【典型的な本支店の役割分担】

簿記論では、支店が複数ある場合の出題もあります。

一般的な前提をゆるやかに考えておくとよいでしょう。

極めて一般的な出題は、「本店が仕入」を「支店が販売」を担当する場合です。

これは現実的にも多く存在する形態です。

仕入れには大量仕入による仕入単価の引下げというメリットがあります。

これに対して、販売拠点は多い方がよいです。

ここまで来いという姿勢では売るのは難しいでしょうから、販売拠点は多いほうがよいです。

本店で管理活動と仕入を、複数支店で販売を担当するのは、現実的にも多いでしょう。

そのもっとも単純な形態として本支店が一つずつの問題が想定されることが多いようです。


その典型的な本支店の形態、すなわち、本店が仕入のみを行い、支店が販売のみを行う場合を考えてみましょう。


例えば、原価100円、売価150円の商品を、

(1)本店が仕入(100円)

(2)本店が支店へ送付(100円)

(3)支店が販売(150円)


(本店の処理)

(1)(借)仕 入100 (貸)買掛金100

(2)(借)支 店100 (貸)仕 入100


(支店の処理)

(2)(借)仕 入100 (貸)本 店100

(3)(借)売掛金150 (貸)売 上150


本店・支店の損益(もうけ)を考えてみると、

(本店)収益0−費用0=利益0

(支店)収益(売上)150−費用(売上原価)100=50

つまり、本店は利益0で、支店は利益が50。

これは、おかしくないでしょうか。

もちろん本店と支店は、本来(制度的に)は、一つの会計単位です。

本支店を合わせたところで、利益が50なのは、間違いありません。

しかし、本店だって努力はしています。

もちろん何でも仕入れればよい訳ではありませんし、買掛金を払う手間もあります。
いくらかは、本店も利益に貢献しているハズでしょう。



【内部利益の付加】

そこでよくとられるのが、本店が支店に商品を送付する際に、利益を付加する方法です。

たとえば、先の例で、本店が支店に商品を送付する際に、原価の20%相当額の利益を付加したとしましょう。

本店と支店を全く別の企業と考えれば、次のような処理になります。

(本店)売掛金120 売  上120

(支店)仕  入120 買掛金120

しかし、実際には、本店は、支店からその代金を回収するとは限りません。

支店の支払いもそうです。

そもそもは本店も支店も一つの会社ですから。

また、売上や仕入といっても本当に20円儲かったといえるのか?というと、ちょっと怪しいです。

そこで、売掛金・買掛金 → 本支店勘定

売上・仕入 → 外部の売上・仕入と他の第三者に対する勘定と区別しておけばよいでしょう。

(本店)売掛金(→支店)   120 (支店へ)売 上120

(支店)(本店より)仕 入 120 買掛金(本店)  120

難しい内部利益の控除の計算に取り組む前に、なぜ、内部利益を付加するのか、なぜ、そのような会計処理を行うかをぜひ一度は考えておきましょう。



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