストによると、3,000×40%＝1,200　前期400との差額800を計上していました。

第2期以降の損金不算入額は、当期発生と前期解消の差額で算出しているのではなく、各年ごとに損金不算入額を算出して、前期の損金不算入額合計×税率（前期の繰延税金資産）との差額を計上しているということなのでしょうか。

第2期以降の処理がいまいち理解できません。出来が悪く、御迷惑をお掛けします。急ぎませんので、宜しくお願い致します。

[13. 暮木孝司]

三毛猫さん、こんばんは。

税効果会計では、資産負債法という考え方がとられています。
資産負債法は、資産（税金の前払い）や負債（税金の未払い）に着目した方法です。

前期の事業税（の未払計上部分）が損金にならないので税効果会計を適用するわけですが、その差異部分の期首と期末の金額にそれぞれ税率を乗じた金額の差を算出する感じですね。

期末３，０００×４０％＝１，２００
期首１，０００×４０％＝４００
期末１，２００−期首４００＝８００

この８００を「繰延税金資産８００　法人税等調整額８００」とするのが税効果会計のイメージになります。

[14. 三毛猫]

先生こんにちは。ありがとうございます。

税効果会計では、前期末（＝当期首）と当期末の一時差異を算出して、税率を乗じた金額の差額を算出する

事業税や賞与引当金、貸倒引当金は、前期に一時差異が発生　→　当期に支払（貸引は戻入）により、差異が解消、新たに一時差異が発生することにより、当期末には当期分のみが計上される　減価償却については、固定資産を除却しない限り、差異は解消しないので、差異が累積される

一時差異の概要については、このような感じでしょうか。

このように考えると、1点分からなくなります。
先の事業税の例では、第2期のB/Sに繰延税金資産1，200と計上されるかと思います。第1期の事業税1，000は納付しているのに、なぜ、繰延税金資産は累積されるのでしょうか。

何度も、申し訳ありません。

[15. 暮木孝司]

三毛猫さん、こんばんは。

繰延税金資産が累積されるわけじゃないですね。

事業税は支払った期の損金になります。
でもそのときは会計上、「未払法人税等／現金預金」と処理して費用が計上されているわけではなく、このタイミングで差異が解消されることになりますね。
この点が累積していって、最後（売却等）で清算される固定資産なんかとは違います。

事業税は会計上は発生主義（当期の費用）ですが、法人税では支払（ないし債務の確定時）の損金なのでその分、１年ずつ帰属のタイミングが異なる。
期末に残るのは１期分の未払事業税に対する分だけですね。

[16. 三毛猫]

先生こんにちは。再度、確認をさせてください。

前期末　未払事業税15,000×税率40%＝6,000（当期前T/B　繰延税金資産6,000）→当期税金の支払により差異がなくなる

当期末　未払事業税15,500×税率40%＝6,200（当期末　繰延税金資産6,200）→新たに未払が発生

未払事業税にかかる繰延税金資産は、前期からの分が累積されているのではなく、当期発生分のみが計上されているという感じでしょうか。

当期の法人税等調整額200については、前期末と当期末の繰延税金資産の差額で算出とありますが、一連の流れは以下のような感じでしょうか。

前期　前払税金6,000　費用6,000
当期首再振替　費用6,000　前払税金6,000
当期支払　費用6,000　現金6,000
期末　前払税金6,200　費用6,200

上記のように考えると前払税金が6,200、費用が5,800と変な数字になってしまいます。ただ、当期支払以降のみ考えると、前払税金6,200の発生（繰延税金資産当期発生分）、減産すべき費用200（法人税等調整額の当期計上分）になります。

前払税金で計上した金額を当期に支払する時点で考え方が間違っているような気がしますが、やはり考え方がおかしいでしょうか。前期末と当期末の繰延税金資産の差額で法人税等調整額が算出されるという点がよく分かりません。

何度も申し訳ありません・・・。

[17. grace]

先生、三毛猫さん こんにちは

私もちょうど今税効果会計の勉強をしているところで、三毛猫さんがよい例を出してくださっているので、考えてみました。こんな風に理解してよいでしょうか。

>前期　前払税金6,000　費用6,000
>当期首再振替　費用6,000　前払税金6,000
>当期支払　費用6,000　現金6,000
>期末　前払税金6,200　費用6,200

について、

*******
繰延税金資産と繰延税金負債の差額を期首と期末で比較した増減額は、当期に納付すべき法人税等の調整額として計上しなければならない。
（税効果会計に係る会計基準 第二 二 3）
*******

を踏まえて、

○前期末　前払税金6,000　費用（法調）6,000

○当期首再振替 →期首仕訳なし

○期中　未払事業税15,000　現金15,000
→このタイミングで差異は解消

○決算整理
　　期首時点の繰延税金資産 6,000
　 期末時点の繰延税金資産 6,200
→増減額 200＝当期に納付すべき
法人税等の調整額200

→繰延税金資産 200 法調200

→後T/Bは
繰延税金資産 6,200（6,000+200）
　 法調 200（貸方残→P/L上は△）

と考えましたがいかがでしょうか。

[18. 暮木孝司]

三毛猫さん、ｇｒａｃｅさん、こんにちは。

イメージはｇｒａｃｅさんのおっしゃるとおりかと思います。

税率が変化し、差異の発生時と解消時の率が異なる。
そもそもの税率としてどちらを指向するのか（発生時か、解消時か）の問題なんでしょうか。

差異の発生時の税率をそもそも採用するなら税率の変化による処理の影響はないことになります。
差異の解消時の税率を採用するなら繰延税金資産（前払税金）、繰延税金負債（未払税金）の金額に着目しているということですので、期首・期末の繰延税金資産・負債に着目するってことなんでしょうね。

[19. KK]

冒頭に、「将来減算一時差異とは、将来に課税所得（税額）増やすような一時差異のことです。」とありますが、「増やす」でなくて「減らす」の間違いではないでしょうか。

ご確認よろしくお願いいたします。