(※)現在では、二勘定制採用の意義は薄れました。記事内容は、会社法施行(平成18年)以前のものです。


【二勘定制採用の理由】

利益処分の会計処理には、「一勘定制」と「二勘定制」とがあります。

仕訳処理を並べてみるとよくわかりますが、二勘定制は、なんだか面倒くさいです。

面倒な上に、勘定記入を眺めてみると、なんだか不思議な感じがします。

では、何故この面倒で、不思議な二勘定制が存在するのでしょうか?

二勘定制による未処分利益勘定の記入例を眺めてみてください(ちゃんとした勘定は書けません)。

何かと順序が似ています。

そう、損益計算書の末尾です。

損益計算書の末尾は、当期純利益+前期繰越利益=当期未処分利益 です。

このことを念頭において、勘定記入を眺めてみましょう。

先の例と同じ前提で、それぞれの第2期の未処分利益勘定は、次のようになります。

(一勘定制)
     未処分利益
未払配当金40 前期繰越100
次期繰越160 損  益100
    200     200

(二勘定制)
     未処分利益
未払配当金40 前期繰越100
繰越利益 60 損  益100
次期繰越160 繰越利益 60
    260     260

二勘定制の勘定記入を眺めると相手勘定の繰越利益が貸借の両側にきて、なんか妙な感じがします。

しかし、貸方の損益100の前で貸借は平均し、残高がゼロになっています。

二勘定制のその後の計算は、当期の利益100+前期利益60=160 と損益計算書の末尾と同じイメージになっていることがわかります。

これに対して一勘定制は、前期利益40+当期の利益100=160 というイメージになっていることがわかります。

このように、二勘定制採用の理由は、勘定記入面を損益計算書のイメージにあわせるためにあるといってよいでしょう(でも一勘定でいいのではと思うのは私だけでしょうか)。

試験では、両方を視野に入れる必要があると思います。



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